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インド滞在記 #9(2004年~2005年)

2004年11月28日 ガヤ→ジャイプル:命がけの1分間車内プレゼンテーションと、私の欲望の旅路。

※なによりもまず、前回の記事(インド滞在記#8)に「スキ!」してくれた方に感謝をお伝えします・・・この記事は、あなたの「スキ!」に励まされて書かれております。

さて、WL60(ウェイティングリスト60。詳しくは インド滞在記#8 を参照されたし)のチケットを握りしめ、ガヤ発ジャイプル行の列車に乗り込んだのは、朝6時半頃でした。乗車前、ガヤ駅に張り出された WL の繰上げ座席割当て一覧表を何回も何回も確認しても、残念ながら私の名前は載っておりませんでした。が、もう乗るしかありません。しれっと、乗り込みました。

カゼが悪化してきているし、まだ昨日の一件で気分が悪いし、列車も WL でやっぱり席はないし、残念ながら気分は最悪でした。

昼間のうちは、スリーパーシートを上げて、わいわいみんなで座っている乗客が多いので、それとなくお尻ひとつ分のスペースが空いていそうな席を見定めて、てんてんと移動しながら列車内をウロウロしていました。

が、インド人だって自分の席に知らない小汚い外国人が座っていたら「あっちいけ」と思うようですし、むしろ強く自己主張しないと、たとえインド人同士でも押しの強いやつに自らの権利を横領・侵害されることが多々あります。そういうわけで、「あっちいけ」と言われるたびに、てんてんと彷徨っていたのでした。

検札にくる乗務員に泣きをいれて頼む(当時は、意外とこの方法が有効で、外国人専用枠や検札中に新たに判明した空席を、優先的に割当ててくれることがありました)も、結局、昼間のうちは席をもらえずでした。

乗車から約12時間が経過した夕方5時ころ、再び登場した車掌さんの検札タイム。間違いなく、ここが本日最大の勝負どころです。ここを逃したら、もう今夜は横になれないでしょう。車掌が足を止めてくれるであろう1分以内で、いかに私が困っているか、つらい状態か、図らずもこんな事態になってしまったのか。を、初めて会うインド人車掌の心にしかと訴えかけ、かつ必ず成果をあげる必要があるのです。

必死だったので、どうやって彼を落としたのか、まったく覚えていないのですが、車掌さんはアグラ・フォートからジャイプルまでの席を割当ててくれました。あぁ助かった・・・車掌さん、あなたは私の命の恩人です。ちょっと大げさですが、心も体も少々弱っていたこともあり、うかつにも彼の優しさ(配慮)に、感動してしまいました。

さて、割当ててもらった席で、身を横たえていても、体調がどんどん悪くなってきました。鼻、のど、頭痛、熱、寒気とカゼの徴候がすべて出始めてきました。お腹も痛くなってきたし・・・いかん、途中で倒れたりしないかホントに心配になってきました。人間、弱ってくると「待ってました!」とばかりにネガティブ思考が襲ってきます。とにかく、ひたすら着込んで、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と自分を暗示にかけるようにしつつ、大人しくしているほかありませんでした。

今回の列車移動は、間違いなく今までで一番しんどいです。ほとんど外の景色も見ていない(見る余裕がなかった)し、チラッと目にしたであろう光景もあんまり覚えていません。今はとりあえず、4,5日ぶりのシャワーをあびて、(おっさんのいない、動かない、静かな)ベッドでゆっくり横になりたい。それだけが心の底からの望みです。

人間の欲望というものは、自身の置かれている状況や環境によって、その対象が大きく変わるものだな、ということを身をもって体験しています。自分自身の欲望が、生の、命の、根源的なものに立ち戻っていっているような感覚です。今、私が置かれているカオスでノイジーな状況や環境とは裏腹に、今、私の欲望は、シンプルで、ミニマムで、ピュアで、タイニーなものに、どんどんと強く向かっていっています。僧侶が、苦行を通して、悟りを開こうとする(した)気持ちが、少しわかったような気がしました。

さて、私の欲望の旅路と共に、列車はジャイプルに向かい続けます。
(つづく)

※旅路を終えた今の私の、シンプルで、ミニマムで、ピュアで、タイニーな欲望は、「スキ!」してもらえると、しっとりと満たされます。悟りは得られなさそうですが、このシリーズを書ききるエネルギーを得られます。

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