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〈高校の3観点別評価〉試験の点数が1点だと成績はどうなる?

今年度もまた学年末の成績をつける時期が来た。

1、2年生はこれから学年末試験が始まるころだと思うが、3年生は成績をつけ終えて判定会議も済んでいるころだろう。

学期末を迎えて授業がなくなると肩の荷が下りるものの、試験の作成と採点、そして成績をつけるまでの流れはいつも時間に追われて慌ただしく、肩が凝る。

特に学年末は1年間の総まとめでもあるため、確認事項も増えるし、いつも以上に細心の注意を払わなければならない。



さて、高校は昨年度(2022年度)から、下記の3観点別評価によって成績をつけることになっている。

1.知識・技能
2.思考・判断・表現
3.主体的に学ぶ態度


これがまあ大変で面倒臭い。

きっと昨年度はシラバス作成から成績処理まで、各高校で多大なる面倒臭さを招いたのではないだろうか。



わたしも慣れないうちは手元にある記録とパソコンの画面を交互に見つめ、頭をひねらせていた。

ようやくできあがった数字とアルファベットだらけの細かな表を前にして、頭のなかでぼそぼそとつぶやきながら、ひとつずつチェックした。

※余談だが、ぼそぼそとつぶやくのはぜひ頭のなかだけにとどめてほしい。たまに実際にぼそぼそとつぶやいている教員がいて、そのほうがやりやすいことはよくわかるが、みんな気になっているはずだ。

職員室内ではあちこちから「ちょっとこれのやりかたがわからないんですけど〜」などという声があがり、教務の担当者は自分もまだ手探りだというのにあちこちへ出向いて、確認したり教えたりと忙しくしていた。



しかし2年目の年度末(現在)を迎えるとさすがに慣れてきて、昨年度に比べると、かなりスムーズに成績をつけることができた。

これはもちろんわたしだけでなく、ほかの教員もだいたいおなじだ。

当たり前のことだが、教員には事務的なスキルも必要であることを改めて思い知らされた。



さて、3観点別評価による成績処理を2年間経験してみたところ、すこしびっくりさせられるケースが起きたので2つに分けて紹介したい。



▶︎試験の点数が99点でも成績は4がつく。

いやいや試験の点数が99点って……
比較的点数を取りやすいものの満点は取ることが難しいとされている国語科の試験でほぼ満点。
断トツで学年トップの点数だ。

100点満点中の99点であれば間違いなく5がつきそうなものである。
本人の姿勢にもまったく問題はない。

しかし3観点別評価によって試験の重要度は低くなるため、提出物や発表など試験以外の分野においてすこしの(決して大量ではなくすこしの)漏れがあれば、成績は4になるのだ。



▶︎試験の点数が1点でも成績は2がつく。

いやいや試験の点数が1点って……
比較的点数を取りやすいとされている国語科の試験で1点を取るほうが逆に難しそうだ。
さしずめ解答用紙はほぼ空欄で、選択問題がひとつだけ正解していたというところだろう。

100点満点中の1点であれば間違いなく1がつきそうなものである。

しかし3観点別評価によって試験の重要度は低くなるため、提出物や発表など試験以外の分野においてちらほらと(決して完璧ではなくちらほらと)取り組んでいれば、成績は2になるのだ。



両者のケースからわかることはただひとつ。

試験の点数は成績にあまり影響しない。

この事実は、試験の点数の重要度が大きく、むしろほぼ試験の点数のみによって成績がつけられていた世代(保護者の世代)にとって、おそらくかなり不思議なものに感じるのではないだろうか。



試験の点数が高い生徒はなんとなく損をした気になるかもしれないが、そういった生徒は評価基準を理解して「まあいいや」と納得することもできるし、改善を図ることもできるだろう。

一方、試験の点数が低い生徒は明らかに得をする(3観点別評価の恩恵を受ける)。

試験に苦手意識があり、どうしても点数を取れない(もしくは取る気がない)生徒は、たとえ試験の点数が1点でも成績がきちんとつき、進級や卒業ができるという事実に安心感を覚えるだろう。

逆に、1という成績をとることは、ものすごく難しくなったともいえる。

そもそも相対評価から絶対評価になった時点で1をとることは難しくなっているのだが、3観点別評価の導入により、さらに加速したのではないだろうか。

出席日数が足りずに欠課となった生徒以外は、ほとんど1をとることがないかもしれない。



3観点別評価に対する賛否はさておき、こういったケースが起こり得ることは想定済みだったが、実際に目の当たりにするとやはりすこしびっくりしてしまった。



以上のように高校の成績処理では大きな変化があったのだが、生徒はあまり関心がないようだ。

新年度に高校側から説明を受けたときも、ふーん、よくわからないけど成績のつけかたがちょっと変わったんだね、という程度の認識だったかもしれない。

教員たちがあたふたしながら3観点別評価を習得し、そのうえでようやく成績がつけられていることなど生徒は知ったことではない。

生徒は渡された成績を見て「おお、3観点別評価になったから変わったな!」などと思うこともなく、きっとそのまま受け入れるだけだろう。

自分自身も高校生のころ、成績のつけかたなどあまり考えることはなかったように思う。



何はともあれ今年度もまた学年末の成績をつける時期が来た。

わたしは無事に終えることができたので、ひとまず心からホッとしている。

今年度もおつかれさまと自分に言いながら飲むコーヒーは一段とおいしく感じる。

この瞬間は何度経験しても大好きだ。




*成績処理についてはこちらにも書いている。

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