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教員が生徒から恋愛感情を抱かれたら?その先へ進んだ実例は?

教員に恋愛感情を抱く生徒がいる。

恋愛感情までいかなくとも、教員に憧れを抱く生徒はとても多い。
自分自身の学生時代を振り返ると、そういえばみんなから人気のある先生がいたなあとか、あの先生と会話をするとちょっとドキドキしたなあとか、思い出すひともいるのではないだろうか。
それはごく一般的な出来事だ。

しかし、大抵は憧れのまま終わるのに、そこへ何らかの要素が加わって気持ちが膨れ上がれば、恋愛感情に発展する。



何らかの要素とはさまざまなものが考えられるが、おそらくそのほとんどに共通するものがある。

それは教員の態度だ。
具体的には特別扱いをするかのような態度だ。


生徒は素直で単純なので、いや、生徒に限らず、大人になっても多くのひとがそうなのかもしれないが、憧れを抱いている相手から優しい笑顔を向けられたり優しい言葉をかけられたりして自分は特別扱いをされているのかもしれないと思うと、途端に気持ちは膨れ上がるものだろう。



そのため、たとえどんなに生徒のほうから積極的かつ情熱的なアプローチをしたとしても、わたしは生徒を1ミリも非難しない。1ミリも、だ。



でも、教員は違う。

生徒に恋愛感情を抱かせたら、それは教員の責任であるともいえる。

実際は、教員と生徒の個人的な接点が極めて少なく、教員の責任は限りなくゼロに近い場合も稀にある。

それでもやはり、生徒に恋愛感情を抱かせたらそれは教員の責任であるという認識を、すべての教員は持つべきだと思っている。



教員になる条件のひとつに下記のものがある。

教員は生徒に特別な感情を抱いてはならない。

それは生徒の特別扱いをしてはならないということであり、すなわち、生徒に恋愛感情を抱かせてはならないということでもあるのではないか。



なお、毛色は異なるものの、生徒に特別な感情を抱いてはならないという基本的なことについては、こちらの記事でも詳しく触れている。

教員は、いかなる事情があろうとも、特定の生徒を特別扱いしてはならないのである。



さて、ここまで書いておきながら、わたし自身は生徒から恋愛感情を抱かれたことがある。

一度目は大学生のころ。
家庭教師のバイトをしていて、生徒だった高校生から恋愛感情を抱かれた。
バイトとはいえとても反省し、申し訳なく思いながらも、すぐに家庭教師の契約を解除してしまった。

二度目は社会人のころ。
学校生活に困難が生じている生徒の話を聞いていたら、それが恋愛感情を抱かれることに繋がってしまった。
このときは一度目のときと比較にならないほど反省し、何がいけなかったのかよく考えた。
その結果、話を聞きながら親身になりすぎてしまったのではないかと気づき、二度と同じ過ちを繰り返してはならないと心に決めた。

それからは、生徒から向けられる憧れを憧れのままでとどまらせるよう、自分なりに工夫をしてきた。

たとえば、生徒が敬語で話しかけてこないとしてもこちらからは徹底して敬語で話しかけたり、生徒から距離を縮めようとされても一定の距離感を保ちながら毅然とした態度で接したりと、常に自分たちの立場を意識させるような振る舞いを心がけてきた。

生徒から憧れを抱かれたら教員はすぐに気づくはずなので、そのときは憧れを憧れのままでとどまらせるよう、工夫をしたほうがよい。

これはわたし自身の経験による戒めだ。



なお、言うまでもないが、生徒から恋愛感情を抱かれることが罪になるという決まりはない。

そのため生徒から恋愛感情を抱かれたからといって、教員に処分が下されることはない(教員が意図的に誘発している場合を除く)。

しかし制度上問題がないから仕方ないと割り切ることもまた違うとわたしは思う。

教員は自分の態度次第で生徒から恋愛感情を抱かれてしまう可能性があることを念頭に置き、そうならないような工夫をするべきだろう。



一方、生徒に恋愛感情を抱かせるだけでなく、その先へ進んで生徒と恋愛関係を結び、結婚まで至った教員もいる。

むしろ生徒と結婚した高校教員は意外と多い。

いまこの文章を書きながらも、あの人と、あの人と、あの人と、といった具合に何人かの教員の名前がざっと浮かんできたほどだ。

生徒といっても卒業後であれば恋愛関係を結ぼうが結婚しようが罪にはならず、教員に処分が下されることはない。

そのため生徒と恋愛関係を結んだ教員は、大抵、次のようなことを主張する。

教員も人間だから感情はある。
年齢や立場を超えて互いに惹かれ合い、恋愛関係に発展することもある。
人間同士の関わり合いにおいて自然な流れだ。

たしかに言いたいことは理解できる。
しかしわたしはまったく共感できない。

教員が男だから許されるとか、逆に女だから許されるとか、生徒にアプローチされたから許されるとか、卒業後の成人した者同士だから許されるとか、そんなことはすべてどうでもいい。

教員が生徒に対して恋愛感情を抱くことなど、何があろうとも起こってはならないとわたしは思う。



生徒の背景には保護者がいる。

大半の保護者は教員に対して我が子に恋愛感情を抱く存在だという認識を持っていないはずだ。

もし、教員を信じて生徒のことを任せている保護者が、この教員は我が子にいずれ恋愛感情を抱く存在だと知ったらどう思うだろうか。

人間同士の関わり合いだから自然な流れだよね、と割り切れる保護者もいるかもしれないが、おそらく気持ち悪がられるほうが自然な流れなのではないだろうか。



教員が生徒に対して特別な感情、ましてや恋愛感情を抱かないということは、生徒及びその保護者との信頼関係に基づく、大切な大切な約束である。



わたしはいままで、お世話になった教員だとしても、実は婚姻相手が過去の生徒だと知り、幻滅してしまったことが何度かある。

学生のころは幻滅などしなかったかもしれないが、いまは自分が教員となり、生徒はあくまでも生徒であると知っている。

だからこそそういう目で生徒を見る教員がいるのかと思うと、さーっと何かが引いていくかのような嫌悪感を覚え、幻滅してしまうのだ。



話をまとめよう。

教員は、生徒に恋愛感情を抱かせたらそれは教員の責任であるという意識を持つべきだし、その先へ進んで生徒と恋愛関係を結ぶことは論外である。

制度上問題がないことは踏まえている。
しかしこれが高校教員であるわたしの現実的かつ感情的な本音だ。

教員になったなら、生徒及びその保護者との信頼関係に基づく大切な大切な約束を、守り通さなければならないだろう。



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