見出し画像

子育ての不安がOJT指導者研修で解消した

●頭でっかちのせいで、子育てが不安

 私は出産前から恐れていた。私たちが知識を持ちすぎていることを。私たち夫婦が高学歴で頭がいいとかいう話をしているのではなく、大人はたくさんの知識を持っている。子どもが大きくなり、
「どうして空は青いの?」
「虫は何で足が6本なの?」
「夏目漱石って誰?」
などと聞かれても、大人はだいたいなんでも答えることができる。
「空が青いのは太陽から出たいろんな色のうち青だけが私たちのところまで届くからだよ」
「虫の遺伝子には足を6本作る命令が書かれているんだよ」
「夏目漱石は日本の有名な小説家だよ」

 さらに難しい質問を聞かれても、何らかの回答を用意するだろう。
「この世で一番偉い人は誰?」
「戦争はなんでなくならないの?」
「宇宙の向こうには何があるの?」
例えば
「偉い人の順位をつけることはできないけど、大きい国の大統領や首相は影響力が大きいよ」
「戦争は、人間の心の中に怒りや憎しみがあるからなかなかなくならないんだよ」
「宇宙の向こうには何があるかわからない、というのが科学の限界だよ」
というように。

 私たちは子どもから発せられるであろう問いに対して、だいたい答えることができる。さらに質問を重ねられても、少し調べれば答え(らしきもの)がネット上に転がっている。これでは子どもが「親に聞けば/ググれば何でも教えてもらえる」と思うようになるのではと懸念していた。


 加えて夫には厄介なクセがある。私が何かを話すと即座に「でも……」と言うことだ。直近ではこんなシーンがあった。

私「Twitterで流れてきたんやけど、ヴィレッジヴァンガードの株を買うと株主優待で本を安く買えるんやって! 助かるよね~」
夫「でもヴィレッジヴァンガードの株が優待額以上に下がるかもしれないよ」

 いらんこと言わんでよくない?! 私はもう慣れっこなので受け流すが、純粋な感情を即座に「でも……」と否定するのはコミュニケーションスキルとして最悪だと思う。ビジネスの場では批判的思考が活きるが、TPOをわきまえる必要がある。この悪いクセについては本人に何度も伝えており、私も「また『でも』って言ったよ」と釘を刺している。
 しかしクセなのでなかなか治る気配がない。これから子どもが大きくなって

子「パパ、今日はスヌーピーの絵を描いたよ!」
夫「でもスヌーピーの家の色は赤だよ」

 とか言う場面が出てくる気がしてならない。別にスヌーピーの家が青でも黄色でもいいじゃないか。まずは「へ~、すごいね」と受け止めてあげてほしい。でも今のままの夫ではできないだろう。

 前置きが長くなってしまったが、とにかく私は2点不安に思っていた。

不安①親が頭でっかちなせいで、子どもが「親に聞けば何でも教えてもらえる、調べれば何でもわかる」と思うこと
不安②親が頭でっかちなせいで、子どもの純粋な感情を否定してしまうこと


●OJT指導者研修=子育て研修

 漠然と不安を抱えていた折、会社で「OJT指導者研修」を受けることになった。実は今までに2回、新入社員担当をしたことがあるが、OJTでつまづくことがあり、どう指導すればよかったのか答えが出ないままだった。

 リアルで8時間会議室に拘束される研修で、最初は正直期待していなかったのだが……終わるころにはすっかり霧が晴れたような気持ちだった。そしてOJT指導者研修はそのまま子育て研修に転用できる、と思った。具体的な学びを2つ紹介する。

学び①「概念化」を学べるのはOJT/子育てだけ

 学校教育では既に完成された概念(知識、理論、法則など)を学ぶ。例えば、虫は花の蜜を吸って花粉を運ぶこと、徳川家康が江戸幕府を開いたこと。会社のOff-JTも、既存概念を学ぶ。ビジネスマナーとか、ロジカルシンキングとか。世の中の多くの人は学校教育を受けているので、既存概念を学ぶことが得意。

 でも仕事で必要なのは経験→内省→概念化→実践のプロセスを何度も繰り返すこと。「概念化」というと難しいので「考えること」くらいで捉えてもいいと思う。例えば……
 
経験:エリアの営業担当に配属され、がむしゃらに営業頑張る
内省:あるセグメントのお客様には全然売れない
概念化:お客様のペインを掴んでいないかもしれない
実践:お客様の気持ちに寄り添うプレゼンに変える
 
というようなイメージ。

人の成長プロセス

 既存概念を学ぶのはあちこちでできるが、自分で概念化をするチャンスはOJTしかない。仕事をただこなしているだけでは成長しないが、内省してうまくいった理由・いかなかった理由などを考えて次に活かすことができると、人は成長する。
 そしていくら優秀な人でも、概念化には壁打ち相手が必要となる。上司や先輩との会話のなかで自分だけでは持てない視点に気付き、より高度な概念化をすることができる。

 OJT指導者の役割は、新人が自分で概念化をするチャンスをあげること。そのために大事なのは、オープンクエスチョンの質問力だった。新人に自分で考えさせるため、クローズドではなくオープンクエスチョンをうまく使う。あるプロジェクトについて新人と振り返るときは
「あのプロジェクトできちんと仕事ができた?」
ではなく

「どうやったらうまく仕事ができたと思う?」
「何があなたの仕事のキーポイントだったと思う?」
「なぜ今回うまくいったと思う?」

などと、オープンクエスチョンを複数投げかけるというやり方を教えてもらった。これを言われると概念化せざるを得ないし、マネジメントがうまい上司はオープンクエスチョンが上手だなと気づいた。


 これ、子育ても一緒なのではないだろうか。
「この世で一番偉い人は誰?」
 と聞かれた時に、すぐ答えを言うのではなく、オープンクエスチョンで返すとどうなるだろうか。

「エン様は誰だと思う?」
「どうやったら分かると思う?」
「何があると『一番偉い』と言えると思う?」

 このような会話ができるようになるのはうちの場合だいぶ先だが、オープンクエスチョンを通じて考える力、概念化の能力が身につくかもしれない。

 OJT指導者研修で「概念化」と「オープンクエスチョン」の気づきがあり、私の不安①親が頭でっかちなせいで、子どもが「親に聞けば何でも教えてもらえる、調べれば何でもわかる」と思うこと について1つの解を得た。


学び②「信頼関係」を築く方法

 初めて新人を担当したのが2020年の春、つまりコロナ禍が始まったころだった。うちの会社は完全リモートになり、新人も入社式なし、同期との顔合わせもTeams、研修もオンラインだった。新人との面談も当然オンライン。本当にかわいそうな状況だったと思う。
 たしか夏ごろ、少し感染者数が落ち着き、部長だか部門だかの偉い人が「出社しましょう」と呼びかけ始めた。新人は会社の人の顔を知るためにも出社しましょう、となった。新人との面談も対面でやるか、と思い声を掛けたら

「なんで出社しないといけないんですか? オンラインで仕事できてますけど」

 ぐぅの音も出ない。笑 新人爆弾発言。
 この後も少しピリピリすることがあって、信頼関係を築くのは難しいなと感じていた。

 「信頼関係」という目に見えない物を築くにはどうしたらいいのか? 子育てにおいては「愛着」という目に見えない物を形成するにはどうしたらいいのか? 

 OJT指導者研修の講師の答えは、難しいものだと前置きをしたうえで、このように答えてくれた。

「部下は自分の大切にしている価値観、プライド、誇りを簡単に踏みにじらないと確信を持てる上司を信頼します。部下とのコミュニケーションの中では、相手の大切にしているものについて知ろうとすることが大切です」

 なるほどー。前述の新人の場合は、自分の大切にしている価値観が「自分に最適化された環境(=家)で働くこと」だったのかもしれない。相手の考えを聞くことなく、上から降ってきた出社奨励に盲従するのはよくなかった。

 部下と信頼関係を築く上でも質問力が求められる。上司は部下に「教える」のではなく「質問する」存在なのか。


 これもきっと子育てで同じことが言えるのだと思う。子どもも大きくなるにつれ社会人になっていくので(我が家ではエン様の保育園入園を社会人デビューと言っている)、本人が大切にしていることを常に親が把握できるとも限らない。しかも子どもは常に変化していく存在なので、昨日大切だったものが今日は変わっているかもしれない。子どものことを決めつけず、何を大切にしているのか丁寧に聞いていかないといけない。

 前段で夫がすぐ「でも……」と言うことを書いたが、やはり親のすべきは批判的思考ではなくて、質問だ。ということで、私の不安②親が頭でっかちなせいで、子どもの純粋な感情を否定してしまうこと については、まず夫のクセを治してもらうことを急務としたい(すでに本人には話した)。




 今回、たまたまOJT指導者研修で子育てのヒントを得ることができた。研修の内容はいわゆる「コーチング」が参考になっているらしい。同僚にコーチングの資格取得をした人がいて、質問しながら相手の考えを引き出すのが本当に上手。ビジネススキルとして役立つものなのだなぁと思った。しかも子育てのヒントも得られるとは。
 他の人のnoteをいろいろ見ていると、人材育成や自己啓発のノウハウがそのまま子育てに活きることは多いらしい。これから子育てで迷うことや悩むことはいっぱいでてくるだろうが、答えは仕事の中から見つかるかもしれない。


 この記事がおもしろかったよ、参考になったよという方は♡押して行っていただけると喜びます! 最後までお読みいただきありがとうございました。

《終わり》

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?