見出し画像

好きを追求し続けて、自分らしくいられる“居場所”を見つける旅のきろく

昔から、自分のことを変人だと思っている節がある。
学生時代には話が合う人がおらず、社会人になっても同僚とは違う価値観を持っていると感じることが多かった。
でも、具体的に違うと反論することはせず心に留めておいたからか、どう人と違うのかはいまいち言語化できずにいた。

だが、休職期間に自分を理解することを始めてから、明確に違いを感じることができるようになった。
おかげで、知人や友人と話していてもあまりに共感しすぎることがなくなり、適切な距離感で会話を楽しむことができるようになった。
他者の考えに合わせすぎることもなくなり、どういうことが自分にとって大切かをさらに理解する機会を得ている気がする。

しかしそれと同時に、かつてはぼんやりと構築していたさまざまな居場所よりも、より自分に合った場所があるのではないかともやもやが増えた。孤独を感じた。
正確には“わくわく”ではあるのだが。
力を抜いて、自分の弱さや苦しみを等身大に打ち明けられる。
それと同時に、相手の思いも真っ直ぐに理解できて、お互いが居心地の良い環境。

友人と二人などでは、信頼関係のなかでそういった環境を作ることができた。
自分をそれほど理解していなくても、信頼関係のある友人とは、話をする環境や自己開示をする気持ちなど、私のちょっとした意識で居心地の良さを醸成することができた。
そんな人間関係を作ってこれた自分に、私の現状を気にかけてくれた友人に心から感謝をしたいと思う。

その上で、私自身の思考や個性をより前に進められるような居場所(サードプレイス)がないと感じ、また別の孤独を感じた。
正直初めての感情ではなかった。
自分の考えをコミュニケーションのなかでアップデートさせたい。
さらに学びたいと思える、前へ進む後押しをしてくれる人に出会いたい。
相手の考えを深く知り、その温かみに触れたい。きらきらに触れたい。
でも、それを受け入れてくれる、同じようにそうしたいと思う人がなかなかいない。
高校生の頃からずっと持ち続けていた孤独感だった。

居場所を求めて、私は本を読んだ。
本の温かさ、知識量、著者の思いは、まさに私の求める居場所の温度感に近かった。
私に向けて書かれた本ではないのに、私に寄り添ってくれる知識や言葉ばかり。
しかも、背中を支えて、ぽんと両肩を叩いてくれるような、そんな思いが伝わる。
本も私の居場所の一つだと気づけた。

だが、私はひとが好きだ。ひとと話すことが大好きだ。
本からも大きく影響を受けるけれど、顔を見て、その場でしか生み出せない言葉を受けて、発して、感じて。
そんなキャッチボールから得られるきらきらは、一番火力の高い私の原動力なのだ。
それがわかっていても、他者の中で劣等感を覚えることが怖かった私には、なかなか第三の居場所を見つけるまで行動する勇気が出なかった。

長らく燻りながら考えた後、さまざまなきっかけや知人の後押しのお陰で、とある本のトークイベントにオンラインで参加した。
それをきっかけに、私の世界は今までの数十倍にもなった。
そしてその世界がさらに広いことを知るきっかけになったのだ。

参加した理由の一つに、私のこんなロジックがあった。
まず、ずっと思っていた、私の読みたいと思う本の温度感が私にとても合っていると感じたこと。
私の好む本は、利他学やケア、対話に関するものが多く、それらの著者である教授の方々の温度感はきっと私に合うということ。
そして、Twitterで情報を集めていると、そういった本を取り扱う個人書店の方とはきっと温度感が合うんだろうなということ。
さらに、そういった書店ではトークイベントが開かれ、私のような一般人も著者の言葉を聞けるということ。
その場には、おそらく私を支えてくれる言葉が溢れるのではないか、そんな考えのもと、行動に踏み出した。

ここまでの考えに至るのにそう長くはかからなかったが、行動に出るのにはとても時間がかかった。2ヶ月ほどだろうか。
イベントに参加するには、著者のことをしっかり知らないと全て吸収できない。
刊行イベントであれば、その新刊は読んでから参加しないと。
私のような若造が急にオフラインで行ったら、変に注目されて浮いてしまうのでは。
そして何より、何か発言をする機会があったときに、知識不足が露呈するのが一番嫌だった。

なぜここまでハードルが脳内で上がってしまうのか。
それは、幼少期から親に念入りに準備することを叩き込まれたからだと思っている。
そして、成績不振でいじめに遭わないようにと家庭での勉強を細かく指導されていたから。
今だに私が上記のような考えを親に言っても「そんなのちゃんと準備していけばいいんだよ」と一蹴されるだろう。
本当にありがたいことに、同じような不安を相談した方に、「あなたなら準備しなくても大丈夫だよ」と、私に寄り添った返答をしていただいた。
それをきっかけに、私はまず自宅という安全な環境で、質問を強制的に振られる機会がなさそうなオンラインでのイベント参加に踏み込んだのだ。

そのイベント参加を契機に、複数回オンラインのイベントに参加した。
本に関するもののみならず、教授の特別講義や、哲学者のイベントなど、自分の興味を持ったものに複数申し込んだ。
実際に参加して分かったことは、良い意味で、そういったイベントは私が想像していたより敷居が低いということだ。
参加者の質問内容もイベントの内容もとても魅力的で、私も質問したいと思うまでになった。オンラインでいることをもどかしく思い、現地参加であれば良かったのにと後悔さえした。

そんな経験を経て、最近やっと初めてオフラインのイベントに参加したのだ。
こじんまりとした個人書店で開かれたそのイベントの参加者は20人ほどで、想像していたように私が一番若かったし、若い人がいると思われているだろうなとも感じた。
だが、なぜかそんな視線が全く気にならないほど、そのイベントの、というかその書店に広がる空気感の居心地が良かったのだ。

それは、私の関心を寄せるトピックに同じように興味がある方々の温度感が、等身大の私にとって居心地の良いものだったというのもある。
だがそれにもまして、登壇者や主催者のコミュニケーションの温かみ、場づくりのこだわりが至るところから感じられ、私の大好きなきらきらを、イベント開始前から享受していたことが大きい。
私以外の全ての人間が他人であるはずなのに、なぜか包容感があり温かく、他者の集団特有の冷たさを一切感じさせなかった。こんな感覚は生まれてきてから初めてで、ものすごく感動した。

イベント自体も、想像をはるかに超える満足感を得ることができた。
なにより、今まで自分と似た考えを持つ人々が身近に本しかなかったのに、その考えを持つ人と実体として触れ合うことができたことがとても有意義だった。
自分の思考を一人で具現化しながら行動することはとても心細いと思っていたが、一人じゃないとわかったことで背中を強く押された。

イベントの登壇者や主催者それぞれの言葉選びやその温度感にも感銘を受け、私ももっと自分の言葉で話せるようになる鍛錬を積みたいと強く思った。
今まで他者に憧れることがあまりなかった私に、憧れる人ができた。
私のやりたいことも明確になった。
自分らしくいられる私にとって大切な居場所はこういう空間なんだと、全身で感じることのできる貴重な機会となった。

人によって、他者や他者の集団に感じる温度感は異なるのだろうし、きっと居心地の良い温度も違う。
お風呂の適温が人によって違うのと同じだと思う。
それが推し活だったり、バーだったり、スポーツだったりするんだろう。
寒い時期には湯温を上げたり、長い間浸かったり、TPOにもよるような気がしている。

そのように、私にとって居心地の良い居場所は、時を経て変わっていくかもしれないし、変わらないかもしれない。
居心地がいいからといって、ずっといたい、というわけではなさそうだということもぼんやりと思っている。

だからこそ、自分を知るためにも、自分らしくいるためにも、今後も自分の居場所を探し続け、つくり続けたいと思っている。
同じ場所にだけいても、きっと新たな視座を得ることはできない。
というか常に変化する自分、変化する居場所が合わなくなるのは当たり前だ。

約10年の間自分らしくいられる場所がどこかと悶々としていた私にヒントを与えてくれたのは、孤独ながらも、自分の好きを主体的に追いかけ続ける姿勢のなかでだった。
好きをわかり合いたい、自分の好きを理解してくれる人と話したい、その人の意見も聞きたい、そんな知的好奇心や欲求が居場所へと導いてくれたのだ。

こんな私の経験談が、孤独を感じやすい世の中で誰も自分のことなんて理解してくれないと苦しむ誰かが、すでに心の中にある自分の原動力で社会に飛び込むきっかけにほんの少しでもなれば、心から嬉しく思います。
長文になりましたが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
そして最後になりましたが、ヘッダーに素敵なイラストをお借りしています。ありがとうございます。

【追記】
せっかくなので、僭越ながら、私がオフラインで参加した本の刊行イベントを主催してくださった本屋さんを紹介させていただきます。
JR奈良駅から徒歩約15分の個人書店“ほんの入り口”さんです。

本を楽しみたい、何かを知ってみたいなとぼんやりと考えている方の入り口になってくれる、気負いせずふらっと立ち寄りやすい本屋さんだと感じています。
児童書から学術書まで、読みやすくあたたかい本が揃っていました。
私は店主の服部さんの、等身大でお話ししてくださる会話の温かみや言葉選びに惚れ込みました。私の居場所をつくる勇気、行動への入り口を作ってくださった大切な本屋さんです。
気になった方はぜひ以下の書店サイトもご覧ください。