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人物像を分析するー交流分析の活用ー

 カウンセリングでは、クライエントさんの人物像の分析が重要であると、これまでにもお伝えしてきました。

しかし、分析と言っても何をどう捉えればいいのか、基準やルールがなければ、ぼんやりとした抽象的な感想しか持てずに終わってしまいます。

目の前のクライエントさんがどのような方であるかがしっかりと掴めていなければ、見立ても立てられず、カウンセラーとしての役割もうやむやになります。カウンセリングが成立しなければ、クライエントさんは失望し二度と相談には来て下さらなくなるでしょう。悩みとは単発的なものではなく、その方の成長過程の一部として人生を通して乗り越えていくものです。そのため、長期に渡る継続的な支援が望ましい中で、初回で離脱してしまうのは非常に残念ですよね。カウンセラーとしては申し訳なさや無力感を味わうことになります。

 ということで、カウンセリングを学ぶ中では、分析法も習得していかれることをお勧めします。先人たちが築き上げてくれた様々な精神分析理論がありますので、その中で自分の納得のいく理論を見つけて勉強してみてください。私は、その中でも主に、交流分析を活用させていただいています。

 交流分析とは、1957年にアメリカの精神科医エリック・バーンにより創案された心理療法です。

交流分析では、人は自分の中に大きく分けて3つの要素を持ち、様々な刺激によりそれらが反応することで感情や思考などに影響を与え、その人特有の行動が選択されていくと考えます。その3つの要素がP(Parent)親の自我状態、A(Adult)大人の自我状態、C(Child)子供の自我状態で、平時にはこれらがある程度まとまって機能するのですが、何かのきっかけでバランスが崩れると悩みや葛藤が生じ、人間関係でのトラブルや健康状態などへと影響していきます。

【自我状態】
P(Parent)親の自我状態とは、育ててくれた周りの大人たちから学んだ考え方や価値を自分の中に取り込み、生き方に影響を与えている部分です。その中には厳格さや厳しさを司る『批判的な親の自我CP(Critical Parent)』と、優しさと親切心に溢れる『保護的な親の自我NP(Nurturing Parent)』があります。

A(Adult)大人の自我状態とは、自分の中のコンピューターの部分です。大人と表現されていますが、人として成熟しているという意味ではなく、感情に左右されることなく冷静に物事に対処する役割を担っています。PやCが強く反応していることに気付いた時には、意識的にAを働かせて問題解決に取り組むなどして活躍してくれます。

C(Child)子供の自我状態には、自分が子供時代に実際に感じた感覚や行動のほか、幼いながらも親に対応するために身に付けた対処法などが含まれます。その中にも、ありのままの本能的な感情が表出する『自由な子供の自我FC(Free Child)』と、親の愛を繋ぎとめるために“良い子ちゃん”を演じる『順応する子供の自我AC(Adapted Child)』という2つがあります。

自我状態のイメージ

これらCP、NP、A、FC、ACを組み合わせてバランスを見ることで人格の特性やその時の自我状態を客観的に見られるだけでなく、極端に反応し問題を引き起こしている部分があれば、その他の自我状態を意識的に活用してバランスを取っていくこともできます。

この、問題があると自分で認識できた時には意識的にバランスを取っていけるという点が、交流分析の素敵なところですよね。挫折を繰り返しても人は必ず成長し変わっていけるという希望が持てます。考える葦である人間が、陽が昇り沈んでいく終わることのない繰り返しの日々を生涯生きていけるのは、未来への希望があるからです。

先入観を持たずに真っ白な気持ちでクライエントさんと向き合い、成長を心から信じて支援する、その姿勢を大切にしたいですよね。

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