ブリグズビー_

『ブリグズビー・ベア』映画好きで、よかったと心底思えた…その1 公開中

原題:Brigsby Bear ★★★★★

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映画を観ている最中は楽し過ぎて、観終わった後にも「ああ、楽しかった」と心底思える作品というのは、実はそれほど多くはないと思いませんか?

最先端技術を駆使したあり得ない世界を描く映像体験も、俳優自身の命と引き換えくらいの超絶アクションも、そりゃワクワク、ドキドキします、もちろん。「すごかったね~」と言い合えます。

しかしながら、どんなに低予算でも、ミニマムな世界観でも、いえ、むしろそっちのほうが「ああ、楽しかった」と思える、ということはないでしょうか。

『ブリグズビー・ベア』は、その典型的な1本でした。


サンダンス映画祭で絶賛された今作で監督を務めるのは、エマ・ストーンとも交際中といわれる(??)デイヴ・マッカリー。「サタデー・ナイト・ライブ」のクリエイターです。

主人公のジェームス(カイル・ムーニー)は、小さなシェルターで両親と3人で暮らす25歳の青年。 子どもの頃から毎週ポストに届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」を見て育ってきました。少しばかり退屈でも、パソコンでチャットする友人や仲の良い両親と、平和な日々がずっと続くと思っていたある日、警察がシェルターに突入、ジェームスを連れ去り、“両親”は逮捕されてしまいます…。


実は、生後まもなく誘拐・監禁・隔離され、そのまま25年間、シェルターで「ブリグズビー・ベア」を観ながら育ってきたジェームズ

実の両親と、彼が誘拐された後に生まれた妹が待つ家に帰り、新たな人生をスタートさせるのですが、それには数々の試練が…。


犯罪者である、“古い”父親を演じているのが、マーク・ハミル。彼がヘンテコなSF世界を舞台に繰り広げられる「ブリグズビー・ベア」を全巻製作していたのです。

この点が、我々をどんなときにも照らす太陽のごとくメタ的に利いており、彼をキャスティングした方々、本当にすばらしい。

ジェームズは、シェルターでの青年期はもっぱら「ブリグズビー・ベア」という作品そのものについて考察していたんですね。彼にとってはこの唯一の映像作品が、友であり、師であり、オモチャであり、学習教材でありまして、ある意味、自由の身になった彼が「ブリグズビー・ベア」を自分で撮ってみたい! と思うようになるのは至極当然のことでした。



ジェームズの“好き”という情熱と、それについていく仲間たち。図らずも、彼に協力することになる演劇部出身の警官(グレッグ・キニア)など、ツボるポイントがたくさん。特にグレッグは、『最後のジェダイ』のあの方そのもので、「選ばれし者」なんていうセリフが飛び出したらもう笑うしかありません。

何よりジェームズは、ポジティブで好奇心旺盛、自己肯定感も高いんです。流行の言葉をすぐ真似して使ってみようとするし、新たな体験にも物怖じしません。

皮肉なことに、そんなふうに彼を育てたのは、犯罪者ではあるけれども誘拐犯たちなんですよね…。

その点、『万引き家族』にも通じるところがあり、

1本の映画を作る! という熱い思いに関しては、後に紹介する今年の映画界の大事件『カメラを止めるな!』の神髄とも近しいものがあるのです。

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