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急にドラムを習い始めた話

2月某日、ドラムスタジオで人生で初めてドラムを叩いた。今現在まだ無料体験しかやっていない状況なのだけれど、あまりにも目が覚める体験が凝縮していたので忘れないように記録しようと思う。



習い始めた理由


なぜ大人になって急にドラムをやろうと思ったのか?きっかけは今年のお正月に「2024年やりたいことリスト」を作成したことだ。「そういえばドラム演奏できたら格好いいよなぁとずっと思っていたな自分」と気付きリストに記入。お正月明け、自宅から通えそうな距離にあるドラム教室を探し、そのまま無料体験を申し込んだ。

ドラム教室を選ぶにあたって1番優先度が高かったのが「希望の曲を演奏できること」。過去にタップダンスを習っていたことがあるが、スケジュールが合わなくなり結局半年ほどで辞めてしまった。そういえば、スケジュールの理由以外にも、先生指定の課題曲で練習していたので自分の目指す先が途中でわからなくなったことも大きかったな…と思い出し、今回ドラムを習うにあたり「絶対自分の好きな曲を演奏したい!」と強く思っていた。
もう1つはマンツーマンレッスンができること。これも前述のタップダンス教室での経験なのだが、長く通っている生徒さんたちの間の「暗黙のルール」のようなものを感じとても居心地の悪さがあった。具体的には、レッスン前後の掃除のやり方や先生との距離感など。そしてグループレッスンだとどうしても生徒ひとりひとりへの指導が薄まってしまうし、他の生徒さんに進度を合わせるのも正直面倒臭い(ひどい)。マンツーマンはその煩わしさがなくなると想像した。

いよいよ無料体験の日

自宅から30分ほど歩いて辿り着いたスタジオ。ビルの中に複数の音楽スタジオが併設されており、個人の音楽教室の貼り紙がいくつか貼ってあるところを見るとスタジオを共有している感じなのかな?と想像。早めに着いたのでロビーで待っていると、いかにもバンドマンらしい出立ちの人が他の階に向かっていった。あぁいう人が使っているんだな、と知らない世界を認識。

少しして先生が登場。確実に音楽をやっている感じだけれど、ちょっと暗い雰囲気があり共感。通されたのはドラムセットと少しのオーディオ機器が置いてある狭い防音室。こんなにドラム近いの?大丈夫?!と心配になる。

まずはお互い名乗り、先生からは、なぜドラムを習おうと思ったのかと聞かれたので冒頭の理由を述べたら、暗い顔がフワッと明るくなった。おもしろかったようでよかった。次に事前にメールで伝えていた希望曲について、なぜこの曲なのか?なにか思い出があるのか?と聞かれたので「前から好きなバンドで、ドラムが格好良いといえば、で選びました」と伝えたら「いいですね」と言われた。嬉しい。
ちなみにこの曲 VintageTrouble「Blues Hand Me Down」

練習の前に基本的なドラムセットの名称とスティックの握り方を教わる。「持ち方、力が抜けていてとてもいいですが棒を持つなにかをしていましたか?」と先生。「棒を持つなにか」というワードを人生で初めて聞いて思わず口に出して繰り返してしまった。棒といえば槍投げしか思い浮かばないが槍投げはやったことがない。「棒を持つなにか……あ、バドミントンやっていました(棒なのかな)」と伝えたら「それですね!他の生徒さんでもバドミントンやられていた方がいて、スティックの持ち方がいいんですよ〜」。この回答であっていたようだ。まさか過去のバドミントンの経験がここに繋がるとは…人生マジでわからない。

そこから足元のバスドラムの叩き方、スネアの叩き方、シンバルの叩き方をそれぞれ教わる。バスドラム、難しい。足首で踏むイメージだったけれど、実際は貧乏ゆすりのような、股関節から使う感じだった。各パートを練習し、それぞれ組み合わせて練習、を繰り返す。楽しい。自分でいい音が出た!と感じたときに先生も「それそれ!」と言ってくれたので、いい音が出せた嬉しさと、自分の「いい音」の感覚が間違っていないことへの嬉しさがあった。

そして最後に、私が演奏したい曲を先生が少し見本演奏してくれるとのこと。席を代わる。オーディオ機器から音楽が流れ、それに合わせて演奏してくれた。……!!!すごい!!!!えー!すごい!感動!よほどバンドでもやっていない限り、ドラムの音をこんな間近で聞けることはないだろう。すごい格好いい。曲の1番を演奏してくれて、終わったあと思わず拍手。興奮する私を前に先生は「自分でも少し叩いてみた後だから、前よりも解像度が上がりますよね」といたって冷静。教えるのが上手い。

「今日の練習の感じだと、月2回通って半年くらいでこの曲はできるようになると思いますよ」とのこと。半年でできるんだ、すごい。生徒さんによってスピードは様々だと先に言及してくれていたので「他の生徒さんはどれくらいで1曲できるようになるんですか?」という愚問をせずに済んだ。すぐ比べてしまうのがよくない。

入会について聞かれ、「やります!」と即答。次回のレッスンを予約し、諸連絡を聞きこの日は帰宅。

さらに個人練習までしてみた


え?ドラムってこんなに楽しかったの?なんで今までやらなかったんだろう?えー!楽しい!ひとり興奮する帰り道。そういえばうちの近くに個人練習ができる貸しスタジオがあったな、と事前に調べていたスタジオを思い出し、そのままの勢いで電話。「今日の17時から1時間ドラムを使いたいです」と伝える。
スティックはまだ持っていないのでレンタルできるか聞いたところ、「え?持ってないの?初心者さん?変に叩いて壊されたらやだよ〜」とおじさん。「ちゃんと習っているので大丈夫です」と無料体験しかしていないくせに自信満々に伝えると、少し声のトーンがやわらかくなり「貸し出しは無料だけどボロボロだよ」とのこと。とりあえず借りられるのでよかった。

この日は無料体験30分に加え、自主練1時間もやってくたくたになった。
最高に楽しかった。


ドラムを初めて演奏してわかったこと


・ピアノやギターと違い音階がないので、とりあえず叩くだけで演奏はできることがとても嬉しいし楽しい。
・スティックは長さや重さなどの違いがある。
・それもあり、個人練習は通常マイスティックを持参する。
・型をどんどん覚えていくイメージなので練習がしやすい。
・手と足を使うので運動になる。特に足。
・霧の中を彷徨うように行っている普段の仕事と比べると、「半年後、あの曲を演奏できるようになる」というわかりやすい努力の方向と目標が示されているのは心地よさと安寧がある。

そしてこれが1番の収穫だったのだが、「『井の中の蛙状態』だと私は1番力を発揮できる」ということがわかったことだ。

井の中の蛙でもよくないか


「井の中の蛙」とは一般的には「見識が狭く自分の範囲内でしか物事を考えられない」という意味だけれど、私は悪いことだけではないように思っている。気になって改めて意味を調べていたところ、諸説はあるが実は「井の中の蛙大海を知らず」の後に「されど空の深さ(青さ)を知る」と続くという説を見つけた。まさに私の感覚はこれである。

狭い部屋でマンツーマンレッスン。他の生徒さんがいるでもなし、とにかく自分のやりたいことを自分のペースで進める空間。なにより、完全に「趣味」として楽しむことを決めて始めたので気負うことがなにもない。この感覚が非常に気持ちよい。自分のことだけに集中している感覚だ。

記憶を辿ると、私の歴史の中で最も自分の力が発揮されていたと感じるのが高校生ごろだ。特に当時かなり力を入れていたプリ帳(プリクラを貼るノート)なんかは、オリジナルの絵を入れてレイアウトして、その日の出来事も書き加えて…と色々爆発していた記憶がある。
当時はSNSも出たてのころでもちろん携帯はガラケー。mixiをギリギリ始めていたかな?くらいの時である。だから、多くの人に見せる訳でもなく、本当に自己満足でやっていた。周りの情報も雑誌から得るくらいなので、比較対象のサンプルがかなり少なかったように思う。

現在進行形で感じる現代の息苦しさは「井の中の蛙」になれないことではないか?と気付く。目を開ければインターネットやSNS。情報は途絶えることを知らない。様々な情報を得ること、多くのことを知ることは、それだけ視野が広がり思考も広がる。悪いことだとは思っていないが、比較をしやすいということは少なからずある。

世の中のお悩み相談では「人と比べてしまうんです」というようなものを多く見かける。人は人を比べて当たり前だけれど、その後のパフォーマンスによい影響なのか、悪い影響なのかというのは個人差があるように思う。私はどちらかというと悪い影響を感じやすい。頑固ではあるが気にしいでもある私は、気にしないふりをしていても人に言われたことや自分で見たことなんかを寝る前にしつこく思い出す。この感覚というのは、空の青さをきちんと知る前に大海をチラ見してしまった、という感じだ。知ってしまったら、知らなかった世界には戻れない。

ドラムがくれたこと


今回のドラム体験は自分にだけフォーカスしている感覚が久しぶりに蘇りとても気持ちがよかった。まさに「のびのび」という感じだ。勇気を出して始めたドラム演奏が、こんな感覚も呼び起こしてくれるとは想像もしていなかった。

格好良くドラムを叩いている未来の自分を想像しながら、次回のレッスンも楽しもうと思う。


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