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私撰・声に出して読みたい聖闘士星矢グランプリ

小学校低学年時に繰り返し読み、私の血となり肉となった「聖闘士星矢」の「声に出して読みたいセリフ」をまとめんと一念発起(?)したところ、フェニックス一輝無双だった……というのが前回の話。

今回は他のキャラから取りますよ。いきなりグランプリから。
※当然のようにネタバレだらけです
※引用は文庫版から
※ここで言う「かっこいい」はあくまでも茶ぶどう基準です(やや草生えぎみ)

堂々の優勝候補3つ

シャカ
「天魔降伏! 死すべしアイオリア!!」4巻p.280

漢字のイメージ喚起力を最大限に利用した「天魔降伏」の4字だけでもすさまじい威力で、これを前口上にされては生き延びる道はない。また、文語調がこれほど似合うキャラもなかなかいない。
このセリフの次が例の梵字「オーム」であり、文字のビジュアルな力をいかしきっている。
 
紫龍
「のぼれ龍よ! 天高く!」5巻 p.219
結局のところ倒置法なんだよな、最強なのは。
「のぼれ龍よ」のあとに1拍おくと、7・5になる。
七五調、これにも日本語ネイティブは弱い。
 
カノン
「見るか 星々の砕ける様を…!!」13巻p.131
少年ジャンプが誇るべき名キャッチコピー。
ギャラクシアンエクスプロージョンといったらこれ、だけど実はサガじゃなくてカノンのセリフなのは意外。まあ、サガよりカノンの方が中2っぽいのは間違いない。
「見よ」ではなく「見るか」なのもいい。これもやはり倒置法。
 

上記3つはいずれも技の発動前のセリフである。「星矢」では技名を叫ぶところが一番の見せ場なのだが、実はその手前のセリフが重要なのだということがよくわかる。
その他の「技名を叫ぶ」系のマンガではどうだろうか。気になるところだ。
 
グランプリと銘うちつつも1位を決めるとかはない。優勝候補3つ、で十分だ。

古典とことわざ~教養部門~

老師
「廬山の瀑布を望む――と詩仙・李白の詩にもある
飛流直下三千尺 疑うらくは銀河の九天より落つるかと
そうだ紫龍よ まるで天から地へ流れおちるようなその大瀑布を天へかえしてやれ
それができた者にこそ聖衣を受けつぐ資格があるのだ
あの龍星座の聖衣をな!」
1巻p.229
 
廬山昇龍覇の導入で老師が詠じている。やはり星矢は教養の宝庫。
技の説明に凝るのは大事なんだな、と思わされる。絵だけじゃないんだ迫力と説得力を出すのは。
 
なお、「疑うらくは是れ…」が通常の書き下し文。一文字はしょるとは是れいかに。
 
 
デスマスク
「フッ キジもなかずばうたれまい しゃしゃりでてきたのがおまえの不運…」4巻p.293
だからさでっちゃんは何人なんだよwww
この他にも「狡兎死して走狗煮られる」など、彼は中国の古典に詳しい。さすが積尸気を用いるだけある。って真面目かでっちゃん。
 
「キジもなかずばうたれまい」=7・5が美しいのはもちろん、「しゃしゃりでてきたのがおまえの不運」も9・7でありながら謎の定型感があって音読したくなる。なぜなのか、音韻に詳しい人は教えてほしい。
 
デスマスクのセリフは全体にノリがよいものが多い。重々しすぎない小悪党で、車田先生もしゃべらせやすかったのかもしれない。
 

シャカ
「沙羅双樹の花が散ったか…」12巻p.120
そもそもは「お釈迦様が入滅するときに沙羅双樹の下に横たわった」という話なので、「散った」は踏み込みすぎの感はあるがそんなことは些事である。むしろ命の終わりを子どもにもわかる比喩にして示したのがうまいと言うべき。
『平家物語』の冒頭を暗唱させられる中学生以上なら瞬時に連想できる「諸行無常」「盛者必衰」……背景作りがすばらしい。
 
「素朴」の対極に位置しているシャカ様も名(迷)台詞に恵まれており、
「わたしの顔こそ引導がわりだ 迷わずあの世へ行きたまえ!」なども声に出してよみたい日本語。シャカの味わい深いセリフについて3000字くらい書けそう。(つーか書いてた↓)

初登場からハーデス編ってあきらかにキャラ変してんのに謎の一貫性があるんだよなー。根っこのどSな部分が一貫してるんだな。
 
 
星矢
「だが瞬よ 神話の時代にパンドラの箱から百八の様々な邪悪がこの世に飛び出したというが 
それでも最後には希望が残されていたというぜ」
13巻p.14
星矢が意外にインテリな面を見せる。「だが瞬よ」もよくないすか?(細かすぎて伝わらない)
 
なお、1巻ではかつて聖衣の箱がパンドラボックスと呼ばれていた、と魔鈴さんが言っているので、連載当初はハーデス編や少女パンドラの構想はなかったことが察しられる。まあジャンプマンガって昔はそういうものだったじゃないですか。一回一回でハッタリきかせて整合性についてはあとでなんとかする(あるいはしない)という……
 
ここを読んでいたので「ハーメルンのバイオリン弾き」で「あーっ知ってるこれ知ってるー!」って大喜びできた。
「パンドラの箱」が登場する作品を集めるのも面白そうだ。
 
 

その他 端倪すべからざるセリフ集

暗黒ドラゴン
「フッ わたしも信じてみる気になったからさ…
きみのいう友情というものを…
だがすこし遅すぎたかな…」
2巻pp. 338-339
暗黒ドラゴンが死ぬ間際に残すセリフ。最後の一言がきいていて、えもいわれぬ余韻を残す。
 
 
カノン
「しかしこのカノンはただひとつ悪の心以外持っておらんのだからな」9巻p.273
潔すぎて惚れるしかない。
カノンはサガより中2っぽいが、そのぶん名セリフも多い。(中2度とセリフのかっちょよさの度合、正の相関あるよな)
ゴールデントライアングルの枕詞「落ちろフェニックス 時のはざまに!!」も中2ポイント高くて好き。
 
 
ミロ
「ここにはもはや敵はおらん ここにいるのはわが同志…その名も黄金聖闘士 双子座のカノンだけよ…」
11巻 p181
スコーピオンのミロが作中で一番かっこいいシーン。こんなんもう惚れるしかないやろ
 
 
ムウ
「パピヨン自らフェアリーに死界へ連れていってもらうがいい!!」11巻p.343
スターライトエクスティンクション!!の直前。やっぱキメ技の直前は大きく振りかぶりたいよね。
長いので割愛するが、デスマスクとアフロディーテをS.E.する直前の数コマもめたくたかっこいい。
 
文庫版11巻は丸ごとムウ様の1冊で、これだけ「聖闘士ムウ」にこっそりタイトルを変更しておいても違和感はない。……いややっぱ語呂が悪いな……
 
 
アイオリア
「ミミズはミミズらしく死ぬのはやはり地中がよかろう」12巻p.31
他のキャラが何してんだか実際はよくわからん技で闘うのに対し、アイオリアは極めてド直球でわかりやすい。ここでは技ですらなく、シンプルに足で踏んで埋めている。
技を使わないことで圧倒的な力の差を表現。「ミミズごときに獅子が倒せるか!」から上記引用のセリフへ見事な流れ。最後は見返りライトニングプラズマで、華麗にしめ、ライミ回はバトルマンガのお手本のような様式美にあふれている。
 
 
バレンタイン
「我等はラダマンティス様直属の冥闘士! 
ラダマンティス様の御命令がなければたとえ首を刎ねられても動くものではありません!」
12巻 pp. 316-317
登場からわずか2ページのうちにラダ様の熱烈な信奉者であることを表明してみせた見事な口上。なんだその「部長の言うことが絶対、社長なんか知るか」理論は。
 

……以上!!

まじめなキャラは「かっこいい」セリフが少ない??

今回思ったのが「中2度とセリフのかっこよさは正の相関関係」
そして、目を引くセリフはわりと悪役っぽい人が言っている。
 
私がこよなく愛するアクエリアスのカミュを見ると、特別かっこいいセリフってないのだ。たぶん真面目すぎるからだ。真面目でまっすぐなタイプのキャラのセリフは、「ちょwかっこいいwww」という感じにはなりにくいのだろうか。
(カミュの場合「迷セリフ」なんだよな……「目をさましてよけろ!!」とか)
 
その点、一輝・シャカ・カノン・デスマスクといった、ヒールだったり、「遊び」があったりするキャラには読みがいのあるセリフが多い気がする。
 
今回は現在最も入手しやすい文庫版基準でセリフをまとめてみたが、ジャンプコミックスではセリフに細かい差異があるので、ご興味おありの方はその例を以下でご参照ください。

 万が一、ここまでおつきあいくださった方がいらしたらありがとうございます!
 

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