見出し画像

『世にも危険な医療の世界史』(2019年の書籍)

世間では液体のりに新しい治療の可能性が見つかったのだとか。(前にもなかったっけ?と思ったら新しいやつらしい)

ちょっと前であれば「よし、液体のりを万能治療薬と喧伝して大儲けしようとするインチキ詐欺師の小噺でも書くか!」くらいのことを考えるのだが、『世にも危険な医療の世界史』を読んだ私は一味違う。

「よし、液体のりを万能治療薬と喧伝して大儲けしようとするインチキ詐欺師の小噺でも書くか!」同じだけど、同じではない。内部的に社会問題に対する解像度が数段階レベルアップしているのだ。

作品の説明やインプレッションは「前回」に詳しいが改めて書いておこう。


『世にも危険な医療の世界史』とは、2019年に出版された危険な(英雄的な)医療の歴史を網羅したガイドブックである。現代基準では有り得ない金属や器具を用いた治療が施される様を列伝的にエンジョイできる良書である。

恐ろしいことに、本書は読み進めていくごと「展開の予想がつく」という副作用をもたらしてくれる。そのため読書の驚きは序盤ほど強い。

新要素が開発される→治療師が民衆向けに持ち出す→万病に効くと言い出す→医療事故多発→逮捕 or 死

民衆レベルの医療というのはこういった事故の積み重ねて実用レベルのものが生き残ってきたということを改めて実感する。そして、悲しいことに治療師の多くは善意で治療を行おうとしているのだ。

米国建国の父ベンジャミン・ラッシュは、相当な人徳があり現代でも精神医療の祖としても尊敬されている人物である。彼ですら「英雄的医療」を最善と思い込み「とにかく便を出せ」「瀉血へ行け」と励行していた。もちろん人々は次々と死んでいった。

人格と正しい医療知識は必ずしも一致しない。そして、それは当然現代でも同じであるということはスレスレ健康法がブームが定期的に繰り返されることからもご存じの通りだ。知人が万病に効くなどと云い始めたら全力で警戒をしたほうが良いだろう。

万病に効く薬はない。
適切な診察を受けよう。
複数視点で相談しよう。
現実への特効薬はない。

本書はこういった常識に対する解像度を高めてくれる。とはいえ、現代でバカにされている治療法が新たな突破口を切り開くかもしれないというのはご存知の通り。

なお、今回は内容に詳しく触れていないが、ちょっとどうかしてる読書実況はMin.tにアーカイブしてあるので興味のある方はご参照いただきたい。

なお、ロボトミーの章は、本当に怖くなってしまった。あまりに粗雑に扱われるお脳の立場に背筋が凍る体験であった。怖すぎて「カッコーの巣の上で」のDVDをわざわざ買って見たくらい怖かった。


それでは、皆様も新しい本を読んだら教えてね。


前回:読み始め編はこちら


#世にも危険な医療の世界史 #推薦図書 #ロボトミー #液体のり #代替医療

この記事が参加している募集

推薦図書

いつもたくさんのチヤホヤをありがとうございます。頂いたサポートは取材に使用したり他の記事のサポートに使用させてもらっています。