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人の気持ちが分かったとき

言いたいことや、やりたいことが
手に取るように分かる人がいた

学生時代、私は病院で夜間のバイトをしており
その時、一緒に在中していた薬剤師がいた

なんとなく近寄り難い雰囲気な孤高の人
勤勉で神経質&几帳面、ストイック
周りとほど良く距離を取るような人だった

私はバイトの身分だったので、その人のシフト時は、院内薬局へ手伝いに行かされた
きっと、周りはその人が扱いづらいから
私を応援に出したのだと思う

薬剤のことは何も分からない立場にいながら
何故か、その人が欲する物事が耳に聞こえてくるような感覚で
とてもスムーズに作業を終えていた


病院のバイトを辞めて、就活が終わった頃
その人から連絡があった
「うめこと組んで仕事がしたい」

暫く会わない間に1軒の調剤薬局を経営
それから各地のクリニックの医院長に
調剤薬局をやらせてほしいと回っていたらしい

その人の奥様より私はよき理解者で
私以上にその人のことが判る人はいないという

話っぷりから、よこしまな心は感じなかったが
社会人経験がないのと、内定を手離すのは惜しい
丁重にお断りした
その人の夢の思いが今なら分かる、しかし…


言葉が必要ない、答え合わせもない
愛し合うことがない、気兼ねもない
感情はクールな青や白の醒めた彩り

今、現在
どうしてあそこまで、手に取るように気持ちが分かったのだろうと考えてみると

・ 他人の気持ちになって考えたところで
出てくるのは
自分が考えた相手の気持ちでしかない

・ 会話や書類で意思の疎通を求めない分
その人の様子をよく見ていた

具体的に言えば
暑いから私は水が飲みたい
→だから、その人も喉が渇いているだろう

ではなく

その人の表情や癖の規則性を見る
→今、何かが飲みたいんだ

…説明すると困難だね
スピリチュアルの分野か心理学の分野か
カテゴリーは不明だが
今、考えても友達や恋仲でもないのに
不思議な出会いをした

秋口の今頃
換気する窓から冷えた風が髪を掻き分けると
落としかけの単位で悩みながら
怠惰な生活が手放せなかった22歳の私を思い出す

対話や身体を重ねても、判らないものは多々ある
「ほんの一瞬だけでも、分かり合えたら」
…と思うことがあった


自己満足や充実感が不要で、相手に期待しないと
押し付ける優しさがない、我慢もない
邪推しない目の前の事実だけが見える
すると
案外、人の気持ちがわかるのかもしれない

#ゆめのおもひ

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2021.09.09