マガジンのカバー画像

進化する自治を構想する

25
大阪市、あるいは大阪府で、医療、福祉、教育、あるいは経済、都市計画、交通など様々な事業に対して、住民の声が届きにくい。また住民の意見、要望を届ける場や機会が少ないということを、多… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

進化する自治を構想する 25「ucoが考える都市像とくらし」

 大阪の課題の一つとして「防災」があります。  建物の耐震化、上下水道の耐震化など、自治体が進めなければならない独自の事業があります。しかし、予算の問題などを含め、実際にはなかなか進んでいない。防災は命に直結する問題であり、市民も行政任せにせず、どうなっているのかという声を挙げなければ、この対応で市民も納得している、という風に思ってしまうのではないか。  防災やエネルギーの問題などを話し始めると、政治問題ととらえて、「国が」のように結び付けがちだが、実際には、それぞれ地域課

進化する自治を構想する 24「市民と行政が向き合う場」

2004年新しい年を迎えました。 本年もucoをよろしくお願いいたします。 能登半島を含む一帯での地震により、多くの方が被災されました。被災された方、ご親族、ご関係者のみなさまには、心より、お見舞い申し上げます。同時に、一日も早い復興をお祈りしております。 ucoでは、この半年間「進化する自治を構想する」というテーマのもとに、さまざまなレポートや記事を掲載してきました。  市民の「自治参加」という面で、年初に2つのできごとがありました。この二つがある意味対照的であると共に

進化する自治を構想する 23「止められない大阪文化の喪失」

単年度サイクル  竹村さんの話を伺っていて、やはり、大阪の芸術も食も、歴史的積み重ねによるその奥深さについて、多くの方々には理解されていない現実を感じます。  わかりやすいことがもてはやされていて、理解するのには時間がかかる、手間ひまかけてじっくり考えるという思考が失われてきています。  企業の業績にしても、学校の成績にしても、短期間でどれだけ伸びるかが評価軸であり、行政も単年度主義であることから、1年以内に成果をあげるかということが重要視されていて、そのサイクルに慣らされ

進化する自治を構想する 22「私企業の公共への浸食を無自覚に許してよいのか」

なんば広場が何を意味するのか  民間のジョイントベンチャーのような形で、なんば広場を管理している。もともと道路だったところを、私有地のような使い方をしているように感じる。公共スペースの使い方として、これでよいだろうか。大阪城公園の中に、いろいろな民間事業者が入って、商売をされている。例えば、ニューヨークのセントラルパーク内にスターバックスが建設されようとしたら、多くのニューヨーカーは民間企業がなぜ公共空間を儲けのネタにしようとするのか!と大きな声を上げるはずです。  日本に

進化する自治を構想する 21「市民と行政の対等な関係づくり」

成熟社会の市民像  非営利組織、一般的な日本のNPO団体について、社会的に影響を与えるような存在になりえていない、という里山太郎さんの意見。  uco共同代表の山口がNPOを始めた時、ひな型としたのが、マーガレット・サッチャー時代のイギリスの、あるNPO。当時のイギリス政府が、市中の公園管理は、地域で面倒を見てほしい、と。その時に、植樹や、遊具管理、施設管理を含めて地域で実施しようとした団体。税金で、民間事業者に委託し、整備するのではなく、地域に存在する、植木職や土木業の人

進化する自治を構想する 20「まちの豊かさとコモン」

中間領域の喪失  日本の家屋建築から、コモンが無くなっていくことに、危うさを感じている、ということが、お二人(伴年晶氏と大矢和男氏)の建築思想の根底にあるように感じた。昭和の終わりくらいまでは、プライベート空間とパブリック空間が明確に分かれているのではなく、縁側や前庭、路地や井戸などの中間領域があった。そうした住民が共有する空間が、プライバシー重視やセキュリティの問題、あるいはクルマ社会化に伴う騒音や大気汚染の遮断などが積み重なっていくことで、完全に分断されてしまっている。

進化する自治を構想する 19「幻想と現実。夢洲カジノの真価とは」

 今回は、地獄谷冥土バー店長の横田さんが、公営ギャンブルファンであることから、特別編として、公営ギャンブル愛を語っていただきました。また公営ギャンブルを愛する横田さんの夢洲IR観を伺うことができて有意義だったと思います。 ギャンブルの何が問題なのか  ギャンブル=賭け事は、何も生み出さない、お金が右から左に動くだけの世界で、その間でピンハネしていく産業だとよく言われていますし、実際そうなのかもしれません。 しかし何も生み出さない、時間とお金を浪費することが悪で、なにか生産

進化する自治を構想する 18「地域の地力を強くする取組み」

 ucoの情報の基本としている「自治」。一言で自治といってもその範囲は広い。ucoとして扱いたいと思っているテーマも、いまよりももっと数多くある。  大阪における教育政策は、ほんとうに惨憺たるものがある。大阪市では、昨年3月31日をもって、市立高校の廃止が行われ、大阪府に移管されると共に、土地・建物、備品などの財産は、無償で府に譲渡されている。財産無償譲渡については、譲渡の差し止め、賠償盛況絵を求めて、現在住民訴訟が行われている。財産譲渡も自治法に照らすと違反が明らかなわけだ

進化する自治を構想する 17「実践から得る新しい自治の学び」

UCO講座 「進化する自治を構想する」 ucoのテーマである「進化する自治」。これまでの「自治」という言葉の定義や概念を一度見直そう、というところから始まったテーマ。自治のあり方は、それぞれの自治体によって行政の進め方や方向性はさまざまだが、私たちの地元である大阪市、大阪府、とくに現在、あるいは近年の大阪をモデルとしている。  行政主導で進める自治、行政と市民との協働というあり方にしても、硬直化、あるいはロールモデルに沿った流れになっていて、多くの市民はそこに関与していない、

進化する自治を構想する 16「区150年の歩みから未来を描く」

UCO講座 本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み 本渡章さんは、古地図の研究家。2021年に発行された「古地図でたどる大阪24区の履歴書」は、大阪の各区の街歩きのガイドとしても良書であるが、4つの区が誕生した1879年(明治12)から13区、15区、22区と、時代と共に発展する大阪の産業、都市の発展、人々の生活を振り返るきっかけを提供してくれる。各区に残る史跡が、150年にわたる大阪の発展とともにあり、また発展や安泰を望む人々の思いが伝わってくる。  こ

進化する自治を構想する 15「行財政史から考える明日の大阪」

UCO講座「大阪の未来を構想する」行財政編 「大阪の未来を構想する」行財政編は、明治から戦前・戦後を越えて、高度経済成長期を過ぎ、バブル崩壊を経て現在に至る150年弱の大阪の行財政を全5回に渡って敷衍する講座。次の大阪はどういう都市になるのがいいのか、どういう産業による発展を目指すべきなのか、また、今後少子化に向かう中、どのような行政を目指すべきなのかを考えるための礎となる基礎情報的なもの。 ※各回のくわしい内容は末尾をご覧ください。  明治維新以降、大坂が大阪と地名を変

進化する自治を構想する 14「自治を自由度で解放する」

OLA革命でいう自由度と自治  伴年昌さんが提唱する、OLA革命の中で言われる自由度。それは、工業化社会、消費社会の中で「既製品化」された住宅に対する、アンチとなる提案であり、思い込みからの解放という意味がある。住まう人が、より自分の考える生活に合った環境をつくりたいと思う時、既製品として並べられた住宅の中からより理想に近いものを選ぶのか、自身の思う環境にできる限り近づけようと、既製品ではできない「製品」の領域を広げるのか。自由度は、自在につくるということでもあるけれど、意

進化する自治を構想する 13「公共のあり方を再考する」

「シン・アーケード」が公共を問い直す  伴年昌さんが生まれ育った、岡山県真庭市での商店街再生の話は、ご本人が言うとおり、画期的で、コモンの可能性を示す事例だと思います。アーケードのある古い商店街。これまでのような高いアーケードではなく、高さの低い2階程度のデッキのような通路をつくることで、新しい公共のスペースをつくる。新しくできた上部の通路は、下の道路と同じ公道の扱いで、アーケード設置と同じように利用許可を行政に申請するかたち。新しく作った通路は、アーケードと同様、共同体(

進化する自治を構想する 12「市民と対話する行政を望む」

夢洲IRカジノや万博で問われる「ごまかし」  先週に続いて、今週も引き続き山田明さんの「大阪市をウォッチしよう」をお送りしました。9月最終週になって、IRカジノも万博のあわただしい動きを見せたため、タイムリーな話題提供となったのではないだろうか。  IRカジノにせよ、万博にせよ、この間に顕わになったのは、行政の「ごまかし」であり、市民を欺いてきたこれまでの行政の姿勢だ。夢洲特有の軟弱地盤や地盤沈下の問題は、これまでもさんざん指摘されてきたことだが、市民の質問や指摘にはまとも