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「自分たちのまち」という共有感をつくるー北千住「島」プロジェクト 管理人・鶴巻俊治さんインタビュー【後編】

東京の下町、千住にはどんな人々が暮らしているのか。
まちとの関わり方は人それぞれ。そんなまちを舞台に活躍するプレイヤーの方々にインタビューしていく本シリーズ。
前回は、かれこれ20年ほど千住で暮らしている鶴巻俊治さんに、千住のまちの魅力や地域と関わるようになった経緯について語ってもらった。

そして、後編となる今回は、鶴巻さんも参加する千住のまちづくりについて伺った。まちづくりとは、居住環境をよくするため、住民が主体となって地域活性化を目指す活動のことである。
インタビューを通して見えてきたのは、変化していく千住のまちに対する鶴巻さんの想い、そして、まちづくりとどう向きあっているかだった。
早速、その内容を紹介しよう。


変わりゆく千住の風景

◆島プロからその後、どのように地域へと活動を広げていかれたのでしょう?

まちづくりには関わりたいと思ってましたが、まったく自信はありませんでした。
その頃、もうすでに千住でいろんな団体が活動されてるのを知ってたし、そこに自分がどう参加してったらいいのかがわからなかったんです。

だったら、いっそ自分は自分で好きなことをやってみたらどうだろう。それをやりながら周囲の人と関わりを持ったほうがむしろ面白いことができるんじゃないか。
そういうふうに考えて、島プロをまずはひとりで始めてみたんですよね。

いまでは島プロだけでなく、「千住いえまち」(以下、いえまち)にも参加させてもらってます。

いえまちは、いまから10年ほど前にまち雑誌の団体を引き継ぐかたちで発足されたと聞いてます。活動の柱は大きく3つあって、「調査・記録保存」「情報発信・共有」「建物活用の実践的検討」です。
さらに最近では、大黒湯や大橋眼科の移築保存のためのクラウドファンディングのお手伝いをしたりして、なんらかのかたちで保存の支援をしていけるような方法を模索してるところです。

その他にも「千住Public Network East」という空き家の利活用を推進するプラットフォームだったり、「あだちブレーンプラス」という足立区全体のまちづくり団体など、いくつかの団体に所属させてもらってます。

◆そうしたまちづくり活動の大変さはどういった部分にあるのでしょうか?

何をもってまちづくりというのかって答えるのが難しいんですが、ぼく自身はそのまちがよくなってるかどうかっていうのが基本だと思ってます。
ただ、ぼくが知ってるのは、たかだか30年くらいですけど、それでもあの頃に見てた千住の風景と比べていまの千住の風景ってちっともよくなってないんじゃないかと感じることがあって。それで最近、そのことについて周りの人たちに「どう思う?」って訊いてみたりしてます。

千住のまちでいうと、特にこの10年ぐらいの間が、一番大きく変わってる気がしますね。
おそらく、千住で活躍されてる方たちが高齢化して、世代交代しなきゃいけない時期に入ってるんだと思うんです。それで、すごく重要な建物とかが切り替わってくタイミングなんじゃないかな。
たぶんこの10年、次の10年ぐらいの間に、まちの雰囲気がガラリと変わるんじゃないかなと思ってます。

鶴巻俊治(つるまき としはる)
会社員(一級建築士)/北千住「島」プロジェクト 管理人/千住いえまち 会長
新潟県出身。新潟大学大学院修了。1992年より建設会社に勤務。3児のパパ。

例えば、いえまちのメンバーだったら、まちをよくしていきたいっていう想いのある人たちが多く集まってるから、まちがよくなってるかどうかっていう話はできるわけです。
要はそれって、千住が自分たちのまちだっていう共通認識があるから成立するんですよね。
ぼくたちがこのまちをよくしていきたいって思ったときに、自分たちの努力だけではできることってやっぱり限界があるんですよ。
まちづくりに関わってるのって、すごく小さいグループのメンバーでしかなくて、そこで喋ってることと、世の中の経済的な動きっていうのは、まったく別の世界で動いてて。なかなかそこに踏み込んでいけないもどかしさっていうのは感じてます。

でも、もし建物の所有者の方もぼくたちと同じような考えを抱いててくれたら、「これは残すべきだよね。残す方法をみんなで考える?」みたいに話にのってくれるかもしれない。
先日の大橋眼科のクラファンだって、ぼくはいえまちのメンバーとともに応援サポーターとして参加協力させてもらったんだけど、すごい大勢の方が参加してくれて、約1200人の方からの支援を集めることができました。
それで、千住のまちのことを思ってくれてる人たちがこんなにいるんだなとあらためて知ることもできました。
だから、そう捨てたものではないし、なんらかの共有感や機運をつくっていけるまちなんじゃないかなと思ってます。
まちの雰囲気ができていけば、これから変わっていく建物はなんらかの配慮がされていくんじゃないかと、期待してます。

つまらない100mより、楽しく歩ける200mを

◆最後に、今はなくなってしまった千住の場所にまつわる記憶を教えてください。

北千住の駅ビル西側に、KoKuMiNってドラッグストアがあるじゃないですか。その横に花屋さんがありますよね。30年前、ドラッグストアの右側の間口3分の1ぐらいのところが、ペットショップになってて、そこで妻と千住でデートするときによく待ち合わせをしてました。

現在ではAoyama Flower Marketとなっている

「北千住駅、ペットショップ前集合」って必ず言われて。それで待ち合わせして、二人でそこのペットショップに入るんですよ。なにか買うわけじゃなくて、ただ犬や猫をながめて出てくみたいな。
なんかそれって意外に大事なことだったんじゃないのかなあって思いますね。思い出の場所っていうか。
そのあとは宿場町通りを端から端まで歩いて、オープンしたばかりの「珈琲物語」に行って、珈琲を飲んで帰るみたいなことをよくやってました。まだ駅前のマルイもない頃です。

あと、宿場町通りのパチンコ屋の前にあった「マコト商会」。
いまは一階がドンレミーアウトレットになってるビジネスホテルがある場所です。いわゆるまちの電気屋さんで、半地下に降りてくような感じだったんですけど。新婚のときは、よくそこに行っていろんな電化製品を買ってましたね。

ドンレミーでは工場直営のスイーツがお得に買うことができる

それから、東口側に「にしむら」っていうおもちゃ屋さんがありました。
ああいう電気屋さんとかおもちゃ屋さんとか、そういうお店がなくなってきたのが、なんとなく寂しくはありますね。

まちがいろんなかたちで変わってくのは、もちろん当たり前のことなんです。それは世の中が変わってるんだから、変わらざるを得ないし、変わっていいんだと思うんです。
だけど、なんだか同じようなものばかり建ってるなと思ってしまうと、つまらなく感じるのかなという気はします。思ってもみないような建物が建ってくれれば、いいんだと思うんですけどね。やっぱり、大事なのは歩いてて楽しいかどうかですかね。
すっごいつまらない一本道を100m歩くよりも、200mでも楽しく歩ける道のほうがいいんじゃないかと思いますね。

路地なんかもそうですけど、車が通らないから、たぶん安心して歩けるんだと思うんですよね。歩きやすかったりとか、過ごしやすかったりとか、さっきのサンダル履きの話じゃないですけど、ダラーっと一日過ごすのに向いてるかどうかが、暮らしていくうえでは大事なんだと思います。


2022年12月10日
北千住・P-KUN CAFE
取材=綴方書窓
文・構成=萩庭 真

地図と記憶をコラージュする in千住

インタビューに登場した千住にまつわるエピソードは、「記憶の地図」として1月のイベントで展示されます。

この冬、綴方書窓は千住にある築90年の平家を改装した家劇場というイベントスペースで、展示とシルクスクリーンのワークショップを開催します。

そこに展示するのは、千住にまつわる記憶を集めた「記憶の地図」。
かつて千住にあった、でもいまはなくなってしまった場所を「記憶の地図」として展示することで、日々、移り変わる千住の街並みに思いを馳せてみる。そんな一風変わった催しです。
さらに会場では、その地図の区画をデザインとしてシルクスクリーンでトートバッグに刷る体験もできます。

◆展示
「地図と記憶をコラージュするin千住」
日程:2023年1月4日(水)・11日(水)
時間:13:00〜20:00
会場:家劇場(東京都 足立区 千住旭町 34-10)
入場無料

◆ワークショップ
タイムテーブル
13:00
15:00
17:00
19:00
定員:各回6名
料金:1,000円(トートバッグ付き)

ご予約はこちら

サンプル2号

会場となる家劇場は、東京・北千住駅から徒歩およそ5分の場所にあります。
2023年1月4日(水)と11日(水)の2日間。13時から20時までやっています。
入場無料(ワークショップは各回1,000円)ですので、ぜひ遊びにいらしてください。

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