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美しい中庭、コルティーレ、パティオ

ヨーロッパの教会や修道院には、植栽がきれいに整えられた中庭があり、その周囲に回廊があって、柱の間から庭を眺めながら歩くことができる造りの建物が多く見受けられます。

見出しの中庭は、オランダのユトレヒトのドム教会の中庭です。

ドムは大聖堂という意味 
半円形のところは「ドムカフェ」 中庭を眺めながらコーヒーをどうぞ



1.イタリア ミラノ ブレラ絵画館(ブレラ美術館)

ここの中庭(イタリア語でコルティーレ:cortile)の回廊は2階もあって、眺める角度によっても時間帯によっても、コルティーレの様子がかなり変化することに気づいたのです。

ミラノのブレラ絵画館はブレラ美術館と呼ばれることもあります。元々はイエズス会の学校施設だったのをナポレオンが美術館として整備し開館したそうです。

1階から見上げて


2階の回廊からコルティーレを見下ろすと屋根も見えます。

中庭中央にはアントニオカノーヴァ作の「ナポレオンI世」

ここの収蔵品はルネサンス期を中心に数多くの貴重な作品があります。私が気に入ったのは、下の写真の建物右側にかかっている、フランチェスコ・アイエツの「キス」(接吻とも)(1859年)という絵です。

夕方になると、コルティーレは別の顔を見せます。

1階は「ブレラ美術アカデミー」になっています

美術館に入ろうとしたら、学校の美術室のような部屋に迷い込んでしまい、2階の美術館にたどり着くのに戸惑いました。

こんな環境で学べる美大生もいるのですね。


2.イタリア ミラノ サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会

ミラノで、美術史上最も有名な絵の一つがこの教会にあります。予約をしないと見ることができない貴重な15世紀末の壁画です。レオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐」は、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会のドミニコ会修道院の食堂だった空間に描かれた作品です。

このコルティーレはどことなくスペイン風のパティオ(patio)の雰囲気を感じてしまいました。

イタリア風にしろスペイン風にしろ、風と光を取り入れて、人々が散策したり休息したりする目的であることに変わりはないですね。

日本には、平安時代の京都の貴族の家屋に起源があると言われる「坪庭」という文化がありますが、採光や換気の目的の他に、家の中で小さな自然を楽しむという風情の文化が、根底にあるように私には思えます。

完全予約制で周到な準備が必要です
壁画のある修道院食堂に入れるのは
一度に35人までで15分間という制約があります

この壁画は完成直後から現在に至るまで、災害や戦争など様々な試練や不幸に見舞われてきたのですが、現在このような姿で見ることができるのは、まさに奇跡だと言われています。

左側が「最後の晩餐」のある修道院食堂入口



3.フランス コルマール ウンターリンデン美術館

修道院の面影を残している中庭だと感じたのが、フランスのアルザス地方のコルマールにある「ウンターリンデン美術館」です。現在は美術館ですから修道士はいませんが、黒い服を纏った人(おそらく観光客)が中庭を横切ったのを見て、修道院時代もこんな光景が日常だったのかもしれないと思いました。

植栽の手入れも、少し自然に任せている風情があります

中庭を巡る回廊を歩くと、少し仄暗く中世にタイムスリップしたような気分になりました。柱廊の隅で二人の修道士が小声で立ち話をしていても不思議ではないように思えました。こんな景色を眺めながら読書もしただろうし、瞑想に耽っていたかもしれませんね。

ウンターリンデン美術館は、パリ以外ではフランスで来訪者第2位の美術館で、西洋宗教芸術の傑作「イーゼンハイムの祭壇画」を所蔵しています。同作品は1512年から1516年にかけて画家グリューネヴァルトと彫刻家ニコラ・ド・アグノーの2人によって制作ました。


4.フランス モン・サン・ミシェルの修道院

なんといっても美しいく整っている中庭は、モン・サン・ミシェル修道院でしょう。

この中庭を眺めていたら、京都の龍安寺石庭を思い浮かべてしまいました。この回廊の屋根を見て龍安寺の石庭を連想したのですが、仏教とキリスト教の違いはあるにせよ、仏様や神様に仕えて日々を過ごす人々にとっての中庭は、どこか共通するものがあるのでしょう。

歴史的には修道院の庭は、植栽を手入れして見て楽しむだけでなく、薬草や果樹などを栽培して薬品や食料をつくり、自分たちだけでなく信者のために役立てていたのだろうと言われています。

だから庭は実利的な側面と、瞑想や読書などを通じて精神の慰安を満たす両面があったのでしょう。その点では仏教の庭園も似たところがあるように思います。

モン・サン・ミシェルの回廊の柱は、内側・外側の2列ずれて並んでいて、内外の2列で1組の列柱となっているという特徴があります。これで中庭と眺めて瞑想が深まるのかもしれません。

このように見ていくと、中庭をあれこれ追求していくと様々なことに結びついていくようです。奥が深いですね、中庭。

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