小林浮世

小林浮世

最近の記事

彼方からの電話、待てなかった会社員

会社を辞めて7ヶ月が経った。 短期留学に行ったり、大学の通信課程で勉強したりしているので、それなりにやることはあるのだが、毎日8時間以上拘束されていた会社員時代に比べればかなり時間に余裕がある。 これまでとは比べものにならないほど色々な舞台や展覧会を観ている。 特に、ミスiDウォッチャーをやっていた頃に知った人たちの舞台をやっと観られたのが嬉しかった。小劇場や小さな会場でやる舞台は上演期間が短いので、仕事が立て込んでいる時期には見逃すことが多く、また疲れている時は土地勘の

    • 償いとは:「WILL」と「プリズン・サークル」を観て考えたこと

      ※ネタバレあり※ 2月から3月上旬にかけて観た2本の映画が、どちらも社会的に許されないことをした人たちのドキュメンタリーだった。2月末に鑑賞した「プリズン・サークル」は島根県の刑務所で行われている再犯防止プログラムに参加する少年たちを追った作品、3月上旬に鑑賞した「WILL」は週刊誌に不倫を報じられて人生が一変した俳優・東出昌大に密着した作品だ。 「プリズン・サークル」に登場する再犯防止プログラム「TC(Therapeutic Community: 回復共同体)」の中では

      • 青森:空想の子供、産まれなかった子供

        2泊3日で、一人で青森に行ってきた。青森県立美術館で開催されていた展覧会「奈良美智:The Beggining Place ここから」を観るためだった。 展覧会は、作品の点数はあまり多くなかったが、奈良美智の初期の作品が充実していた。また、高校時代に足繁く通っていたログハウス風のロックカフェを再現したコーナーは、アーティストの原点に触れる上で貴重だった。 奈良の作品に出合ってから今日までの約四半世紀の間に、様々な場所で奈良の絵画や立体作品を鑑賞してきたが、なぜ奈良が幼少時代

        • 長々と「ゴーストワールド」考

          私がテリー・ツワイゴフ監督の映画「ゴーストワールド」と出会ったのは、2000年代中盤のことだった。映画館ではなく、ツタヤでDVDを借りて実家のリビングで観た。コロナ禍によってビデオ・DVDレンタル屋としてのツタヤが街から消えた今になって振り返ると、あの日からずいぶん遠くに来てしまったことを実感する。 映画冒頭、アップテンポなジャズが流れ出し、こぶしの利いた男性シンガーの声が重なる。「シャンフェケシャンフゥ」--何語だか分からないが、気分を高揚させる陽気なグルーヴ。しかし、映

        彼方からの電話、待てなかった会社員

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          はじめまして。小林浮世です。(私を既に知っている方も、note上では初対面ということで。) 2021年、会社員生活をしながら書いた小説「退職前夜」で三田文学新人賞の佳作を受賞し、それ以降「作家」と名乗っています。 2023年7月に仕事を辞め、今は大学の学芸員課程(通信)で勉強しながら、仕事に追われて下火になってしまった執筆活動をもう少し頑張ろうとしています。 しばらくTumblrでブログを書いていましたが、登録しないと全文読めない仕様になっていることが分かって(私が知らなか

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