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こんな「業務委託」にはご用心

最近、リモートワークの推進や働き方改革などの影響もあり、フルリモートやフルフレックスなどの柔軟な働き方や、オフィス以外でも仕事ができる環境が整ってきているなか、「業務委託求人」を目にすることがより増えてきた気がします。

副業や兼業として、パラレルワークなど、複数の収入や仕事があるならば、業務委託で働くことにデメリットは少なく、むしろ良い点もあると思っています。(もちろん、吟味する必要はあると思いますが)

その仕事は本当に「業務委託」が適切か

しかし、なかには「これって、ほぼ会社員じゃない?」と思えるような勤務体系の、業務委託求人もあります。(個人的には、IT・Web系やクリエイティブ系、ベンチャーなどに多い印象があります)

業務委託として複数の企業から仕事を請けていて(いわゆる完全なフリーランス)その働き方が向いている、という人は良いのですが、そうではなく、ひとつの企業のみにコミットする必要がある業務委託求人には、注意したほうがよいと経験から感じています。

フリーランス歴が長かった私から言うと、業務委託が向いてるケースは、以下です。

・一社のみでなく複数の収入源がある
・不定期の仕事である、または仕事のボリュームが適切
・時間や曜日などの「縛り」がゼロ
・雇われて働くより「自分にとって」メリットが大きい
・どうしてもやりたい仕事である
・今後のビジョンがはっきりしている
・いざというときの保障などが必要ない状況にある

一方で最近では、「週5日、8時間程度の勤務、フルリモート(フルフレックス)で年収も数百万円程度」みたいな業務委託求人があったりします。

明らかなブラック企業のようなところではなく、比較的ふつう、または業績伸ばしてます系(一部上場とか事業拡大中とか)の企業でこういう求人があったりするので、問題点が若干見えにくいかもしれません。実際に私も、そこそこ知名度のある会社から、会社員並みの稼働をする業務委託求人のスカウトを受けたことが過去にあります。

一見、「雇われずにプロとして仕事ができる!」みたいに思うかもしれませんが「会社員よりも圧倒的に高収入」などのメリットや、「何がなんでもその会社で働きたい(誰もが知るような企業とか、憧れだった仕事ができるとか)、経験を今後のキャリアにつなげたい」などの動機や明確な目的がない限り、実際、リスクが大きいと思います。

「雇っていないので」で済んでしまう

正社員と同等に働く人材が必要なのであれば、雇えばいいわけです。それをしない(できない)のは企業側のコストの削減だったり(社員は固定費になるため)、いざというときのリスクヘッジだったりもすると思います。(もちろん、双方が納得済みであれば良いですが)

たとえば、A社という会社の部署で、3人が社員、3人が業務委託、3人がパートで、仮に似たような勤務時間で働いていた場合、なにかあったときに「普通に失職する」リスクが圧倒的に大きいのは業務委託です。そこは、業務委託で何年働いていようが、会社で活躍していようが関係ないです。

なぜなら「雇用契約」ではないので、労働基準法が適用されないため、仕事がなくなったとしてもA社は責任を持つ必要がないからです。雇っていないので「解雇」「リストラ」ですらありません。すごくシビアな言い方をすれば「そもそも雇っていません。これまで、業務を委託していただけです」で、終わりです。

繰り返しになりますが、業務委託契約で正社員に近い年収や月収・働き方を提示するなら、最初から正社員なり契約社員として雇えば良いわけですよね。それをしないということは、それなりの事情があってのことだと(個人的には)思っています。また、有給や社会保険、傷病手当や育児・介護などの休業制度もないため、平日フルタイムで数年間業務委託で働いたとしても、雇用されていれば(正社員に限らず、契約、派遣、アルバイト、パートであっても)何かしらの救済があったりもしますが、業務委託に限っては、働けなくなれば普通に収入ゼロです。

その点では、非正規雇用でも「雇用」されているほうが、もしものときの立場は断然強いです。なぜなら、どんな雇用形態であっても「雇っている」限り、仮に雇えなくなったとしたら何かしら対応をしなければいけない(たとえば解雇予告手当だったり、ハローワークで失業給付を受けられるとか)。

あきらかな「企業都合」の業務委託は避けるべき

ひとつの会社のみで業務委託として会社員並の時間働き、そこで数百万円の年収を得たとしても、個人事業主扱いになるため確定申告も必要で、手当などもないため、実際の収入は正社員ほどにならないケースもあります。

また、前述の通り労働基準法が適用されないため、ハラスメントに遭ったり過重労働をさせられたりしても、これが雇われていれば労基署に相談できますが、業務委託の場合はそれができない(雇われていないので)ので、会社員並みに働いていたとしても個人事業主扱いに変わりはなく、トラブルに遭遇した場合は実質、泣き寝入りになってしまいます。

そもそも「業務委託なのに会社員のような働かせ方をさせていたなら違法だから、企業が制裁を受けるんじゃない?」という考えもあるかもしれませんが、実際、そういうことをする企業って、うまーく、そのへんの法律をくぐりぬけたグレーゾーン的なやり方(いざというときに不利にならない方法)にしていると思うんです。

たとえば、会社員と似たような働き方をしなければ実質仕事が終わらなくても「強制はしていませんよ」みたいなスタンスとか。実際、長時間働かないとこなせないような仕事量でも「そういうことも見込んだ報酬にしています」とか。

リモートなどをはじめ、自由な働き方が浸透しつつあるからこそ、それを逆手に取った(すべてがそうというわけではありませんが)「業務委託」求人があるのではないか、と感じています。

もちろん、業務委託自体を否定しているわけではなく、メリットもたくさんあります。ただ「企業の都合よくしたいがために、本来雇うべきところを業務委託にしているケースもある」ということは、伝えたいです。









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