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オレが「周辺の言語」を欲張ってやろうとしているもう一つの理由

年明けて元日、二日はELAN(動画アノテーションツール)の基本的な操作方法の勉強とペルシア語にとりかかりました。何もしないよりはよほどよかっただろうというので、それなりに満足しています。

というより、報道で漏れ聞く災害や事故の話から少し距離を置きたかったという面も強かったことは否定しません。当事者各位におかれましては正月早々さぞつらい時間を過ごしておられることと存じます。一刻も早い復興と回復をお祈りしております。

自分のペルシア語はもちろんまだまだ入門レベルまっただ中ですが、時間さえ確保できれば『ニューエクスプレス』はクリアできそうな手ごたえを感じ始めています。

なんといっても、ペルシア文字を使うというのが自分にとってはかなり刺激的です。あの文字群を書きこなせる、あるいは多少でも読めるようになれば自分自身がかなりパワーアップしたような気になれるというか。あの系統の文字に対して親近感さえ覚えれば、今後オスマン語やアラビア文字表記時代のアゼルバイジャン語なども読める道が開けるかもしれない…と考えると、相乗効果も期待できそうですしね。

その意味では、ロシア語もこれに似た動機が自分にはあります(あるはず。あってほしい)。
幸いにしてロシア圏内のテュルク諸語には以前から触れていた(たとえば、昨年少しここでも触れたクムク語などが典型的ですが)ので、キリル文字自体にはだいぶ親近感を感じている身にはなっていると自覚してはいます。ただ、文法構造がテュルク諸語とはだいぶ違うので、そこは勉強のし甲斐があるところでしょう。なにより、ロシア圏内で使われているテュルク諸語については、ロシア語で書かれている文献が圧倒的に多いわけで、そこにアクセスできるようになればまた見え方も変わってくるだろうという期待もあります。

そういうわけで、テュルクの周辺言語に目を向けるというのは利点しかないのですよね。もちろん勉強を続けるのは簡単なことではないのですが、自分なりの理想を目指す価値は十分にあるだろうと思っています(じゃないと、語学書に万単位でお金突っ込みませんって)。


あと、もう一つのモチベーションとして、授業等の場面で周辺言語の知識が役に立つという具体的な利点もあります。

昨年度から、限定的な回数ながら地元の大学で言語に関する教養の授業を担当させてもらっているのですが、その科目名が「日本のことばと世界のことば」で、日本語を客観的に見るための視点を提供するという趣旨の内容で授業を展開しています。主な思考材料は、日本国内の諸言語(諸方言)がメインになっているのですが、やはりトルコでの日本語講師という経験を踏まえて教壇に立つ以上は日本国外の言語の話をしたいなと思ってしまうのですよね。

そのときに、ただトルコ語とアゼルバイジャン語あたりの話だけしかできないのもどことなく気恥ずかしさを感じることがあります。この気恥ずかしさは、おそらくそのコンテンツで別の仕事をしているという部分が大きいのだろうと思います。

もちろんトルコ語の話などは、それはそれで受講生にある種の刺激を与えられるかもしれないのですが、「世界のことば」と銘打ちつつも限定的な言語しか興味がないと思われるのもちょっといやだな、と思うのです。

ほんの少しでもいいので、「世界にはこういう言語もある」という引き出しを自分自身ができるだけたくさん持っていたいなと最近は思います。

それでいうと、今年度(時期的には昨年の秋ですね)授業の中でエスペラントに言及できたのは我ながらよかったと思っています。

さほど難しい例文ではなかったのですが、テンス(時制)の話のところで、「日本語には過去形と非過去形の対立がある」という話をしました。そのときに、世の中には「未来」を表す形をもっている言語もちゃんとあるんですよ、というのでもちろんトルコ語の例もホワイトボードに書いて見せまして、その勢いで「参考までに」というので、エスペラントに言及したというわけです。

エスペラントなら、動詞語幹に-is, -as, -osとそれぞれ接辞をつければ過去、現在、未来を表せてとてもシンプル、例外もないし興味ある人にはオススメです、と協会会員としての使命を全うした次第でありました。かくして、たった一人だけでしたが授業後の感想コメントで「エスペラント面白そうだと思いました」と書いてくれたのは、本当に小さいながらも昨年秋の授業での収穫の一つだと思っています(いやマジで、してやったりでしょ)。

これに味をしめて…というわけでもないですが、もしまた来年度そういう内容の授業を担当する機会があれば、そのときにはまたペルシア語なりロシア語なりの自分の知識が活かせればいいですよね。

大学での授業内容ということを考慮すれば、本当は「言語学」に興味をもってもらうべきなのでしょうが、あえて「英語以外の言語」に興味をもってもらうのも、自分に期待されている(誰が?という話はありますが)一つの重要なミッションだろうとも思いたいところです。もちろん地理的に全世界まんべんなく諸言語に言及するというのは自分には無理ですが、逆に開き直って「自分は興味があるからこういった言語を勉強していて楽しいですよ(注:ここに力点を置きたい)、受講生の皆さんもどうですか一つ?」という姿勢で臨めれば最強なのではないかと。

長々と書きましたが、年の初めというのは自分自身がモチベーションが高くなる時期なので、あえて「その他の言語」にこだわれる理由として自分が思いつくところを書いてみました。

語学と言語学の関係については、以前東京大学の長屋先生も詳しく述べておられますね。

本記事で自分が書いたことは、おそらく大筋としては上記リンク先の長屋さんの文章の内容に合致しているのではないかと思いますがどうでしょうか。

まあそれはそれとして、三が日もあっという間ですね。
どうぞみなさまにとって、語学的な観点で少しでもよい正月となりますように…

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