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#01 孤独にさよなら、またきてね


引っ越して二週間が経った。これまで自分が過ごしてきた環境が特異なものであったことを日に日に痛感する。

私が4年間暮らした町は、片田舎の学生街だ。近所をぶらつけば棒に当たるかのように友達に出くわす環境での生活は、まるでみんなで一人暮らしをしているかのようだった。今思い返せばあれは「楽園」だったなと、思ったり、思わなかったりする。

誰かの家に集まってみんなで食卓を囲んだり、友達とギターを背負って公園に行き、好きに歌ったりするのがわたしたちの日常だった。

そんなわけで、その町も、その町で出会った人たちのことも愛してやまないのだけれど、それでも私は、いつも孤独だった。友達といるときはどんなに楽しくても、別れて一人の部屋に帰った瞬間、寂しさに飲み込まれてしまう。

引っ越し10日前、後輩との会話の中で「こっから出たらさ、わたしほんとに病んじゃう気がするんだよね。」とうっかりこぼしてしまった。すんごく神妙な顔で同意されたけど、案外元気にやってるよ。むしろ、あの頃よりよっぽど健康。

あんなにみんなが近くにいた以前の生活より、
コンビニのレジくらいでしか人とまともに会話しない今の方が平気だなんて、強がりみたいだけどさ。うん、確かに、今は少し強がらなくちゃなって思ってるのも事実なんだけどさ。


なんてったって、
今までわたしが戦ってきた孤独の正体に
気づいたのだ。

・すぐそこにいるはずなのに、twitterやInstagramの画面越しだと遠く感じる。
・会おうとすれば会えるのに声がかけられない。

わたしの孤独感を浮き立たせていたのは、
日頃感じていたそんな「もどかしさ」だった。

物理的な距離が近すぎると
心の距離を図るのが難しくなる。

居場所があるからこそ、寂しかった。


でも今は、一人でいることが私の日常だ。
人と会うこともあるけれど、
それらはすべてトクベツなこと。

そして、SNSを通して同じ空の下で
違う日常を過ごす仲間と繋がっている。
街を歩いたってすれ違うことはないけれど、
きっと近い将来、約束をして、会いに行く。

そこには「もどかしさ」はない。


...でも、欲を言うならば、今の毎日は
ちょっとだけつまらない。

もどかしさに心を痛めても尚、
わたしはもっと人を知りたい。


どうせひとりで死んでくんでしょ?

結論をわかっているからこそ深く人と関わって
深い孤独を知りたい。愛を知りたい。

そしてそのときは、それらの感情ともうちょっとうまく付き合えるわたしでいたい。

だから今は、もうすこしだけ、一人でいます。

孤独にさよなら、またきてね。


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