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読書感想文

真夜中乙女戦争|F

「他人と比較してもおまえの価値は上がりもしないし下がりもしない」

なにもない、友達も恋人も恩師もいないし、好きな人の好きな人は自分じゃない。
趣味も特技もなければ、やりたいことだってない。
毎晩のように東京タワーを眺めるか、図書館で勉強するだけ。
世の中のことすべてに絶望した大学生が黒服と出会い、犯罪計画に巻き込まれてしまう。
夜中に突然くる寂しさ、空虚感。すべてを破壊しなくなるような衝動。

星の子|今村夏子

「ぼくは、ぼくの好きな人が信じるものを。一緒に信じたいです」

産まれた直後から病弱で毎晩苦しんでいたちひろ。
父は会社の同僚の落合さんから「それは水が悪いのです」と、金星のめぐみという水を勧められる。
ちひろを救いたいの一心で、以降両親は新興宗教にのめり込んでいく。
中学3年生になった娘は世間との間に違和感を覚え、徐々に家族のかたちを歪めていく。
信じていた当たり前の幸福な日常が、傍から見たら異常な暮らしで不幸と思われていると気付いても、受け入れることができるのだろうか。

希望が死んだ夜に|天祢 涼

「希望なんて、どこにもなかった。あったと思ったのは幻だった」

同級生ののぞみを殺害した容疑で逮捕された14歳のネガ。
彼女は犯行を認めたものの動機については一切語ろうとしない。
貧困家庭に暮らすネガと華やかなのぞみに付き合いはなさそうだったが、調査をしているうちに明らかになったのは、大人たちの勝手な都合だった。
絶望が重なったとき、頑張る力がなくなってしまったとき、人はどうなってしまうのか。

幸福な食卓|瀬尾まいこ

翌日もまた朝がやってきた。本当に不思議だ。
どんなにショッキングなことがあっても、日常はきちんと進んでいく

父は風呂場で自殺未遂。母は近所で別居。
兄はすごい秀才なのに変な派手な女と付き合い始める。
私は佐和子。私の家族はちょっと変。
中学の友だち大浦くんは困ってたら助けてくれる、救世主。
どんなに辛く悲しいことがあっても日常は続くし、生きている限り時間は進む。
すぐに傷が癒えるわけでもない。傷と共に生きていくしかない。
死にたいほど辛いことがあるのに生きている不思議。生きてることが奇跡。

キッチン|吉本ばなな

幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ

両親と祖父母を亡くし、天涯孤独の大学生・桜井みかげ。
祖母に世話になったという大学生の田辺雄一がある日現れたのをきっかけに元父親だった雄一の母親と、雄一、みかげの3人での生活が始まる。
生き続ける限り、避けられない出会いと別れ。
喪失感から一歩進むには、乗り越えるのではなく、受け止めることかもしれない。

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