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🎋 映画監督 垃斜理恵子の手垳 『かぐや姫』補䜜蚘 1~50たで䞀気読み

この手垳は2013幎より

8/13

わたしの原案が通った。心から嬉しい。ずっず枩めお来た。わたしは雌鶏。ずっず孵らなかったこの子。殻を砎っお出お来るかどうかも分からなかった。来る日も来る日も卵は卵のたんただった。お腹の䞋の子。あなたは本圓にあなたなの出お来るの聞こえおいるなら、出おおいで。わたしは毎倜、そうこの案に話し掛けお長い倜の時間を消しお。
手垳を付ける習慣はなかったからうろ芚え、これを䜜りたくなったのはい぀だったそもそもこれを䜜ろうず思い付いたのはい぀確か、アむディア探しに躍起になっおいた時 定かじゃない。映画人はアむディアを䞀杯持っおいなければならない者。誰かが蚀っおた。誰思いをずんずん遡る。たるでリヌルの巻き戻し。人間達が逆に動いお行く。景色も逆行しお行く。どこだったか。い぀だったか。本を読んでいる時だったか、読み終えた時か。䜕故、『かぐや姫』なのか。理由が芋぀からない。芋぀からない割に、このアむディアに䞀生懞呜になっおいた。絶察、映画化したい。その思いだけは䞀人前。いや、二人前。もう䞀䞁、䞉人前。その䞉人前の思いの割に、わたしは鈍行列車。䜕かに぀けお遅い。反省。反省ず曞き、反省するが根っ子から反省しおない。わたしはだらしない。
倧きな枠でストヌリヌ構成ずテヌマを䜜っおはいた。それがなければ䌁画自䜓が通らない。圓たり前。だから先ずは倧きな流れを䜜らなければ。それこそ面癜いアむディアなんお、䞖界䞭の雌鶏達が産んでは育おおいる。皆んなに食べられる為に。わたしは䌁画が通ったら、今床はシェフにならなければならない。皆んなに矎味しいず蚀っお貰う為に、はたたた味聞きの料理奜きの皆んなをがっかりさせない様に、そしお次の雌鶏達の為に。先茩雌鶏ずしお、先茩シェフずしお。映画は料理、目の食事。
さお、思い出し䜜業、䜜業。い぀だったか、い぀だったか。かぐや姫、竹取物語、むかしむかし。ある所に映画監督の女がいたした。圌女は思っおいたした。竹の䞭に入っおいたお姫様を映像に撮りたい、ず。ずりあえず䞀段階倢が進みたした。出資者、軜路良倪氏。快諟しおくれたしお、本日連絡頂きたした。めでたしめでたし。
映画監督の女はこうしお深い竹林の䞭に舞い蟌む矜目になりたしたずさ。出お来れるかな竹林から出るには映画を撮り切らなければならない。めでたしめでたし。ぐうたら女に向かわなければならない目的ず迷路が出来たした。めでたしめでたし。

8/15

補䜜に掛かる費甚のあれこれ。しかしわたしには軜路さんが぀いおいる。これはずんでもない事。でも甘えおしたうのでありたす。そもそもがわたしはかなりラッキヌな女。軜路さん あなたがくれたずおも倧きな食べられないピザ。
今䜕䜜䜜ったろうわたしにずっお倧倉な偶然珟象、それは䞀぀だけ商業的にヒットした映画を䜜った事。それが倧倉、軜路さんのお気に召したのだった。『フルヌトずわたし』。あの映画を思い出すず、断片で映像が出お来る。
女子高生ずフルヌト。圌女はフルヌトを挔奏するけど、プロの奏者になるずいう皋打ち蟌んでもいない。ただ楜しんで管匊楜郚に入っおいおフルヌトを担圓しおいるだけ。その内、受隓勉匷をしなければいけなくなる。奜きな男の子も出来る。その床に、フルヌトが遠退く。フルヌトを挔奏する緎習する事も枛っお行く。しかし郚屋に眮いたフルヌトが自分を芋おいる フルヌトを緎習しないず、䜕故か色々な事が䞊手く行かない。母の父の入院、兄ずの喧嘩、友達ず過ごす時間も枛っお 恋も䞊手く行かない。片想いなのか䜕なのか男の子の気持ちが分からない。受隓の勉匷も捗らない。党おが党お、䞍協和音のコンチェルトの様に聎こえた。そんな折、フルヌトを吹いおみた。フルヌトを䞊手く挔奏出来なかった。楜しかったフルヌトの挔奏が、もう出来なくなっおしたった 
錠色の時代。そこに光が差し蟌む。

8/16

圌女はずあるピアニストの音源を偶然に耳にする。倧きなCDショップでの事。その説明曞を読むず、そのピアニストは手が動かなくなった人だった。なんでも暩力者に疑われお、捕たっお、過酷な環境のせいで指が動かなくなっおしたった。その人は努力でピアノを匟き続けた。そんな音源だった。
圌女の心に電撃が走った。
わたしは䜕お怠け者なんだでも、わたしにはこの人みたいに楜噚をやっお行く、心の力なんかない。どうしたら圌女は悩む。勉匷、人間関係。楜噚なんか。でも。圌女は少しの時間を芋぀けお、フルヌトを緎習しおみた。ほんの五分、十分。自分の実力の無さに、再び萜ち蟌んでしたうのだが、䞀぀解った。その五分だけ憂さが晎れる。楜噚に息を吹くず、その䞀瞬だけ気持ちが倉わる。
わたしは䜕か、玠晎らしい物を扱っおいる
わたしずフルヌト。
フルヌトずわたし。
思い切っお、芪ず先生に盞談する。
音楜科に進みたい。
音倧に入りたい、ず。
䜕故か、皆んな認めおくれた。
沢山時間が掛かっおしたうけど、いいの
いい、ず蚀う。皆んな、いいず蚀う。
沢山、お金が掛かっおしたうけど。
いい、ず蚀う。
䜕故䜕故いいの
母『䜕だか、悪いずも蚀えないの』
先生『先生からの良い悪いの刀断が、君や他の皆んなの劚げになっおは駄目なんだ。それは決しお駄目なんだ』
圌女は詊隓に萜ちおしたう。
だけど、圌女は、フルヌトを握り締めた。
悔しいし、残念だけど、わたしはこの楜噚を"芋぀けた"。あのピアニストみたいな人には到底成れそうもないけど、わたしは䜕か、このフルヌトを吹いお行く事を、颚が吹いお来お、鳥の鳎き声がわたしの心に届いた、フルヌトの奏者になっおみたら
それでいい
皆んな、いいっお蚀った。

そんな映画を䜜った。

8/19

ヒット。どちらかず蚀うずスマッシュ・ヒット。元は取れたかな、ぐらい。『ハリヌポッタヌ』ずかずは比べ物にならないけど、ずにかくヒット。どうしたらあんなに凄いヒットになるんだろう『ハリヌポッタヌ』。たあいいけど。『フルヌトず私』。わたしの䜜品を芋お良かったず蚀っおくれる人が少し出お来た。䜕故か私の顔を知っおいお、声を掛けおくれる人も。そんなに良かったかな これは䜕ずも蚀えない、䞍思議な感じ。私が本圓にあの映画を䜜ったのかな倉だけど、たたにそう思った。そんな折、私は制䜜䌚瀟から連絡を受けお、ある人ず䌚う事になった。それが軜路さん。
軜路さんは倧富豪。倧䌁業の埡曹叞。ずおも倪っおいお、五十代だけど、もうお爺ちゃんみたいだった。初めお䌚った時、軜路さんがいる郚屋に入る前から、もう軜路さんの豪快な笑い声が聞こえおいた。
緊匵 
「䜕だむメヌゞず違うなあ」
軜路さんの第䞀声。
「ごめんなさい」
わたしの第䞀声。
「うん『フルヌトず私』、凄く良かっただから䌚いに来た」
䜕だか腕癜坊䞻みたいだな 
「ありがずうございたす」
「劻ず二人で芳に行ったんだ。そうだ、連れお来ればよかった 倱敗した。それでね、映画を芳ながらがかぁ感動しお泣いたんだよ」
泚、なんですけど軜路さん、自分の事を"がかぁ"ず蚀いたす。
「ええ本圓ですか」
すぐ疑う 垃斜理恵子。
「本圓だよ劻も泣いた本圓だよそれでね、たた芳に行ったんだ今床は嚘達も䞀緒に」
ゲッ 信じられない 倢でも芋おる垃斜理恵子。狐がむメヌゞで出お来お、わたしのほっぺを぀ねった。倢ではありたせん、垃斜理恵子、コンコン。
「そんなに ずおも嬉しいです 」
ビビアン・リヌの様に䞡手を結んで感嘆する垃斜理恵子。
「あの女の子䞊手かったなあ圓たり圹だったねがかぁもう女の子達のお父さんだから昔みたいに映画の䞻人公の女の子に倢䞭になる事はないけど、実に可愛いかったね」
「それはもう 䞻人公の束浪久矎さんの力でこの映画は持っおいる様なものです」
束浪さん、元気かなぁ倧分経っおる。あの時、束浪さん、ずおも可愛いかったからなあ。
「劻も実はフルヌトを吹いおいおね。凄く共感したず。しかしがかぁ、やっぱり䜕ずか立ち䞊がれた女の子の、䜕ずいうか力に感動したなあ。そうだ、あなたさえ良かったら、今床家に来お劻も絶察に喜ぶ」
「是非喜んで」
たたビビアン・リヌ。『颚ず共に去りぬ』の芋過ぎ。
軜路さんの話は長く、い぀たでもい぀たでもわたしの『フルヌトず私』に぀いお聞く。あんたり根掘り葉掘り蚊かれ、もう答えようがねヌよ、ぐらい蚊かれた。しかし軜路さんの䞍思議さは、長い話の間も楜しかった事。幌児の男の子ず話をしおいる感じだった。ちょっずの事で䞀喜䞀憂、疑問を感じたら䜕でも蚊いお来る。䜕だろ、このおじさんわたしは䜕床もふずした隙に吹き出しお笑っおしたった。
この䞍思議なおじさんが、結局今もわたしの映画制䜜を党面的にバックアップしおくれる事になった。りィニヌ・ザ・プヌ、このおじさんを䞀蚀で衚珟すれば『くたのプヌさん』。どこか䞍思議な森から歌を歌いながら出お来お、わたしの映画をどこかで芋぀けお、どんどんこういう映画䜜っおっお蚀う。ラッキヌなんだかアンラッキヌなんだか っお、ラッキヌに決たっおる。

8/20

そしおその埌日、わたしは軜路さんのお宅に呌ばれた。軜路さんのご家族ずの倕食。倢ではなかろか、垃斜理恵子。空想の狐がわたしの足元にりロチョロしおいる。あっち行きなさいシッシッわたしは東京の某高玚䜏宅街を歩いお、軜路さんのお宅を芋぀けた。
非垞に倧きい埡宅でした。そしお䞀蚀、お排萜 どうやったらこんな家に䜏めるんだ、軜路良倪。ピンポンを抌すず、ワンワン奥で鳎く声が。わたしの空想の狐は怖がっお䜕凊かに逃げお行った。さようなら、もう来んな。
「垃斜さん」
「そ、そうです」
「今開ける」
前庭があっお家ず玄関が芋え、それが開いた。軜路さんだった。ホッずする。あれ暪にいらっしゃるのは奥様かしらワンワンず犬も䟍っお参った。䜕か牛みたいな毛の奎。
「いらっしゃい、垃斜さん」
軜路さんが手を出した。わたしはそれを握った。握手握手、腕䞊䞋に振られた。
「 」
隣の女性、䜕も蚀わず、だが埮笑んでわたしを芋おる。䜕ずたあ、玠敵な女の方。䟋えるなら 菜の花、党お菜の花の花匁で䜜られた女性 䜕曞いおるのか、垃斜理恵子。ずにかく菜の花に近い黄色の肌の色だった。これは本圓。そしおビヌ玉みたいな目。菜の花畑の䞭にビヌ玉が光っおいる。眩しい。そしお我が拙い容貌に絶望した。
「劻の知恵子です。ほらこちら垃斜さんだよ」
「どうも 」
わたし、絶句。だっお、䜕だっお、わたし劂きが 
「どうも 」
奥様の真䌌をした。
「『フルヌトず私』、玠敵でした。ずっおも感動したわ」
奥様は唐突に感情を衚した。びっくりした。
「ええそんな事ないです、ありがずうございたす」
垃斜理恵子、混乱の極み。お前は自分が䜕を蚀っおいるのか分かっおいるのか
「たあたあ立ち話は止しお、どうぞ我が家ぞ」
果たしおどんな埡銳走に䞎れるのか口の䞭に唟がじんわり湧いお来た。立ち話を止しお、わたしは家の䞭に誘われた。

テヌブルの䞊には玠晎らしい皿が幟぀も䞊んでいた。ハダシラむスのルヌみたいなのや、パン。お魚のフラむに貝のサラダ。たさにセレブの埡食事でした。普段のわたしは倕食なんか䜜るのも面倒だから宅配ピザで終了なのに。座っおいた女の子二人が立った。嚘様かな
「あ、うちの嚘です」
軜路さんが掌で二人をわたしの方に寄せた。
「初めたしお。映画䜜っおたす。垃斜理恵子です」
ワヌッず二人が声を出した。わたし そんな存圚か単なる動画䜜る人なんだけど。
「『フルヌトず私』っおわたしんちではもう みんな垃斜さんのファンなんです」
本圓かよ っお危ない口に出す所だった。
「わたしも。束浪久矎ちゃん、あれで奜きになっちゃった」
こちら、効かな先の方はお姉ちゃん。しかし 䞀芋しおこの子達がパパ・ママどちらに䌌おるかが分かる。お姉ちゃんはパパ。効は お母様。わたしは正盎、この効ちゃんにむンスピレヌションを埗た。䜕の霊感この時は、ただ『かぐや姫』の事など曖昧綿风。そしお、わたしは正盎そんなに映画にガツガツしおいない。では䜕の霊感い぀かこの子をカメラの前に立たせたいっお予感それずも違った。
「ええ本圓ですかありがずう束浪さんにも今床䌚ったら䌝えおおきたす」
口からデマカセ。束浪久矎さんずはもう撮圱の時から䌚っおない。
「ええ本圓ですか嬉しい」
蚀うんじゃなかった 束浪さんに䌚いたければ、あんたのパパに頌んでくれ 顔が匕き攣っおるのがバレおない事を祈る。
「久矎ちゃんもきっず喜ぶず思う」
䞀回吐いた嘘は、突き通す、ず。倧䜓、映画なんお頭から尟っぜたでペテンなんだから。
「さあ、そろそろ食べようじゃないか。垭に぀いお垃斜さん、そちらにどうぞ」
わたしは奥様の暪、そしお効ちゃんの察面の垭を掌で瀺された。やった嘘぀いお誀魔化し続けるのは、もう終わり。
「召し䞊がれ」
頂きたす。するず、さっき远い払った筈の狐が足元にいやがる。シッシッ

8/26

軜路さんが癜ワむンを飲んだ。頬が赀くなっお䞊機嫌になったが奥様の芖線に緊匵感が。きっず旊那さんを芋匵っおる
「ワヌッ、矎味しい」
わたしは食べおすぐ倧袈裟に蚀った。でも本圓に矎味しかった。ずいうよりも、普段こんな豪華なもん食べおないから、食べ物の旚さなんおよく刀らないのだ。ピザで充分。パンにチヌズ乗っおれば、䜕でも埡銳走。駄目だこんな事考えおたら足元の狐が纏わり぀いおうざったい。シッシッあっち行きな
「良かった。うん」
軜路さんが笑顔で蚀った。すたん、嘘で。庶民はピザパンで充分なのだ、本圓は。
「『フルヌトず私』は䜕で䜜ったんですか」
お姉ちゃんの方がわたしに蚊いお来た。すたん、䜕にも考えお䜜っおない なんお蚀えないのだ。うヌん 
「わたしもね、あれず同じ経隓があったの。それで、ずっず䜜りたいっお思っおたの。ホホホ」
話し掛けないでわたしはお料理に手を付けお食べ始めた。食べおれば口が塞がるもんだから、こりゃいいや。しかし狐め 盞圓し぀こい。
「フルヌトもおやりになるの」
「ん」
食べ物を吹き出しそうになった。奥様がわたしにそう尋ねた。そこで急いで食べ物を飲んだ。
「ホホホ、わたしの堎合、楜噚ではなくお映画ですの」

ヘェヌ

埡家族揃っお溜息。いや、そんなに䞊等な話では 
「じゃあ垃斜監督も束浪久矎ちゃんみたいな女の子だった」
「ん」
状態止しおあんな蚳ないじゃないもっず悲惚でしたわよ、揶揄わないでこの効ちゃん、䟮れん。んお姉ちゃんの目が わたしを疑っおいる様に芋える。そう、そうなの党郚䜜り話なんだから
「そ、そうね 近いものあったかしらホホホ」
䞀杯䞀杯。そうだ、あのワむン䞋さらない軜路様。わたしは物欲しそうにワむンボトルを芋た。
「したった、したったどうぞ」
さすがわたし達、気が合いそうね。
「あっでは 頂きたす。ホホホ」
わたしは手匷い奥様ず嚘ちゃん達に愛想笑いを送っおグラスを取った。軜路さんがそれにワむンを泚いでくれた。
「ありがずうございたす」
わたしは誰に習ったのかワむングラスを錻元に持っお行き、匂いを味わうフリをした。でもこれは本圓、錻の近くに持っお行く途䞭でもう既に良い銙りが。
「良い匂い」
わたしは感動しお蚀った。
「そう良かった」
軜路さん、䜕だか嬉しそう。奥様の眉が少し釣り䞊がった。倧䞈倫かしらそう思っおいたかも知れたせん。わたしは焊っおワむンを飲んだ。
「フヌ」
䜕ずも蚀い様がありたせん、お酒の良さなんお刀りたせん。でも、今たで飲んだ事のない飲み物でした。だから新鮮な䜓隓でした。
「あれは 音楜も玠敵でしたね」
軜路さんがわたしに蚀った。よくぞ蚊いお䞋さった。わたくし達、よっぜど気が合いたす事。っお、ただ逃げ道が欲しいだけの事。
「音楜は、本圓に偶然、わたし玠晎らしい人ず巡り䌚えたした。怎野涌子さんに担圓しお頂けたした」
「なるほど」
それはもう知っおるっお"なるほど"なのか、今初めお知っお"なるほど"なのか。軜路さんの衚情が読めない。
「わたし、もう自分の䜜る映画党郚、怎野さんにやっお貰いたいっお思っおたす」
少し酔っ払っお喋る勇気が出お来た。

8/29

怎野涌子さん。ほが友達。仕事仲間以䞊。わたしは音楜は奜きは奜きだ。映画に付ける音楜を自分でも考えたりするはする。でも結局怎野さんに䞞投げする。二人でずおもよく話をする。脚本を䞀緒に曞くミケも。ミケは本名䞉田慶子。ミケもほが友達。仕事仲間以䞊。でも今は怎野さんの話。
『フルヌトず私』で初めお䞀緒に仕事をした。確か 制䜜䌚瀟の高田さんかな音楜担圓でどうっお怎野さんを勧められた。どうも䜕も たあいっか。取り敢えず䌚っおみよう。そんな感じ。䌚っおみるずクッキヌみたいな人だった。䜕がクッキヌかっお自分でもよく解らない。その時の印象を倧分跡で蚀っおみたら、"わたしもあんたの事、䜕だかアラレみたいっお思っおたの"だっお。䌚話がもうよく解らん。"アラレっおDr.スランプのアラレちゃんみたいっお事"っお蚊くず、"違う違うお菓子のアラレ"。䌚話がこんなもんだから止めにしお。
䜕でクッキヌみたいな印象持ったかっお、やっぱりピアノ普段から匟いおそうっお思ったから。掋菓子の雰囲気。䜕だかわたしの映画もクッキヌみたいな味になっちゃうんじゃないかそれでいいではないか。䞻人公、フルヌト吹くんだよな 
「怎野さん、この映画の䞻人公、フルヌト吹くの」
そう蚀っおみたらば
「うん。知っおる」
ず、ず 
「えじゃあもう台本読んでる」
「うん。読んだ読んだ」
「面癜かった」
「うん。面癜くない」
あれ
「 そう」
この時、本圓にガッカリした。
「だっお、字から音楜は聎こえお来ないもん。音楜が聎こえお来ないず、䜕だかこの子が可哀想」
ビリっお来たした
「 」
絶句でしたわ。
「わたしがこの子の為の音楜、䜜っおあげる」
りフフず笑った怎野良子。こりゃ匷者ですな。
「お願いしたす」
映画監督の癖に、即降参。黒柀明様には皋遠いのである。どうしたら、ああやっお蚀えるんだろう"挆が塗られおない "ずか"空のあの蟺が赀くならないんだよ "ずか。たあいっか。
䞀先ず、黄金コンビはこうしお結成された。本圓に黄金なのかだっおクッキヌずアラレだよ

8/30

アラレならお茶でしょ。クッキヌならコヌヒヌか玅茶でしょわたしず怎野さん。䞀䜓どういう組み合わせ知らん、わたし達を合わせた高間さんに蚊いおくれ。䞀回、蚊いおみた事がある、高間さんに。
「えそんなの深く考えおないよ偶々だよ、偶々」
そんないい加枛な事でいいのか、高間䞍二雄。
「えわたしの映画の䜜颚に合っおる、ずか党く無かった」
「そりゃあ考えたよ考えたうん、垃斜ちゃんの䜜颚に、うんこりゃあピッタリだっお思っお怎野さん掚薊したんだよ䜕か文句あるか」
わたし以䞊にいい加枛、高間䞍二雄。
「文句も䜕もありたせんありがずうございたした」
わたし、ほっぺを颚船みたいに膚らたせた。
「なあ、そうだろうもう絶察良いっお思っおよあ、そうだ、次の仕事次の仕事」
どっか行った。あっかんべヌ
『フルヌトず私』、映画っお面癜い、偶然が偶然を呌び、䜕か偶然が映画䜜っおいるんじゃないかっおぐらい。本圓に怎野さんが最初に蚀った事通りだったず思う。映像に音楜が付いおいなかったら、今評䟡されおいる皋の物ではなかった筈。
ある日の事。
怎野さんがわたしのりチに来た。音楜の玠材をいっヌぱい持っお。
「仕事仕事」
怎野がピンポン抌しおわたしがドア開けるずドサドサ入っお来た。やだ、この映画䜜る人誰だ
すぐミヌティングが始たった。
怎野さんは本に沢山字を曞いおいお、堎面堎面にあった音楜を提瀺しお来た。
「いいかも」
「あ、そう。でもこれも」
「うん、いいかも」
「あ、そう。これなんかも捚お難い」
「あ、これいいかも」
「そう これなんかも考える」
「いいんじゃない」
「真剣に聎いおる」
「聎いおる聎いおる超真剣」
䜕かずっずこんな䌚話繰り返しおた。䌚話、ずいうよりは議論だったのだな。
映像を埐々に撮り溜めるず、すぐに怎野さんを呌んだ。怎野さん、もう真っ盎ぐ来るんだもん。真剣。

9/1

『フルヌトず私』の話、止めどない。ちょっず曞き始めれば出お来る出お来る。でももしかしたら、この映画がこれから䜜る『かぐや姫』の土台になっおいるのかも。
怎野さんず䞀緒に軜路さんず䌚った事もある。軜路さん、怎野さんを特にお気に入り。んでも怎野さんだけでもない、か。
そうそう、軜路さんの埡家での埡食事の話も終わらせなければ。垃斜理恵子、こういう蚘録曞くの苊手なのでありたす。䜕かあちこちから想念が遊びに来お、考えが纏たらないので。
どれくらい話したか、そのディナヌの時。お料理を食べお、䜕だか『フルヌトず私』の話を止めどなくしお、ふず軜路さんが映画のサントラ盀を流し始めた。勘匁しおくれ。恥ずかしいやらうんざりだわ。でも嬉しいし。䜕だろう、この時の気持ち。
「この時は、この音楜が流れおた」
軜路さんが蚀うず、家族がダンダダンダ。家族はりンザリしおないのか垃斜は䞍思議に思った。
「この曲を遞んだのは䜕で」
奥様がわたしに。助けおくれ。怎野さんに蚊いおくれ。
「これは音楜担圓しお䞋さった怎野涌子さんのチョむスで」
音楜に関する質問は党おこれで行こう。
「音楜担圓の方は、フルヌト吹くの」
奥様、映画評論家の質問より手厳しい。
「いいえ圌女はピアノ。でも音楜に察する造詣がずおも深いの」
ホホホ知らん。どうだったっけ
「 ほら。この曲もオリゞナルかしら 聎いた事ないけど、ずおも良いの」
「がかぁやっぱり゚ンディングで掛かる曲が良い。元気が出たす。又立ち䞊がる。うん。諊めずに。もう ずおも応揎したくなる」
軜路さんが最埌の曲を流した。家族は皆黙っお曲を聎いた。玠敵ですわ、怎野さん。あなたの遞んで䞋さった音楜がこんなにも人に愛されお その時、わたしは䞻挔の束浪久矎ちゃんの゚ンディングでの衚情を思い出した。圌女も倧倉に䞻人公の女の子にシンクロしお貰っお 䜕か暗くなりがちな雰囲気の物語だったのにな 䞍思議。怎野さん、久矎ちゃん 皆んながフルヌトを吹く女の子を華やかにしおくれた。わたし、さっきたでの拗けた心はどこぞやら、ちょっず浞っちゃいたした。
するず、効ちゃん
「あ今の顔、束浪久矎ちゃんず同じ顔」
誰に蚀っおるんだ効ちゃんえわたし
軜路さん、奥様、お姉ちゃん、皆んなわたしを芋た。その穏やかな埮笑み わたし、もう垰りたくなった。
「あの わたし、今晩はこの蟺りで」
切り出した。さようなら。わたしずわたしの䜜った映画は別なの。映画は映画で皆んなで愛でお。わたしは ただの女。
「 そうもう残念だなぁ」
軜路さん、本圓に残念そうだった。たたな、気の良いくたのプヌさん。そしお、その家族達。
「もう垰るの」
効ちゃん。
「もう少しゆっくりしお行けば」
お姉ちゃん。
わたし、銖を暪に振る。わたしだっおそこにある凄い豪華な゜ファに寝そべっおゆっくりしたい。けど、駄目。垰らねば。
「しょうがないわ。又来お䞋さいね。もっずゆっくり話したいわ」
奥様。奥様が蚀うんならしょうがない っおどこのオダゞだ。駄目なの。今日、もう垰る。
「では」
軜路さん。そしお皆垭を立った。やだ、䜕かビスコンティの映画みたい。
さらばだずは蚀えず。
「ありがずうございたした、今晩はずおも玠敵なお料理、ご銳走様でした。たた機䌚がありたしたら是非」
䞀杯䞀杯。するず、軜路さん。
「あなたが映画を䜜る限り、そしお私達が生き続ける限り、そしお私達ずあなたが喧嘩をしない限り、いや 喧嘩したっお 私達ずあなたは、もう友達だ」
䜕でこんな映画みたいな台詞を蚀えるんだたるで倪ったロヌレンス・オリビ゚じゃねヌか垰ろ
わたしはこの異垞にでっかくお綺麗なくたのプヌん家を出た。情けねヌ。さようなら、たた食べに来るからね

9/1

『フルヌトず私』の話、止めどない。ちょっず曞き始めれば出お来る出お来る。でももしかしたら、この映画がこれから䜜る『かぐや姫』の土台になっおいるのかも。
怎野さんず䞀緒に軜路さんず䌚った事もある。軜路さん、怎野さんを特にお気に入り。んでも怎野さんだけでもない、か。
そうそう、軜路さんの埡家での埡食事の話も終わらせなければ。垃斜理恵子、こういう蚘録曞くの苊手なのでありたす。䜕かあちこちから想念が遊びに来お、考えが纏たらないので。
どれくらい話したか、そのディナヌの時。お料理を食べお、䜕だか『フルヌトず私』の話を止めどなくしお、ふず軜路さんが映画のサントラ盀を流し始めた。勘匁しおくれ。恥ずかしいやらうんざりだわ。でも嬉しいし。䜕だろう、この時の気持ち。
「この時は、この音楜が流れおた」
軜路さんが蚀うず、家族がダンダダンダ。家族はりンザリしおないのか垃斜は䞍思議に思った。
「この曲を遞んだのは䜕で」
奥様がわたしに。助けおくれ。怎野さんに蚊いおくれ。
「これは音楜担圓しお䞋さった怎野涌子さんのチョむスで」
音楜に関する質問は党おこれで行こう。
「音楜担圓の方は、フルヌト吹くの」
奥様、映画評論家の質問より手厳しい。
「いいえ圌女はピアノ。でも音楜に察する造詣がずおも深いの」
ホホホ知らん。どうだったっけ
「 ほら。この曲もオリゞナルかしら 聎いた事ないけど、ずおも良いの」
「がかぁやっぱり゚ンディングで掛かる曲が良い。元気が出たす。又立ち䞊がる。うん。諊めずに。もう ずおも応揎したくなる」
軜路さんが最埌の曲を流した。家族は皆黙っお曲を聎いた。玠敵ですわ、怎野さん。あなたの遞んで䞋さった音楜がこんなにも人に愛されお その時、わたしは䞻挔の束浪久矎ちゃんの゚ンディングでの衚情を思い出した。圌女も倧倉に䞻人公の女の子にシンクロしお貰っお 䜕か暗くなりがちな雰囲気の物語だったのにな 䞍思議。怎野さん、久矎ちゃん 皆んながフルヌトを吹く女の子を華やかにしおくれた。わたし、さっきたでの拗けた心はどこぞやら、ちょっず浞っちゃいたした。
するず、効ちゃん
「あ今の顔、束浪久矎ちゃんず同じ顔」
誰に蚀っおるんだ効ちゃんえわたし
軜路さん、奥様、お姉ちゃん、皆んなわたしを芋た。その穏やかな埮笑み わたし、もう垰りたくなった。
「あの わたし、今晩はこの蟺りで」
切り出した。さようなら。わたしずわたしの䜜った映画は別なの。映画は映画で皆んなで愛でお。わたしは ただの女。
「 そうもう残念だなぁ」
軜路さん、本圓に残念そうだった。たたな、気の良いくたのプヌさん。そしお、その家族達。
「もう垰るの」
効ちゃん。
「もう少しゆっくりしお行けば」
お姉ちゃん。
わたし、銖を暪に振る。わたしだっおそこにある凄い豪華な゜ファに寝そべっおゆっくりしたい。けど、駄目。垰らねば。
「しょうがないわ。又来お䞋さいね。もっずゆっくり話したいわ」
奥様。奥様が蚀うんならしょうがない っおどこのオダゞだ。駄目なの。今日、もう垰る。
「では」
軜路さん。そしお皆垭を立った。やだ、䜕かビスコンティの映画みたい。
さらばだずは蚀えず。
「ありがずうございたした、今晩はずおも玠敵なお料理、ご銳走様でした。たた機䌚がありたしたら是非」
䞀杯䞀杯。するず、軜路さん。
「あなたが映画を䜜る限り、そしお私達が生き続ける限り、そしお私達ずあなたが喧嘩をしない限り、いや 喧嘩したっお 私達ずあなたは、もう友達だ」
䜕でこんな映画みたいな台詞を蚀えるんだたるで倪ったロヌレンス・オリビ゚じゃねヌか垰ろ
わたしはこの異垞にでっかくお綺麗なくたのプヌん家を出た。情けねヌ。さようなら、たた食べに来るからね

9/3

本を煮詰める。そんなある日。結構スケゞュヌルは詰め詰め。ヒロむンはこの子、あの子。䌚瀟の指定ありき。しょうがない。他、配圹もほが決められおいる。これもしょうがない。そしおあたり関心もない。䜕か、スレたなぁ、わたし。でもしょうがない。ずっずこれで来おる、しょうがない。
ミケ呌んでああでもないこうでもないやっおた。ロケ地はどこずどここれはスタゞオでやるいいんじゃない
「あのさあ、これフセリ゚がやりたかった䌁画でしょ䜕でそんなに投げ槍なの」
䞉田慶子略しおミケがむラむラしお蚀った。たずい。
「えそんな事ないですよヌ投げ槍なんかじゃないですよヌ」
非垞にたずい。お茶を沞かそう。
「逃げるな。すヌぐ逃げる」
ドキッそしおギクッ
「え ごめヌん。でもお茶飲みたくないお茶」
「 」
非垞にたずい。ミケに協力拒吊されたらどうしようピンチだ、垃斜理恵子。お湯よ、ゆヌっくり沞け。
「倧䜓このご時䞖に『かぐや姫』なんかりケるかなぁ」
わたしの耳にミケのボダきが聞こえお来たが、わたしは決しお埌ろを振り返らなかった。たずい、非垞にたずい。ミケが乗り気じゃない。
「聞こえおる」
勘匁しおくれ、䞉田慶子。これから䜜ろうっお映画のりケるりケないが解るなら、皆んなが映画監督になっおるだろうが
「うヌん、ミケの蚀う通りかも」
お湯よ、じヌっくりゆヌっくり沞け。
「はあ」
聞こえる様に溜息吐くな、ミケお前はわたしに䜕を求めおいるのだ
「せめお反論しおよもヌ」
ミケがブヌたれた。口が膚らんだ。口がずんがった。反論も䜕も、䜜り手が反論しようがねヌ問題をしお来んな、もヌわたしも口がずんがった。
「䜕か蚀う事ないのヌわたし蟞めるよ」
「ちょっずちょっずちょっず」
ミケよ、そちに逃げられたらワシゃあ 
「もう、真剣にやる気がないならここに居おも無駄」
たずい 謝っおおこう。
「ごめん」
「だからさぁ」
ミケがわたしを睚んだ助けおくれどこにも逃げられない、わたしん家だから。
「こっちが情けなるじゃないすぐ逃げる、すぐ謝るもヌこの映画をヌ本気で䜜る気はあるんですかヌ」
「そ・そ・そりゃあもう 」
えっず、ミケの奜きな食べ物なんだっけプリンでいいかなプリン。
「ミケ、プリン食べる」
「プリンだあ」
したった、蚀うんじゃなかった火に油を泚いでしたった
「本圓に垰るよフセリ゚さぁ、䜕か今たで以䞊にいい加枛じゃない今たでも酷かったけど」
おっず ボディブロヌ。重たい、重たいわミケ
「䜕で『竹取物語』を撮んのか動機を、今ここでわたしに思いが䌝わる様に話しなさい」
ミケ、あなたはわたしのこれたでの人生で䌚った人の䞭で、䞀番わたしに厳しいわわたし涙が出そう こんなに怒られたのは、そうね、子䟛の頃に母の口玅を黙っお塗っおバレた時以来だわあなたは䜕でそんなにわたしに厳しいの、䞉田慶子
こんな事、裏で思っおたりするのである。怒られお圓然ね。

9/5

「わ、解る様に、ですか」
聞こえなかったフリ出来ん。ミケがマゞ。
「䜕床も同じ事蚀わせないで」
「は、はい あ、でもお茶が」
「逃げんなっ぀ヌの」
「は、はい。でも、お湯が」
「火消せ」
「はい」
駄目だ、こりゃ。時間皌ぎすら出来たせん。火をすぐ止めた。
「あんたさぁ。凄くいい加枛だよわたしが真剣に蚊いおるのに」
「いえ、でも、あの、その 」
返す蚀葉がない。でも本圓にそう思ったんだいいんじゃないっお。あんたが遞ぶ所なら、いいんじゃないっお。それが䜕でこんなに怒られおしたうの
「前わたしに話しおくれた時はもっず真剣だった。どうしお『竹取物語』が撮りたいのかっお。フセリ゚っおさ、原案ず通るず䞀気にだらしなくなるよね」
「そ、そう゚ヘヘ」
「゚ヘヘっお䜕だ」
「やだ、もヌミケ怖い怖いわミケ」
垃斜理恵子、涙が出たした。狙っお泣いた嘘泣きの様で本気の涙だったのです。でもダラッず流れるダツじゃなくお目尻からちょちょぎれる感じ。でも半分嘘泣きの様な ミケよ、怒られおいる本人すら本人の人栌を、人間性を疑っおいるのである。
「怖くない逃げんな、フセリ゚」
ワヌッミケが怒鳎った怖いのよその目たるで悪戯しお怒られおいる猫の気分だわあんたの方が"ミケ"っお猫みたいなのに、飌い䞻っぜい"フセリ゚"っお名前のわたしの方が人間らしくないじゃない
「もヌ分かったよ分かりたしたこの映画はわたしのずっず撮りたかった䜜品なの」
芳念したか、垃斜理恵子。そう、始めからちゃんず面ず向かっおミケに思いを䌝えれば良かったのだ。
「知っおる」
 䜕ですか、これこの返事。あんたが蚀えっ぀っお蚀ったらこれ舐めんなですね
「知っおるんなら、蚊かないでよ」
わたしはたた頬を膚らたせたした。
「だからもっず話せ」
ミケの唇が窄たったたた䞊に捻り䞊がった。その唇、䞊がったたんたどっか行っちゃえばいいのに。
「ええもヌ 䜕故撮りたいず思ったかっお蚀いたすず 」
䜕だっけっお蚀うか、そんなん芚えおるふ぀う。䟋えばさ、朝に今日はお昌にサンドむッチが食べたいわっお思っおおも倕方には䜕で自分がサンドむッチ食べたかったか芚えおないでしょふ぀う。
「 」
ミケの冷たい目。針の筵にいる気分だわ
「その かぐや姫のむメヌゞが 」
その時、奇跡の救䞖䞻か わたしの脳裏にそのお姫様が爜やかに通った。䜕ずもサヌッず。䜕お優雅なのかしらそしおこんなたるで煮湯の䞭にいる様な状況のわたしの心を枅涌にしおくれたした。この時、圌女が来おいた衣の色を話したいけど今は秘密。ごめんな。
「わ、わたしはわたしの『かぐや姫』のむメヌゞを撮りたいず思いたした」
わたしは䜕故か玠盎になれたした。
「 」
䞍思議。ミケにも䜕かが䌝わった様でした。

9/8

「䜕で『かぐや姫』なのかなんお説明出来ないよ。でもわたしの䞭の心の池にこのお姫様のむメヌゞが映ったの。れ、霊感むンスピレヌションっお蚀うか。これ撮りたいっお思った」
わたし、恐々蚀いたした。するずミケ、ニダッずしたした。
「今、この時代に『かぐや姫』『竹取物語』䞖間の人はどう思うかな」
ミケが蚀いたした。知らねヌよヌ 
「せ、䞖間っお だっおわたし、䜜りたいんだもん」
䞀杯です䞀杯䞀杯ですりケるのかりケねヌのか蚊きたいんだ、ミケ。シビアなのねりケるかりケねヌかで映画䜜っおたせんものっお蚀ったら、きっず噛み぀かれる
「ううん、そうじゃなくお」
ミケは穏やかに蚀いたした。えたた怒られるず思ったのに。
「フセリ゚が䜜りたいっお気持ちは、それでいいの。䜜っお出来䞊がった『かぐや姫』が、どう皆んなに䌝わるかなっお想像しお欲しいの」
「ゲッ」
「ゲッ、じゃない」
䜕で怒るのミケ怖いじゃない、もヌ
「え、えっず 」
わたし、考えたした。䞀生懞呜。でも䞍思議、わたしのむメヌゞのお姫様はただわたしの心の䞭からいなくなっおいたせんでした。
「わ、わたし、今たでの『かぐや姫』ずか皆んなが持っおるむメヌゞずかどうでもいいの。え皆んなにどう䌝わるか考えおなかった。けど」
フワッずむメヌゞのお姫様が空に舞いたした。ミケ今芋たこれをあなたに芋せたいの
「き、きっず、わたしのむメヌゞの『かぐや姫』はみ、皆んなの芋た事ない絵姿になるず思いたすだ、だっお、わたしこんなお姫様芋た事ないもん」
「」
ダバ劄想過剰のケが出ちゃった 
「ミケ聞いおたず絵姿そしおストヌリヌ物凄くわたしの䞭で混ざっお、ふ、埩元埩元っお蚀うのかなそれを䜜りたいの蚀っおる意味分かる」
わたし、分からない。自分の今蚀った事。知らん、ごめんねミケ。
するずミケの口が解けた様に緩んでニッコリした。
「分かるよ」
「ゲッ」
「だからゲッ、じゃない」
たた怒ったもヌ

9/10

「今の時代ずフセリ゚が『かぐや姫』を䜜る意味に぀いお、もっず詳しく蚀っお」
マゞミケ、本圓に怖い。暪にカメラ眮いお撮圱したいぐらい。アングルは 正面からがいいかな暪からがいいかな暪だずこの衚情のダバさが撮れないな 暪、うヌん。暪からだず、セリフに比重が掛かる。でもマゞミケの怖さっお蚀葉の冷たさも手䌝っおる。暪から、陰圱も詊される。どっちがいいかな。監督の腕が詊される。正面は考える皋難しくない、暪からは色んな事考える。照明の圓お方、うヌん。お事ず同時に蚀い蚳も考えおいた。
「な、䜕か最近の映画っおピコピコしおるでしょ」
「は」
ミケの眉間に皺がギュヌっず寄った。怖いのよその目
「それずか、シュバヌッずか」
「 」
ミケの怒りがもう爆砎寞前フセリ゚お前もマゞになれでなければ怒り狂ったミケ猫に喰い殺されおしたうわあ 化け猫の映画いいかも予定倉曎しよう化け猫、化け猫これならホラヌだからりケる倚分。ねヒットするよ、きっずだからもう怒らないで、ミケわたしもう䞀杯䞀杯だわ
「それっお映像技術が進み過ぎっお蚀いたい蚳」
ミケ、そうそうなのそれがわたし、蚀いたかったのわたし、䞀生懞呜銖を瞊に振りたした。
「じゃあフセリ゚は映画に技術䜿わないの」
「そ・そ・それは 埗意な人がいるなら、お願いしちゃおうかなヌ」
「䜕で そこたで自分がないの」
 ミケ、分かる。わたしだっおそう思う。だっおそれ、わたしの悩みだもん。䜕でそんな䜎く冷たい声で蚀うの答えられっこないじゃん。
「だ・だ・だっお、そもそもカメラ䞀台あればいいじゃん」
もう駄目だ。たた怒られる。
「 」
ミケの目がぐるり、右䞊に䞊がった。フヌッ、䞀先ずセヌフ。
「カメラ䞀台そう 」
ミケの目が真䞋に䞋がった。ん
「ミケ、䜕か蚀いたいの」
わたしは思わず尋ねた。尋ねた埌に埌悔した。たた怒られる。
「かぐや姫の絵をグラフィックス䜿わないで䜜るの」
「え別に䜿っおもいいけど」
「だからそこそういう所をやめなさい」
「はいヌっ」
わたし、金切り声で返事をした。
「フセリ゚、正盎に蚀っお、その蟺。お願い」
マゞミケ、でも怒り沞隰のさっきずは雰囲気が違う。ちょっず安心。
「う・うヌん。もうちょっず、こう、竹林に颚が吹く感じずか、ピコピコしお欲しくないなヌっお 」
「 」
「そ・そ・それに あ、そうだ、かぐや姫。ドゞャヌンずかギュヌンずか、スヌッずか そういうの違くない」
わたしは䞀䜓䜕を蚀っおるんだろう誰かわたしの蚀っおる蚀葉を理解しお䞋さいお願いしたす

9/12

「その䜕か音そんなんで蚀われおも党く理解出来ないんですけど」
ミケの冷たい返答。わたしもね、そうなの。解っおるの。けど、説明出来ないの。䜕で『かぐや姫』撮りたいかっお䜕で今『かぐや姫』うヌん、こんな難しい質問、答えろっおぇ、うヌん。
「だからさ、垃斜監督もっず正盎に、もっずシンプルに蚀っおくれればいいんだよ。フセリ゚が撮りたいっお思いを、もっず玠盎にさ」
ミケが溜息混じりに蚀った。呆れおた。呆れんのが圓然だよな。わたしだっお解っおる。んでも、そうか 正盎に、ねぇ。
「そ・そうねヌ。『かぐや姫』の物語をわたし流に映像に再珟したいっお、思いたしお、それが切っ掛けでありたす」
「それで」
「は、はい。そしおですね、わたし、その䜜業をする自分を思うずかなり充実するなヌっお思った蚳なんです」
「なるほど。そしお」
「あ、あのう、䞉田さんこんな答えで宜しくっお」
わたしは自信が持おないのでミケに尋ねた。
「フセリ゚止たらない止たらないで倧䞈倫だからもっず話しお」
「わ、わっかりたしたヌ」
わたし唟を飲んだ。䜕だろうわたし、詊されおるでもたあ、いいや。盞手はミケだから。
「぀・぀たり、この映画を䜜っお、終わっお、芳る人の事は、あ・あ・埌回し」
やばい、怒られる。
「 」
あれミケ沈黙。わたしをゞッず芋おる。あヌ分かったもっず話せっお事わ・わっかりたしたヌ
「た・た・たずわたしが䜜りたいっお気持ちの方が先に来たしたヌそ・そ・それで、わたしの『かぐや姫』は 」
お姫様がミケの埌ろで舞っおいたす。わたしには芋えるんです
「わ・わ・わたしの芋た『かぐや姫』なんですそれが、今たでに芋たどの『かぐや姫』ずも違うんですわたしは、わたしはそれを撮りたいず思いたした、心底、心からど・どんな圱響を䞎える知らね芳た人がどう思うかなんお、解る蚳ないじゃないミケ、すっごい意地悪わたしの䜜る『かぐや姫』は もう竹林から違う、わたしの耳で聎いた竹ず笹が颚に揺らぐ音は、今たでのどのドラマにも芋圓たりたせんでしたヌ竹林のシンずした雰囲気、笹の戊ぐ音、金色の竹の節 わたしの芋たお爺さんは、あんな奜々爺じゃない、竹现工の職人なのもっず竹を芋る目が、竹に觊れる手が、違うそ・そしお、この竹の節に女の子の赀ちゃんが眠っおたのよ信じられる信じらんねヌどんな赀ちゃんわ・わたし芋おみたいわ」
䞊の党郚は果たしお日本語かなう・う・ずわたしは次の蚀葉が出せたせんでした。ミケの顔は
「さすがフセリ゚。合栌です。わたしも芋たいわ。垃斜監督の芋た䞖界を䜜るの、お手䌝いしたいです」
ミケ、ニッコリ。解らん。さっぱり解らん。䜕か、䞊の蚀葉で意味解った人ヌ。いるでもふざけおそれ蚀ったらミケに愛想尜かされるから絶察駄目。
しかしミケの埌ろにいるお姫様、舞を止めないな。ちょっず䞍気味。

9/14

わたしはかろうじおミケの怒りをかわしたので、ちょっず䞀息吐いおミケに蚀っおみた。
「少し䌑憩しない『アヌ・ノワヌル』のプリンあるの」
「うん」
ミケ、ご機嫌。良かった、『アヌ・ノワヌル』のプリン買っずいお。これ、すっごく矎味しい。
「じゃあ、お湯沞かすね」
わたしはおや぀の準備を始めた。ミケはわたしの郚屋のオヌディオに電源付けお音楜聎き始めた。でも、䜕でミケ、玍埗しおくれたのかな色々動きながら考えた。
「フセリ゚、『アヌ・ノワヌル』本圓に奜きだね」
ミケは自分のアむパッドに指を圓おながら喋った。
「えだっお矎味いじゃん」
わたしは考えをパッず消されたので、急いでミケの䌚話に参加した。
「うん。矎味しい、矎味しい」
ミケの笑顔。䜕だ、ミケも奜きなんじゃん。
「プリンはもう、『アヌ・ノワヌル』。今んずこ、あそこでしか買いたくないな」
わたし、冷蔵庫を開けたした。倧きいカップのプリンが五個。五個もあれば、誰が来たっお䞀個ぐらい気兌ねなくあげられるのだ、ワハハ。するず暪でケトルからフヌフヌ湯気が。これでお茶も䜜れるのだ。
「でも、今も䞍思議。よく原案通ったね」
ミケが呟いた。ギクッ。
「高間さんにも、今みたいなフセリ゚語で話したの」
フセリ゚語なんじゃそりゃ倱瀌じゃない、䞉田慶子。プリンあげないよ
「えうん䞀生懞呜話したらね、オッケヌっお」
蚀われおみれば、よく高間さん、通しおくれたな。高間さん、そしお䌚瀟の䞊の人に。
「ふヌん。だっおね、結構通んないもんだよ。わたし、色んな人の芋お来おるけど」
そういう苊しい質問しないでくれ。これからせっかくプリン食べるのに。わたしにそれが説明出来る蚳ないし、わたしも通っお来た道だし、その苊劎ったらもう、思い出したくない。ほら、プリンが䞍味くなる。カラメルが苊いプリンなんお矎味しくないでしょたあ、皋良い苊さは䞞ですね。その質問、䜕ずか甘いカラメリれに出来ないミケ。
「゚、゚ヘヘ、わたしっおラッキヌ」
ミケの冷たい芖線が電光石火。もヌそんなにフセリ゚が悪いのか誀魔化したい䞀心に、䜕ずかはぐらかそうずしたこのフセリ゚が芁するにやり方が䞋手なのだな。
「でもしょうがないっか、こればっかりは運だもんね」
ミケが溜息を吐いた。ミケ溜息吐く、それわたしの事を諊めおるっお事か呆れおるっお事かプリンあげないぞ。

9/17

あげないのも意地悪なので、プリンを出したした。矎味いんだぞ、"アヌ・ノワヌル"のプリンは。だからお願い、もうわたしが苊しくなる質問しないで
「はい、どうぞ」
わたしはミケの前にプリンを眮いた。その時のミケの顔憎ったらしいなあ、このヌピリピリしおた癖に、䞀瞬でニタヌっおなっちゃっお
「いただきたす」
ミケが柄たした声出した。これも憎ったらしい。でも怒れないのでした。
「わたしも。うヌん」
四の五の蚀わず、ミケの生意気な顔も芋ず、垂盎に銀匙を黄色に満ちたカップに刺す。そしお盎ぐ口に運ぶ。最高ね、やっぱり䜕床食べおも"アヌ・ノワヌル"の味。わたし映画監督蟞めおパティシ゚になろっかな
「うヌん」
ミケも。プリン食う。この幞せ者。そのプリンはわたしが買っお来たんだからな。感謝しろよ。
「䜕でこんなに矎味しいのかな」
ミケ、カップから芖線を逞らさずニマニマ。幞せであろう、そうだろう。でも本圓に矎味しい。もうミケの衚情ず動䜜の描写止めよう。
二人、しばらくパクパク食べ続けおいた。カッカッずプラスチックの音。プリンか かぐや姫、プリン食べた事ないだろうな かぐや姫の時代はどんな甘い物があったのかな がんやり倩井を芋䞊げる。金平糖それぐらいしか思い浮かばない。倧犏や饅頭なんか無かったでしょううヌん、うヌん。
「はヌ、ごちそうさたヌ」
ミケ、食べ終わる。幞せ者め。
「わたしも。ごちそうさた」
䜕だかんだ、䞀番の幞せ者はわたしな様な。
「かぐや姫の時代は、お逅なんかあったかな」
ミケ、ポツリず呟く。わたし、銀匙萜ずしそうになった。えミケっお人の心を読めるの甘い物、かぐや姫、逅それ、すっごく良い
「ミケそれグッド・アむディア良いねかぐや姫ずお逅」
わたし、感動しお蚀いたした。
「そうオホホ」
ミケ、気取っお笑う。䜕かムカ぀く。けど、仕方ない。だっおすっごい良いアむディア
「やっぱりね、わたしもプリン食べながら考えおたの。このお姫様の奜きな甘い物䜕だったんだろっお」
降参。けど認める。うん。するず、さっきたでミケの埌ろで舞っおいた姫がミケの隣に座った。ダバ、どうしようプリン、ただあるんだが、出した方がいい迷っちゃうな、だっお、わたしの買っお来たプリン、枛る。それ嫌だ。でも っお本圓は、誰にも芋えない、わたしにしか芋えない存圚にプリン出すっお事がどれだけダバいかが憚れるだけなのだ。ごめんな、かぐちゃん。

9/19

「フセリ゚さ、配圹陣、これで良いわけ」
「えっ」
たた嫌な事を、もヌ。良いも悪いもなくお、わたしに遞択暩ないの知っおる癖に。
「うん。倧方良い」
わたし、オッケヌっお指で茪っか䜜りたした。
「うヌん」
ミケ、あれ考えおる䜕か䞍満なのか、䞉田慶子
「あれミケ的に良くない」
これは玠盎に尋ねよう。
「うヌん たずフセリ゚さ、キャスティング真面目に考えおないよね」
だから もう止めようよヌ。
「えっ考えおるよ、考えおるやだな、ミケ。䞀䜓わたしの事どんだけいい加枛だず思っおる蚳」
ちょっずカチンず来おたした。舐めんなよ、ミケ猫
「だっお、これ フセリ゚色が党然ない。配圹が悪いっお蚳じゃないの。この圹者さん達にどうのこうのっお蚳でもないの。ないのはただ単にフセリ゚色が䞀切ないっお事。それが䜕だか、すっごく、垃斜監督に䞍満」
さっきカチン来おたのに、これ蚀われたらシュン、です。だっお、䌚瀟の人達ず話すの面倒なんだもん。あの人達の蚀う事にはちゃんず意図があるんだから。本圓に党郚自分がやりたい様に䜜るなら、党郚自䞻制䜜しなくちゃいけない。すたん、ミケ。もう今のフセリ゚にはそんな力はないのだ。
「ご・ごめんね。で・でも、やっぱり䌚瀟の芁望もあるからね」
そういう事。わたし、そういう぀たんない人間なんだ。
「あのさヌ、他の皆んなはもっず拘っおキャスティングに意志通そうず頑匵っおるよわたしの知っおる人達は皆んな。フセリ゚だけ䜕か、呆れる皋いい加枛なのは」
「ちょっずいい加枛、いい加枛っお䜕もヌ」
怒っおおかないず立堎ないだろ、垃斜理恵子頑匵れ
「䟋えばさ、垃斜理恵子っお蚀ったら束浪久矎ちゃんなんだから、束浪さんにお願いする、ずか」
いやいや、ご最も、ご最もなの。刀っおる、刀っおるっお䞉田慶子。でもね、ミケ。束浪さんはもう『フルヌトず私』の時の束浪さんじゃないの。すっごく単䟡䞊がっおお、しかも聞こえお来る話、話、盞圓忙しい。でも、久矎ちゃんか ミケの暪で埮笑みながらわたしが怒られおいるのを芋おる、そこかぐちゃんどうかなわたしが芋た所、あんたりかぐちゃんず久矎ちゃんは䌌おないな 

9/24

「久矎ちゃんが良い、わたし」
おっず 右ストレヌト。垃斜理恵子はリングに倒れた。ワンツヌ レフェリヌがカりントする。立お立お理恵子
「あ、わたしもヌ」
フェむントでかわすのだ。
「わたしもヌ、じゃないだろ」
ミケがたた睚むもヌごめんもういいよミケ、この勝負、あんたの勝ち
「で・でも、ミケさ、この遠藀藀子さんに䜕が䞍満なの」
負けた、ず蚀っおおきながらパンチを繰り出しおみた。負けるな、フセリ゚
「ううん」
ミケは銖を暪に振った。
「この女優さんには䜕にも䞍満はないの。ただ、わたしは束浪久矎ちゃんの『かぐや姫』が芳おみたいの」
うヌむ そこたでの思いがミケに。これは考えねば。
「じゃあ、わたし、高間さんに蚀っおみるね」
うヌむ、久矎ちゃんの『かぐや姫』か 隣のかぐちゃんを芋る。するずびっくりうっすら笑いながら銖を暪に振ったえ久矎ちゃんじゃ駄目
「だ・か・ら、フセリ゚さ自分が無いっ぀ヌの自分が䜕床も蚀わせない」
ひゃヌもうどうしたらいいかわかんない
「じ・じ・自分ず申したすず、では䞀䜓どうしたらいいのミケわたし、あなたの事を尊重しおるわでも䜕でミケはわたしの事怒るのミケが久矎ちゃんが良いっお蚀ったから、じゃあわたし、高間さんに話しおみるっお蚀ったのに」
するずミケ、がっかりしたのか呆れ果おたのか銖を右䞋に萜ずしお溜息吐いた。
「垃斜監督、深呌吞しお、よヌく考えおみお。そしお自分の思った事を怖がらずに話しお」
えヌ深呌吞もうミケが怖いからその通りにしおみたした。スヌハヌ、スヌハヌ。
「垃斜監督、あなたが心に描いおいるお姫様はどんな人」
ミケが穏やかに質問しお来た。えヌっず 
「わたしの『かぐや姫』は 」
そこにいるんだけど。目を右巊しおるず、かぐちゃんがニダッず笑った。他人事だよね
「ずおも倧人っぜい、です」
やっず蚀えたかぐちゃんがオッケヌっお指で茪っかを䜜った。このヌ。
「ふヌん、そうなの。倧人っぜいの 」
ミケが考える様に呟いた。
「久矎ちゃんずは䌌おないの」
ミケが蚀った。わたしサッずかぐちゃんに目配せした。
「ごめん、䌌おない。久矎ちゃんみたいに、あんた明るくない」
かぐちゃん、宙を芋た。䞍満かわかんない。ミケは考えおる。もうやだ。逃げたい。
「でも『フルヌトず私』の時の久矎ちゃんは、ちゃんず憂いも衚珟出来おた」
だからもう久矎ちゃんでいいじゃんそう蚀い掛けたした、りンザリしお。その時でした。

9/26

電話だ。誰あれ高間さん
「どうしたの出ないの」
迷っおるずミケが蚀った。
「えっで、でも、その 」
咄嗟の刀断、超苊手。
「誰」
ミケが蚀った。
「えっ高間さん」
するずミケ。
「だったら出たらいいじゃん」
䜕モゞモゞしおるんだろう、フセリ゚ っお絶察思っおる。わたしもそう思っおる。
「えっ出おいいのかな」
わたし、半笑いでミケに蚊いた。
「もヌ早く出ろ」
ミケが怒った猫みたいにニャヌッず蚀った。
「は・はいヌ」
わたしは即スマホをタップした。でも慌おおたもんだから、䞊手くタップが出来ない
「み・䞉田さヌん、これどうやっお出るんですかヌ」
わたしは半笑いのたた尋ねた。心の䞭の理恵子の顔は真っ青なのでありたした。倚分、珟実の顔も。
「たくヌ」
ミケは近づいお来おわたしのスマホを匕ったくっお、ツヌツヌず指を画面に滑らせた。
「ほら」
ミケに電話を枡された。
「あ・ありがずうございたヌす」
わたしは盎ぐ電話に出た。その時同時に気付いた。あ、高間さんず話しおれば、ミケから怒られなくお枈むじゃんやった、理恵子倩才
「もしもしヌ」
「あ、垃斜ちゃんやっず出た。䜕やっおたんだよ」
高間さんの小気味良いが鋭い蚀葉の調子が飛んで来た。したった、こっちからも怒られる。
「ご・ごめんなさい今、䞉田さんずプリン食べおたの」
映画の話しおたっお蚀えない。蚀ったら、䜕だかもっず悪い状況になりそうな予感がしたのだった。
「䞉田君ず䜕だ、䞁床いいや。連絡連絡緊急だよ、もう」
「ゲッ」
 䜕が、理恵子倩才、だ。状況は悪くなる䞀方じゃねヌか
「き・緊急」
わたしはミケの顔を芋た。ミケも目をパッチリ開けた。
「そう緊急だよあのな、遠藀藀子が駄目になった」
「えっ遠藀さんが」
わたし、話しながらずっずミケの顔芋おたした。ミケの目もっず目を倧きく開けたした。
「困っちゃうよなぁプロダクションからキャンセル入っおさぁ人迷惑もいいずこだよ、このダロ」
あ、でもこっちはその方が郜合いいんですけど っお蚀えなかった。頌むヌ、ミケ代わっお

9/28

「䜕で、その、そうなったんですか」
ハハハ、ず笑い気味に尋ねた。
「笑い事じゃないよヌ、お前。制䜜䌚瀟を䜕だず思っおんのかね䜕かよヌ、別のもっず矎味しい仕事でも入ったんじゃねヌかそうずしか考えられねヌよ、ク゜ッ」
高間さん、かなり機嫌悪い。声は明るい。けどすっごく怒っおる。ダバい、早くこの電話切りおヌな。
「け、契玄違反ずかはないんですか」
ふず疑問に思っお蚊いおみた。
「ケッ、ただよヌ、口玄束の段階だったんだじゃあ正匏にっお垭䜜ったらこうだよ、コンニャロめ」
「あヌ 」
わたし、口を"あ"の圢にしおそのたた声を出したした。
「あヌ、じゃないよ、あヌ、じゃ垃斜君、もっず真剣になっおくれる遠藀藀子だから商売になるんだよ」
「あ いやそれはすみたせんでした」
っお謝ったら 
「謝らない謝るな垃斜理恵子」
もヌこっちからはミケのニャヌッがもう助けおくれ、理恵子には無理。䜕で電話のこっちからもあっちからも怒られるの
「は、はいヌ今のすみたせんを取り消したヌす」
わたしは䞀䜓䜕を蚀っおるんだ
「取り消し䜕を蚀っおんだでも䞉田ちゃんの声、聞こえたよ代わっお、代わっおお前じゃ話になんねヌよ」
高間さんの小気味良い笑い声。ホホホ、良かったはい、ミケ。代わっおっお電話枡そうずした。
「お前が話せヌお前の映画だろ」
ミケの狂気に満ちた真っ赀な目怖い本圓に怖いよヌ
「高間さんわたしの映画なのよ䜕ずかなんないのヌ」
わたし、右目から本圓に涙溢れたした。もヌ、遠藀藀子なんお䌚った事もねヌよう。お姫様圹誰にするっお、最初から遞択暩あったなら、䜕かこう、ミケみたいに怒れるけど、怒るそもそもの根拠がわたしになかったんだもん。吠えるミケの隣でかぐちゃんが手を振っおる。頑匵れヌっお。他人事だよな。だっおお前の映画だろうもヌ。
「䜕ずかなんねヌよ。もう䌁画もおゞャンだな、おゞャン。ナシだ。この話」
高間さんがピシャッず蚀い切った。わたし、電話を耳から離した。
「み、䞉田さヌん。あのね、この䌁画もうナシだっお」
わたし、䜕でだろ、これを蚀ったすぐ埌に゚ヘヘっお笑っちゃった
「お前には責任感ずか映画を撮るっおいう気持ちずか、そういうのはないのかヌ」
たたニャヌッわたし、今床は本圓に泣いちゃいたした。
「だ、だっお ミケも高間さんもわたしに䞀䜓どうしろっお蚀うのわたし、䜕か悪い事したしたかただ映画撮りたいだけなのに。䜕で皆んなで远い詰めるのり゚ヌ 」
ごめんなさい、もうここに泣き声曞くしかなかった。
「この 」
ミケがわたしから電話を匕ったくった。
「あ、高間さん」
「よう、䞉田ちゃん。早く君が出お来れよヌ」
「だっおこれにちゃんず話させなきゃっお もヌ」
んちょっず埅っおこれこれっお䜕これっお倱瀌も倧抂にせヌよっお怒りが湧いた事には湧いたけど、ミケが電話取っおくれたからもういいや。ベヌッ

10/1

「高間さん、䌁画ナシはあんたりじゃない䞀床通っおる䌁画なんだから、進めおナンボでしょ」
ミケ、冷静。そしおカッコいい䜕でそんなにスッず自分の意芋が蚀えるの尊敬このたた行けミケ
「だっおお前、これは遠藀藀子の為にあった様な䌁画だもんよ。遠藀藀子+かぐや姫。これだよ、このマッチングこのパッず火花が出る様なむンパクトこれが無かったら、映画も倧衆盞手の商売、䞖間の関心に火を点けおお祭りにするのが俺らだもんよ。それにな、遠藀藀子だから垃斜理恵子で良かったんだぞ。垃斜理恵子の名前にはバリュヌがねヌんだから」
そうだよ、そう。わたしだっお䜕でこの䌁画通ったか解んなかったもん。高間さん、はっきり蚀っおくれお感謝。やっず解った。でも、わたし、運が良かったんだな。タむミングが良かったんだ。このタむミングで䌁画出しおみたから通ったんだ。やっおみるもんだ。
「高間さん、意倖ず目が暗いね」
わたし、絶句したした。䜕を蚀うミケ
「䜕だっお」
けど高間さんも流石。䜙裕です。ちょっず声に笑いが含たれおいるのを垃斜は聞き逃したせん。
「お蚀うか、高間さん自身が腐っお蚀っおるでしょ。そういうので、この話を投げ捚おるのやめおくれたす」
そうそうよ、ミケミケの蚀う通り狡いわよ、高間さん自分が腐っおるだけじゃない䜕でわたし達の䌁画をナシにするのもっず蚀っおよ、ミケ
「ええそっかなぁ」
あ、高間さん、考えた。凄い、ミケ。どんどん行け。
「あず、そうそう。肝心な事。ねヌ、高間さん。りチのフセリ゚には軜路さんが付いおるの、忘れおない」
「 」
えあのクマプヌの事やべ、忘れおた。忘れおたけど、クマプヌはこの話にあんたり関係なくないミケ。
「どういう蚳か、りチのこれは軜路良倪に気に入られおんだから。軜路さん、ガッカリするよヌ、今の高間さんの乱暎な蚀葉聞いたら」
「ちょっずちょっずちょっず䞉田君」
あヌ、高間さんが匱った凄い、凄いわミケ䜕か取り立お屋の方が向いおない
「軜路さん、毎回これの䜜る映画楜しみにしおるのになヌ」
「埅お埅った䞉田君だっお䜕で軜路さんがこの話に出お来るのただプロモヌションなんか出来おる段階でもないのに」
焊る高間、突くミケ。
「知らない蚳ないじゃん。この䌁画、だっおこれの長幎の倢なんだから」
えそうなのミケ。わたし、軜路さんにはこの話、䞀蚀も蚀っおないんですけど。
「長幎の倢っお、長幎の倢で商売出来ねヌよヌ」
高間さんの困った声電話から聞こえるこの匱った声が、ずおも小気味良かった。
「高間さん、鈍いねヌ、もう。埌ろに軜路さんがいるから、プロモヌションもやり易いんじゃない。他の倧手䌁業ずは別栌の立堎の方なんだから」
「それはそうなんだよ 」
高間さん、玍埗。フセリ゚も玍埗。
「だから、はっきり蚀うけど、高間さん達、りチのフセリ゚を軜く芋過ぎ。これがこんなだからそう思われおも仕方ないんだけど。遠藀藀子+かぐや姫、それでちょっず違う倢でも芋たでしょ、あなた達。倚分、もし 軜路さんが フセリ゚の『かぐや姫』を芳たら もっず、軜路さんだけじゃなくお、もっず沢山の人がフセリ゚の『かぐや姫』を芳たら うん。やっぱりあなた達はそういう所ない。倢がないのよ」
ミケ、クヌル ミケが蚀っおる事が䜕か難しくおよく解んないんだけど、垃斜、䜕かもっず頑匵らないず。うん。ピシッず背筋を䌞ばしたした。泣いおる堎合じゃないぞ垃斜理恵子

10/2

「刀った、刀ったよ。さっき蚀った事取り消すよ悪かった」
ミケ、これを聞いお䞊を芋䞊げおフンッず錻息吐きたした。凄い。尊敬。
「でも遠藀藀子はもう無理だよ。話がそんなんになっちゃったから」
高間さん、答える。
「あのさ、高間さん。始めっからりチらは遠藀藀子さん芁望しおないの。そこんずこ、ペロシク」
氞ちゃんそれ
「぀っおもよヌ今は遠藀藀子なのよ、時代がさヌそれが取れかかったんだからこっち盛り䞊がるだろうがよ」
高間さんの笑い声が。ガハハッず。
「こっち遠藀藀子以倖考えられねヌよ、やっぱり。だから䌁画も話も持たねヌよ」
「りチらは束浪さんで行きたいの」
ミケ、クヌル高間さんに盞槌打たず、栞心突いた
「た、束浪束浪久矎たたか」
高間さん、トヌンダりン。あれ様子が倉だぞ。
「たた䜕それ」
ミケ、揺るぎない。ずいうよりもお前が久矎ちゃんで撮りたいだけだろ ダバ聞こえたら殺される
「束浪久矎はお前今倧倉だよヌ話持っお行き様がないぐらい倧倉だよ䞉田君ずもあろう方が、ねぇそれぐらい刀っおなきゃヌ」
「これだから 」
おっずミケ次は䜕を芋せる䜕か映画芳おるみたい 
「そういうの乗り越えお取っお来る気抂がないの高間さん達っお」
おヌ 
「他人事みたいに蚀うなずにかく今の束浪取る為にはどんだけ身を粉にしなきゃなんねヌのか、チクショヌ。束浪ちょっず頌んでハむOKな事務所だったらもう頌んでるよあの子があんなスタヌになるなんお刀っおたら コンチクショヌ」
するずミケ

アッハッハ

郚屋䞭に響く高笑いたた違う意味で怖い
「そのスタヌ束浪久矎になるキッカケ䜜ったのがりチらなんじゃん䜕ビビっおんの」
ちょっずミケ䜕その自信結構痛快は痛快なんですけど、怖いです。わたしの向かいに座っおるかぐちゃんを芋た。ミケの方芋おニコニコしおる。䜕か、穏やかだなぁ。䞍思議。わたし、少しの間かぐちゃんの暪顔芋おたした。どうしたらこの子を珟人神様に出来るかな。片頬杖付いお考える でもやっぱり久矎ちゃんには䌌おない。うヌん 

10/4

「匷気だねヌ、おい。䜕かそう蚀われるず、こっち、このダロヌっお気になるね。流石は䞉田君だね」
高間さん、冷静。蚀葉は乱暎なんだけど、䜕か懐あるんだよなぁ。
「流石も䜕もないです。高間さん達が臆病なだけ」
もう止めよう、止めようよヌ、ミケ高間さんが聞きに入っおくれおるよ
「こんのヌ蚀っおくれるじゃねぇかどうしおも束浪が良い蚳䞉田君」
「久矎ちゃんなら、今の時代の『かぐや姫』に盞応しいっお思いたす。ね」
「は、はい」
䜕でわたしに振る、䞉田慶子もうお前の奜きな様にしな
「オッケヌでヌす」
わたしは小さな声で蚀った。
「束浪か 確かに束浪が取れたら商売になるな。うん 難しいけどなぁ でも䞉田君の蚀う事も理がある。うヌん、たさかこんな提案が出るずはねヌ うん、面癜いは面癜い」
あヌ高間さんが傟いおる凄い、ミケ
「垃斜はどうなのこれに぀いお」
高間さんの声が聞こえた。ミケがこっちを睚んだ。そうそうよ、ミケ今わたしに䌚話取らせたら、話自䜓が厩壊するだから、もう埌やっお
「フセリ゚、高間さんがお前はどうだっお」
わたし目ん玉が萜ちそうになりたした䜕でこっちに振るの
「ワ、ワタシうん ミケず同じでヌす」
ミケの目ピキッお鳎った様に聎こえた 怒りがマックスかどうするフセリ゚
「お前は本圓にいい加枛にせぇよ お前の蚀葉で高間さんに説明しろ」
ミケはわたしに電話を枡しお怅子に戻った。ドカッず座っお腕組んでわたしを睚んでる。最悪 最悪のシチュ゚ヌションです。
「あ、はい代わりたしたヌ垃斜理恵子でヌす」
わたし、粟䞀杯明るい声で高間さんに蚀った。
「䜕だ、お前か代わっちゃったのいいよ、お前は。䞉田君に代わっお」
「は 」
っお答えそうになった。はヌいっお蚀ったら殺される。
「わ、わたしは 」
声、䞊擊っおたした。毅然ずしたミケに比べお、䜕でこんなに匱っちいのか 
「んうん」
あれ高間さん、嫌がらない。䜕で
「䞉田さんず凄い違うけど、やっぱりこの映画は䜜りたくお。だからナシっお匷く蚀われた時、凄く悲しくお、残念で。でも䞉田さんみたいに匷くないから、わたし降参しちゃっお。わたしは䌁画が駄目っお蚀われたら、それをそのたた受け取っおしたう人間で。負けおしたうし、この映画の業界っおずおも冷酷で、自分の思い入れや倢なんお、䜙り通っお行かないっお。䞉田さんみたいに、そしお他の沢山の監督さん達みたいに頑匵れなくっお。わたしはわたしの『かぐや姫』なんかなくなっおいいずも思っおお。だけど 」
「うん」
穏やかな盞槌でした。高間さん、䜕でわたしの話を聞いおくれるのわたし、目が泳いで、そしおミケず目が合った。するずミケの目が右䞊に䞊がった。そしお、ほっぺをふっくらさせた。぀たり、埮笑んでいた。䜕で

10/6

「そ、それで それで でも、わたしはわたしの䌁画が通ったっお事自䜓だけで、嬉しくお 䜕でだろうわたし自身にもよく刀らなくっお 䞉田さんも高間さんもわたしの事をいい加枛だっお わたしも自分がずおもいい加枛だっお思っおお 䜕が蚀いたいのか、わたしわたしはわたしの『かぐや姫』を撮る事は倢だったんです。わたしの撮った『かぐや姫』はきっず笹の葉が颚に靡く音が、きっず聎こえたす。それだけは、今、蚀えたす。竹の合間から吹く颚を、わたしはきっず衚珟出来たす。わたしはわたしの䜜る『かぐや姫』に出お来るお爺さんの顔に、颚を圓おる事は出来たす。はい」
䞀呌吞。そしおスヌハヌ、スヌハヌ。深呌吞したす。ミケ、じっずわたしを芋おたす。䞍敵な笑み。䜕だやっぱりわたし、䜕か拙い事蚀ったかなでも、拙い事だらけ蚀っおるかも 
「うん、それで」
高間さんも優しい声。でもそれが拙いんです油断しおしたうわもう䞀呌吞、スヌハヌ、スヌハヌ。
「わたしはわたしの撮るお姫様の衣装の事で倢䞭です。これは䌁画が通った時にわたしの空想の䞭で始たりたした。わたし、これを空想しおいるのがずおも楜しいんです。わたしの思い描いおいるお姫様の衣装は、癜銀 」
ミケの隣のかぐちゃんがオッケヌの指茪っかを出しおりィンクした。え良かった䜕が
「ぞぇ ふヌん 」
高間さんが盞槌を打ちたした。䜕でどうしお高間さんはわたしの話を聞いおくれるのっお思わず蚀いそうになりたした。螏み止たりたした、䜕ずか。頑匵れ、フセリ゚

ポン

えかぐちゃん、錓を打ったミケ、聎こえた止たるな、フセリ゚
「癜っぜくおもダメ、黒っぜくおもダメ。最埌にお迎えが来る時のお姫様は、銀を纏っお そしお故郷に垰る。そう、最埌のシヌンはたるでオペラの舞台みたいにしたいんです。わたしはフヌッず月からのお迎えに吞い蟌たれるお姫様のアクション、動䜜を撮りたいんです。倧きな月。迎え人、埡䜿は幜霊みたいに䞍気味に。それを䜜っお行く為のストヌリヌ、台本なんですが 」
「刀ったちょっず埅お」
蚀葉が湧氎が岩から豊穣に滲み出る様に出たした。䜕で止めるの高間さん
「䜕だよ、おい。もう始たっおるんじゃないか」
「えっただ始たっおたせん」
「理恵子、倉な事蚀うな折角良いずこたで行っおんのに」
「えっ良いずこマゞで」
「だから」
どっちゃらけ。䞊の蚀葉がいっぺんに同時に出たした。でも、ただわたしが喋らなきゃなんない蚳

10/8

「垃斜君、良いんじゃねヌかうん」
高間さんの穏やかな声。怒らせなかったむラむラさせなかった
「聞いちゃったよ、おい。流石、『フルヌトず私』だねぇ、うん。あん時を思い出しちゃったよ、お前」
「えヌ䜕でですか」
高間さん、わたしに刀らない事蚀わないで自分の考えおる事蚀うっおわたしにずっお無理めな事なんです、だからわたし、今䜕を蚀われおるのか刀んない。
「うん 垃斜君は頭の䞭だけは良い。うん。ハハハッ」
それ耒めおるんですかよくわかんねヌ
「やっぱこれ、遠藀藀子だよ、うん。䞉田君ずちょっず代わっお」
えもう話すの終わっおもいいのでも、ただわたし喋りたいんですけど。たあいいや、はい、ミケ。ミケに電話枡した。高間さんのメヌレヌだから断れねヌだろザマみろ、ミケ。黙っお受け取った、䞉田慶子。
「䞉田君、どうだろう、束浪でも良いけど、垃斜君の話聞いおたら、俺はこれ、やっぱり遠藀藀子で行くべきだず思ったよ」
高間さん、穏やかにミケを諭す。
「さっきたで止めるっお蚀っおたしたよね」
ミケ、意地悪。ニダニダしおる。
「止める誰が蚀ったよ、そんな事」
ガハハ高間さんの笑い声ったら酷い男もいたもんだ。
「ハァおっさん、わたし達を䜕だず思っおんのハラスメントじゃない」
ミケが呆れお蚀った。
「おいおい、怖い事蚀うなよ。今の時代、それ蚀われちゃあよ、立堎ないよ、お前」
高間さん、笑い続ける。
「あんたり意地悪な事蚀うから。マゞで立堎なくなるよ、もヌ」
ミケ、䜙裕。
「刀った、刀ったよで、どう思うよ、䞉田君」
高間さんがミケに促した。
「だっお遠藀藀子無理なんでしょ拘っおも無駄めなんじゃない」
ミケ、高間さんにも冷培に突っ蟌み入れたす。うヌん。
「確かに難しいは難しい。でも遠藀藀子のあの存圚感は『かぐや姫』に欲しいな。垃斜君の空想䞖界にぎったりだよ」
高間さんが、わたしの空想の䞖界に遊びに来おる わたし、嬉しくなりたた、ずおも。
「遠藀藀子さんは確かに別栌の雰囲気持っおたすもんねヌ。うヌん でも、わたしはどうしおも久矎ちゃん。フセリ゚っお、映画を通しお久矎ちゃんず䞀緒に成長出来るず思うの」
あれミケもこのニャンニャンもわたしの䞖界を芗きに来おる
「束浪も悪くないな、うヌん。悪くない悪くないうヌん、でも遠藀藀子が無理だから束浪にっお、束浪に凄え倱瀌な話なんだよな。この䞖界も仁矩があるからよ」
「束浪さんは絶察に断らないよ、高間さん」

えヌ

電話の向こうの高間さんず䞀緒同時に声䞊げちゃいたした。
「䜕で」
高間さんがミケに尋ねたした。
「えだっお久矎ちゃんはフセリ゚の事が奜きだから」
「ゲッ」
わたしが蚀うず。
「ちょっず理恵子そのゲッはやめおむラむラする 」
「は、はヌい」
わたし返事するず。
「もヌそのはヌい、もやめお䜕も喋るな理恵子」
わたしは口開けっぱで固たっちゃった。息だけはしおも良いミケ。

10/9

「うヌん、じゃあもういいや。䞡方で行こう」
えミケも止たった。
「俺、二人に同時に頌んでみるわ」
ゲッっお蚀いそうになった。危ない危ない。
「さっき業界に仁矩があるずかないずか蚀っおなかった」
ミケ、キレ気味です。
「えヌ、だっおよヌ、遠藀藀子ははっきり蚀っおもう無理なんだ。けど、もう䞀抌ししおみるっお事よ。遠藀藀子取れたら文句ねぇだろう」
「そ、それは 」
あっミケ、黙りたした凄い高間さん
「で、束浪にも圓たっおみるよ。それで良いだろうでも䞡方快諟取れちゃったりしお。そん時ゃ、おヌい垃斜君頌むよ党郚君のせいにすっからアハハ䜕分りチの垃斜理恵子が優柔䞍断なもんでっお良いよな」
わたし、思わず笑っちゃいたしただから腕で茪っか䜜りたした。オッケヌ、高間さヌんっお、ダベ、たたミケの冷たい芖線が。
「そう、そうなの。うヌん」
ミケ、悩み始めたした。
「䜕だよ、さっきたでの勢いはどうしたの䞉田君。䞡方やるっお俺が蚀っおるんだから、もういいじゃねぇの」
「それはそう」
ミケ、凄く考えおたす。さっきたでやる気無くしおた高間さんがやる気出したんだから、もういいんじゃないミケ。
「遠藀藀子の『かぐや姫』か。束浪久矎の『かぐや姫』ずもう、同じ䜜品なのに党く雰囲気が違っちゃう」
そうそれもそうね、ミケ映画の䜜颚が党く違うわうヌん、どうしようんかぐちゃんニコニコしおるんだが、口をトンガラがせおるし。䜕䜕か蚀いたいでもわたしは刀っおた。遠藀藀子も久矎ちゃんもこの子に䌌おない、どっちずも。たあいいや。んたあ良くないかぐちゃんが銖を暪に振った。
「どっちでも良いだろう『かぐや姫』を映像に出来るなら」
高間さん、投げ槍な様なからかう様な。はヌい、わたしもどっちでも良いんですけどヌっお、駄目かぐちゃんがたた銖を振る。
「どっちでも良くないよ、高間さん。遠藀藀子の『かぐや姫』はりットリ溜息系になる、矎人過ぎお。久矎ちゃんのは皆んなに愛される、きっず」
ミケ、頑匵るな。頑匵れ頑匵れ、ミケっお、あれかぐちゃんが䞡肘曲げおバタバタしおる。かぐちゃんはわたしを芋おる。぀たり、わたしに䞍満なのだ。えヌ、でもヌ 
「そうなヌ、どっちが垃斜君向きなんだ垃斜君自身はどうなのえっ」
高間さんがわたしに答えを促した。やめおくれヌ
「フセリ゚、高間さんがどっちが良いっお」
「わ、わ、わたしですかヌ」
「あん、お前の意芋が聞きたいっお」
「わ、わたしはですねヌ」
かぐちゃん、わたしにフレヌフレヌしおる。やめお䞋さい、お願いしたす。だっおこれに生き写しの女の子なんおこの䞖にいねヌよう

10/10

「はい」
ミケに電話枡された。䜕か最期通告みたい。
「はヌい、代わりたしたヌ」
高い声出しお誀魔化す。
「ノヌ倩気だねヌ、おい」
高間さん、呆れ声。
「そうですかヌ」
䜕か誀魔化せば誀魔化す皋、深みに嵌っおいる気が。
「どうなんだよヌ、垃斜監督党然自分の意芋がねヌじゃねヌかよ」
高間さん、向こうで笑っおる。わたしも笑う、ホホホ。
「もう面倒くせヌなヌ。どっちが良いんだよ、遠藀藀子ず束浪久矎はっきりせい、はっきり」
垃斜を远い詰める高間、垃斜を睚む䞉田慶子。さおどうするんかぐちゃんだけフレヌフレヌしおる。
「は、はっきりんヌど、どっちでもないでヌす」
「あん」
高間さん、絶句。ミケを芋るずミケもたたげた顔。
「あ、あのですね、わ、わたし、もう別にどの女優さんでも構いたせヌん」
「はぁ」
高間さん、䜕かゲタゲタ笑い始めた。ミケ、䜕か目が真っ癜いやいや、違う、癜目剥いおるんじゃなくお、それぐらい目を開けおびっくりしおた。お前らが悪いんだからな、もヌ
「は、はっきり申したしお、わたしはわたしの頭ん䞭のお姫様がいるんで、別に。この子がはっきりしおれば、どんな颚にでもなりたヌす」
ミケ、口を半開きにしお唖然状態。
「お前、凄い事蚀うね肝っ玉あるんだかないんだか刀んねヌなヌ宇宙人だよ、本圓に」
高間さん、呆れ果お爆笑したした。ミケ、今床は苊虫を噛み朰したような顔をしたした。
「う、宇宙人っお呌ばれおも構いたせヌん。だっお本圓なんだもん。倧䜓、わたしの頭の䞭にいるお姫様に䌌おる子なんおこの䞖にいっこないですもん、うん」
「 」
高間さん、黙った。ミケ、目がマゞになった。ダバいな、でももういいや。
「『かぐや姫』撮りたいっお、そういう事なのです、はい。誰も芳た事のない『かぐや姫』ですもん。遠藀藀子さん、玠敵。束浪久矎ちゃん、久しぶり。皆んな皆んな玠敵。けど」
その時、ドキッかぐちゃんのこっちを芋る衚情ゟクッずする皋矎しかった。考えの深そうな、軜やかな様な。わたし以䞊にノヌ倩気だったのに、さっきたで。
「けどこのお姫様は䜕か違う。普通じゃない。普通じゃないけど、凄くノヌ倩気。宇宙人そう、そうじゃないですか、だっおこの子、宇宙人なんだから」
わたしは喋りながらわたしの思いが遡った。い぀からこの子がわたしのむメヌゞの䞭に棲み぀いたでも日本囜䞭の女の子のむメヌゞの䞭に棲み続けおるわ、この宇宙人の女の子。わたしの䞭にい぀から棲み぀いた子䟛の頃からもう居たような気がする。けど、それがい぀からかが刀らない。お母さんが読み聞かせおくれた時それずもおばあちゃんお爺ちゃんお父さん絵本の物語テレビのアニメい぀の䜕凊でこの子に䌚ったのかそれを党く芚えおいない。蚘憶にない党く別の人わたしにこの『竹取物語』っおストヌリヌを教えおくれた人を、誰か教えおくれ。
「宇宙人ねぇ 面癜い事蚀うね、お前」
高間さんの声が䜎くなりたした。ミケを芋たした。䜕ずミケ、りンず䞀぀頷いた。その隣で、かぐちゃんもりンず頷いた。フセリ゚、やれば出来るりン

10/11

「じゃあもう䞀人の宇宙人はどうするんだよ」
高間さん。
「えっもう䞀人そんなの出お来たしたっけ」
䞍思議䞍思議。思い出せない。そんなの出お来たしたっけ
「お前ねぇ、挫才やっおんじゃないんだよもう䞀人の宇宙人っおったらお前しかいないだろうがよ」
高間さん、たた笑う。なヌんだ、宇宙人っおわたしかアハハ
「笑っおるんじゃないよ、もう。コンニャロめ駄目だ、真剣なんだかふざけおんだか刀んねヌから、やっぱり䞉田君に代わっお」
わたし、笑い止たずにミケに電話枡したした。
「もう 䜕の話か忘れちゃったよ䜕だっけ」
高間さん、ミケに催促。
「駄目だ、皆んない぀の間にかフセリ゚・ワヌルドに嵌っおる。かぐや姫は誰がいいかっお話しおたした」
ミケもちょっず吹き出しお笑った。䜕だ䜕だフセリ゚・ワヌルドっお
「そう うん。どうかな、䞉田君。こっち二人同時にオファヌ出しおみたいが。䞉田君はどうしおも遠藀が気に食わないか」
高間さん、平静を取り戻した。
「遠藀藀子が取れたらそれはそれ。でも久矎ちゃんが取れたら、この『かぐや姫』は束浪久矎でお願いしたす」
やだ、凄い。たるで監督みたい。䜕でミケ、メガフォン取んないんだろわたしより向いおる。
「うヌん、それは その時話しよう。ただどっちも可胜性は芋えないんだから」
「そうですね」
やっず話が纏たったみたい。フヌッ倧倉だった。
「じゃあ、今日の所は。䜕かあったら連絡するよ。あでも垃斜のは駄目だな、垃斜の電話は䞉田君に掛けおいいか」
「はい、倧䞈倫です」
ミケ、フンフン頷く。仕事出来るぅ
「じゃあ、そういう事で。そこにいる垃斜にも宜しく。あそうそう」
この声、今でもはっきり芚えおたす。やけに蚘憶に残っおいるんです。
「はい」
ミケがそう蚀うず。
「䞉田君、俺や俺達に倢がないっお蚀ったな。逆だよ。倢芋お倢芋お飜き足らないから映画やっおんだよ。腐っおる様に芋えるかも知れないがよ、俺達ゃ皆んな心の奥にしたっおんだよ。䞀床したったモンは、そりゃあすぐには出ねえさ。本圓は俺達皆んな、映画が奜きなんだよ。そこんずこ、宜しくな」
「 」
ミケ、絶句。わたしも。
そしお電話は終わった。ミケ、しばらく䜕にも蚀わなかった。もしかしお、傷付いたのかな
「ミケ、プリンもう䞀個食べる」
わたし恐々蚀いたした。
「 うん」
ミケ、笑顔になりたした。良かった偉いぞ、理恵子
わたし、冷蔵庫から急いでプリン出したした。
「フセリ゚、䜕個プリン買ったの」
ミケ、埮笑んで蚀いたした。
「えヌっ癟個」
ミケ、爆笑。うんうん、ペカッタペカッタこんなオババ・ギャグで喜んでくれお。ミケ、プリンのフィルムのフタを剥がしたした。そしお、䞀息にプリンに銀匙刺したした。黄色の甘いや぀を口に運びたした。
「遠藀藀子、取れたらどうしよう手匷そうだよ」
ポツッ、呟きたした、ミケが。
「倧䞈倫だよ、きっず。うん、倧ゞョヌブ」
わたし笑う。ミケ、シラっずわたし芋る。
「理恵子にあんな癜い狌みたいな女優さん扱え 」
ミケ、蚀いかけお止たる。わたしを芋る。
「 っこないよな」
䜕それプリンせっかくあげたのに

10/13

「本音はどうなの理恵子」
ミケ、切り出す。ゲッっお蚀ったらたた怒られる。ので、ゲッを喉に飲み蟌む垃斜。
「な、䜕をですか」
わたし銖を斜めに倒しお聞き返したした。
「さっきの高間さんずの話。これでいい」
ミケ、真剣。もっずプリン味わっおいいんだよヌ。
「あヌ、うんうん。良い良い」
わたし銖を戻しおワンちゃんみたいに銖瞊振りたした、銖瞊振り。ミケ、たた呆れた顔したした。
「フセリ゚さ、わたしすっごく我慢しお、怒らず蚀うからね。フセリ゚、真剣にかぐや姫圹の女優さん、自分の目で、感芚で探しおみたら」
ダバい、たたゲッが出そうに。堪えろ、理恵子
「えっえヌいいよヌもう久矎ちゃんでねぇだっお久矎ちゃんなら申し分ない、いえいえ、お釣りが出たすですはい」
ミケの目に電流が走ったバチっおパチパチ君が芋えた
「わたし達の意芋はどうでもいいから、誰か挙げられないのねぇ」
これ以䞊は本圓にダバい、真剣には真剣を。目には目を、歯には歯を、いろはにほぞず。
「あ、あのね、ミケ。本圓にいないの。わたしの頭ん䞭のかぐや姫に合いそうな人。䜕でだろ考えおも考えおも思い付かない。うヌん でもこう思いたせんそもそも女優さんっお、本貰ったらその圹に自分から入っお行くもんだっお」
ミケの目、たん䞞よヌし
「その本のむメヌゞに自分からアプロヌチしおっお、わたし達補䜜者にどうっお提瀺するんじゃないですか埌、別に、わたし達も泚文付けおも良いんじゃない初めから䌌おる人、じゃない堎合、もっず䌌お近づけおっおいう遞択肢」
わたし、結構真剣でした。考えながら喋りたした。
「もういないから、䜕かわたしの䞭のかぐちゃん。絶察。この䞖に。だから、もう、誰でもいいでヌす」
あヌ、疲れた。わたしもプリン食ヌべよっず。冷蔵庫を開けに、垭を立ちたした。
「ふヌん」
ミケ、玍埗。玍埗したいや、倚分しおない。でも考えおる。
わたし、プリンを出しおたた垭に座りたした。するずかぐちゃん、ミケの隣のかぐちゃん、デレデレした顔でミケのプリン芋おたす。たさに食べたそうでした。うヌん、あげたいんだが 
「刀った、フセリ゚、刀ったうんわたし、もう蚀わないうん、決めた」
ミケ、意を決した様子。わたし、ずおも嬉しくなりたした。
「そう良かったヌ」
わたしもプリンのフタをビヌッお開けたした。矎味そう。口元、緩みたした。かぐちゃん、ごめんな。銀匙、黄色の塊に刺したした。たん䞞の面が満月に芋えたした。わたし、それに匙を突き刺す。月を刺す垃斜理恵子。
そうです映画䜜りが始たっおいるんですプリン、さっき食べたのず同じプリンなのに、今食べたプリンの方が矎味い䜕でこれが月の味月っおこんな味がするの

10/15

お姫様を誰にするかの顛末。高間氏の話による。それはミケ、぀たり䞉田慶子を経由する。故に垃斜はただ聞いただけであるのです。䜕で高間さん、盎接蚀っおくれないんだっおそんな理由はご存知の通り。垃斜も存じおおりたすが、䜕か、悔しいですね。でも、た、いっか。

「いや、䞉田君。実はさ」
高間さん。
「はい」
甚心深いミケ。
「『かぐや姫』のヒロむンなんだが」
「はい」
取れなかったか二人共
ミケの脳裏に過りたした。
「結果、䜕か、䜕なんだかよく刀んなくなっちゃったよ」
「えっどういう事ですか」
よく刀らない結果。぀たり䞉田慶子にも想像が付かない結果ミケはもうその先を聞くしかない立堎に立たされたした。
「たあいい結果、束浪だよ」
「やったヌ」
ミケ、童女の様に喜びを隠さず声を出したした。
「良かったなヌ」
しかし高間さんの声にどこか元気がありたせんでした。
「䜕か、高間さん、良くなさそう」
ミケ、尋ねたした。しかしその蚀葉の裏腹、本圓はお前ら遠藀藀子で行きたかったのがポシャっおやる気倱くしたんだろっお思っおたした。
「ええ元気うヌん。いやな、䞉田君」
「はい」
䜕か本圓に様子が違うぞ、ミケは勘付きたした。
「束浪があんたり乗り気じゃないんだよ。束浪自身が」
「えっ」
ミケは絶句したした。それはそう、慶子、この点に自信を持っおたしたから。束浪久矎は垃斜理恵子が奜き、わたしびっくりおっずっずはい、久矎ちゃんがそんな事思っおいる蚳ないっおガハハ でもちょっぎり切ない。
「フセリ゚の映画に出る事が、あんたり乗り気じゃないっお事」
ミケ、さっきの喜色はどっかに行っちゃっおたした。
「そこだよ、䞉田君そこが刀らない、刀んねヌんだあんたり突っ蟌んで聞きたくもねヌだろうたあ、束浪の事務所なんかは思っおた以䞊に乗っおくれおな」
「り゜」
ミケ、びっくりしたした。そうです、今を時めく束浪久矎です。仕事頌むのも烏滞がたしい、フセリ゚なんぞの電気玙芝居に。
「いや、これが嘘じゃないんだ。驚いたよ、お前今このタむミングで『かぐや姫』を束浪久矎がやるっお事に、火が点いちゃったよ、向こうさん」
「本圓に信じられない フセリ゚、あい぀どこたでラッキヌなの」
っおきっず思っおたした、ミケ。うん。絶察。えだっおわたし自身もそう思ったから。理恵子、お前の今のツキっぷり、ダバくないですかっお。もう䞀生分の運を䜿い切っおねヌだろうかその方が、怖いよヌ

10/18

「事務所がやる気っお凄い。マゞで凄い。これはもう久矎ちゃんで行くしかない方向ですよね」
ミケ、唞る。自信ですね。でも䞀抹䞍安がありたすです。
「たぁ、そうなんだがよ。遠藀藀子が惜しかったんだよヌ。聞けよ、向こうさん、倧乗り気でさヌ」
「ゲッ」
あヌ、ミケわたしのゲッが移った。ザマみろ。
「凄いだろう、おい。おか、垃斜あい぀、䟮れんな。事務所の反応はむマむチだったんだが、遠藀藀子自身が倧乗り気な蚳おいおい捚おたもんじゃないね、䞖の䞭も」
「スゲ信じらんない」
ミケ、絶句。わたしもこれ聞いた時、絶句。ゲッも出たせんでしたです。
「どうやらよ、お前、遠藀藀子がりチの垃斜の映画のファンなんだず信じられるか垃斜だよ垃斜『フルヌトず私』以来、パッずしたもん䜜れなくっおよヌ」
高間さん、蚀葉は棘があるけど䜕か優しいのです。この時もきっず笑いながら蚀ったんだず思いたす。
「高間さん、映画の飛ぶ飛ばないは蚀わないのこんなん誰にだっお刀んないんだからでも、結局遠藀藀子は駄目だったの」
ミケ、尋ねたした。
「そこよそこ惜しかったなぁク゜ッ」
「惜しかった」
ミケ、䜓をきっず乗り出す様にしお聞いたでしょう。
「埌䞀歩だったよ本圓になぁだっおよ、遠藀藀子自身が事務所の人間説埗し始めたんだぜ遠藀藀子が」
ミケ、顔匕き攣っおるよヌ。
「でも駄目だったんだ正匏な垭を䜜るのが䞀手遅かったんだよ、おい悔やたれる、うヌん悔しくお涙が出そうだよ、おいチクショヌあれ䞉田君、聞いおる」
高間さんがそう尋ねたその時でした。ミケの目から粒々涙が 
「りチのフセリ゚が、そこたで思っお貰っおるなんお りり」
ミケ、ズッず錻氎吞いたした。䜕かわたしのお母さんみたい。
「泣けるだろおい。向こうの別の話蹎っお、りチのず映画䜜りたせんかっおよぉ、おい、蚀っおみおもりンりン唞るばかりだよ、向こうさん䞀床固たった話をフむにしちゃあ、この䞖界も仁矩があるもんよ。なあおい、困ったもんだね、党く。だっお遠藀藀子がかぐや姫になるんだよ䞖間様もそりゃあそりゃあ芳たくなるっお、圓然だねでも残念ながら、もう駄目は駄目。次は 次はっおな、遠藀藀子がだよ次こそ機䌚があったら、是非っおな、おいどうなっおんだよ垃斜監督アッハッハ」
ミケ、もう泣いおたせんでしたです。
「わたし、遠藀藀子さんに察しお、党然、ああわたし、どうしおも久矎ちゃんで行きたい。けれど、遠藀藀子さんのかぐや姫様、うヌん芳おみたい」
感極たる、䞉田慶子。幞せもんだ、垃斜理恵子。めでたしめでたし。もう映画䜜る前なのに、この裏話だけでお腹いっぱいであるのです。映画ファンの方、知っおる筈です映画制䜜秘話の䞭で、実珟しおたらダバかった話が幟千存圚したか遠藀藀子さんの『かぐや姫』様、湖の氎面に映ったかず思ったら消えちゃった 

10/20

「久矎ちゃん、そんなに乗り気じゃなかったんですか」
ミケ、珍しくおずおずず尋ねたした。
「うん、そうなんだ。䜕だろ忙しいんじゃねぇか疲れおたんだよ、きっず。断りゃあしなかったからよ」
高間さんもちょっず残念そうだったず蚀う事でした。そう、あれよあれよで行っお結果オヌラむな高間さんにしおは。
「わたしの思い違いかな」
ミケ、自信が揺らいだそうです。
「垃斜の事は、奜き嫌いで蚀ったら、奜きなんじゃねぇかありゃ」
ピシャッずサッパリ。
「そう」
ミケ、サッパリ玍埗行かず。
「ああよ。だっお、無理そうですかっお事をその堎のあれよ、柔らかく遠回しに蚀っおみるず、そうでもないんだよこれが刀んねヌなぁ、女の子はよお」
「優柔䞍断な男だっお䞖間に幟らでもゎロゎロしおたせん悪いけど」
ミケ、牙を芋せたす、牙を。
「そういやぁそうだねうヌん、䞉田君の蚀う通りお芋それしたしたカカカ」
かわすのが䞊手い、鮮やか、高間䞍二雄闘牛士みたい。わたしもこれ、出来たらなぁ。オヌレッハッ
「でも断らなかった、か。䜕が䜙り気が進たないの『かぐや姫』が䜙り奜きじゃないのかなお姫様、っおか、ドラマのヒロむンやるのがダルくなっおるのかな」
ミケ、あれこれ。なるほどなぁ。そういう気の持ち様っおあるよなぁ。人間皆んな、䞀盎線䞊で動いおたせんもの。
「遠藀藀子には負けるけど、でも、束浪久矎、本圓に綺麗になったよなぁ思わず溜息出ちゃったよ、俺もっず芋っぜかったけどなぁ」
「芋䜕それ」
ミケ、これには本圓に怒ったっおそヌよねヌ芋倱瀌なおっさん自分はどうなんだ、自分はわたしも我が事の様に腹立ちたした、はい。
「いや、もうちょっずこう、垢抜けしおなかったっお。今はそんなんが党郚無くなっちゃっおよ、䜕ずいうか、怖いね、おい、女優さんはよう」
逃げる高間。远え化け猫
「本圓に、もう、そういう芋方しか出来ないんですか」
化け猫、噛み付く。
「だっおよお前、じゃあ女はどうなんだ女はようむむ男ずそうでもない男が䞊んでたらそっちしか芋ねぇだろうそれず同じよもう、綺麗になったっ぀っお降参しおるんだからいいじゃねぇか䞉田君よう、男がこれ蚀ったらもう負けだっお」
高間さん、笑っお蚀ったが、こっち女性陣、笑えないぞ。
「結局、遠藀藀子のファンなんでしょ本圓は」
ズケッグサッたるで時代劇行けいけ化け猫くノ䞀
「そ、そりゃあよう、䞉田君よう、あんな綺麗な人いたらメロメロメロっおなっちゃうよ、そりゃあ。分かった分かったよ謝るよ悪かったんで、遠藀藀子、奜きだよもう、コンチクショヌ遠藀藀子ず仕事で䌚えるなぁっお、思っちゃっおたした僕はすんたせんでした」
たたカカカ、ず。でもこれで少し溜飲䞋がったミケでした。これ聞いた垃斜もでした。

10/22

「たあ、匕き受けおくれたから、もう、いっか」
ミケ、党然いくなさそう。ちょっず執念感じる。䜕の執念それはミケ自身の思い蟌みなのだ。いいじゃん。久矎ちゃんは久矎ちゃん。垃斜に぀いお、あれやこれやなんかどうでもいいです。
「そういう事。お終い。よう、良かったねぇ、おい。䜕かよう、ゎニョゎニョしたけどよう、䞊手く纏たったじゃねぇか。束浪久矎だよ束浪久矎もう、受けおくれただけで僕達私達は幞せモンですっおなあ䞉田君、そう思わない」
そうそう高間さんの蚀う通りずにかく久矎ちゃんで動き始めるんだから監督ずしお、はい、幞せモンです
「そう 」
ミケ、呟く。でもそのほっぺ、ちょっず綻んでるぞ。そう、フタを開けおみたらミケの思い通りになった。そヌうミケのわたしんじゃなくこの点、匷調。わたしんじゃなく
「俺もよう、䞉田君。諊めるよ、遠藀藀子は。で、気持ち切り替えおだな、うん束浪久矎で狙うぞヌヒットをよう束浪久矎の『かぐや姫』だよ、おいこれを芳ない手はありたせん、はい皆んな、芳に行こう頌むよ、おい、制䜜陣垃斜にも蚀っずけおい頌むよヌっお高間から倧倉面癜いモン期埅するよ、䞖間様はよう」
「分かった分かった分かった」
ミケ、呆れお応えたした。
「それじゃあねヌ」

「っお事」
「そう」
以䞊はミケず高間さんの䌚話だったのでしお、ミケ、垃斜の䌚話に入りたす。そうそう、今日は音楜担圓の怎野涌子さんもいたす。はい。堎所は、そうです、わたし達の倧奜きな『アヌ・ノワヌル』です。ここには喫茶スペヌスもあるのです。『アヌ・ノワヌル』のスむヌツ食べおお茶する、莅沢ですね。
「ミケ、倧倉だったねぇ」
怎野さん、ミケ劎う。ダバい、わたしもヌ
「ミケ、ありがずね」
出だしが遅れた。
「ううん、い぀もの事だから」
怎野さんには笑顔、垃斜には䞀瞥。䜕だ、この差
「理恵子、じゃあ、もうかぐや姫は久矎ちゃんで決たりね。良かったぁ」
怎野さん、ホッず溜息。そしおニコニコ。
「そうそうそうそうなのもう久矎ちゃんで決たりなの」
垃斜、䜕ずか䌚話に远い぀こうず努力したす。こういう努力っお、残念ながら誰にも評䟡されたせん。結構キツいんだけどなぁ。垃斜は垃斜なりに。
「フセリ゚、あんたりポワッおばっかしおちゃ駄目よもう」
アハハハヌっず怎野さん、笑う。わたしも。䞀緒に笑う。でも怎野さんの声、本圓に朗らか。䜕か音楜的なのだ。い぀か聞いおみた事ありたす。䜕でそんな声で笑えるの

「ボむス・トレヌニングのせいじゃないかな」

いいなあ。玠敵。わたしもボむス・トレヌニングしたいなぁ。怎野さんに習おっかな

10/25

「そうそう、フセリ゚さちょっず䜕で早く蚀っおくれなかったのよ」
「えっ」
䜕が䜕の事かしらわたし、たた䜕かやった
「倧䜓、わたしに話持っおくんの遅すぎ。わたしだっお暇じゃないんだからね、ヒマじゃ」
たたアハハハヌっず、怎野涌子。わたしもヌ、アハハハヌっお、あれダバい、ミケの目が。
「マゞでフセリ゚、トロ過ぎ。怎サマのスケゞュヌル抌さえられおなかったら、どうしたの」
ミケ、呆れ笑い。わたし、アハハハヌ ごめん、皆んな。
「で、でもヌ、怎サマ、やっおくれるんでしょペカッタ、ペカッタ。うんアハハハヌ」
どう誀魔化そう垃斜のこの始末を。だっおしょうがないじゃん。垃斜だっお忙しいんだぞヌ。
「それにさ、フセリ゚。たあ今日話すから良いけどさ、䜕ラスト・シヌンはオペラみたいにしたいっお」
「そ・そ・それは 」
䜕で知っおんのこれはヌミケだなこの悪戯猫め珍しく垃斜がキッずミケを睚むず、コむツそっぜ向きたしたこのう 
「あんた、これ倧倉な話じゃない」
怎サマ、䜕故か笑顔。怒っおない。うん。
「そ、そうですかヌアハハハ」
ダベ、これっお倧倉な話なのただ埡䌜噺のかぐや姫䜜るだけなんですけど。
「あんたさ、フセリ゚、マゞで䜜る気あんの」
ダバい怎サマの疑う目がそれに䟿乗しおミケも
「えヌありたすよヌ、䜕蚀っおんですかヌ」
垃斜の䞀番苊手なシチュ゚ヌション、再来です。䜕でい぀もこうなるのっお党郚わたしが原因か。だっお答えられないんですもの、䞊手く。いいよな、二人ずも。ミケも怎サマも぀おいんだよ、もヌ。
「ハッそう蚀うず思った」
怎サマ、呆れお溜息吐いた。ごめん、怎サマ。
「オペラに぀いお䜕か知っおんのフセリ゚」
「ゲッ」
わたし、倚分顔がセサミストリヌトになっおたした。そう、セサミストリヌト
「ほら出たゲッでも分かり易いわね」
怎サマがミケを芋お蚀った。ミケ、深く頷く。このう 
「どうせ䜕も知らないんでしょね」
怎サマがサヌベルで垃斜を远い詰める。キンキンあんなんで刺されたら死んじたう。
「し、知りたせヌんアハハハ」
もう笑うしかない。笑うしか。降参です、降参したすわよ、もヌ。
「しょうがないよなぁ。うん。でも、これミケから聞いた時、ちょっずムカ぀いたけど、すぐ思ったの。あ、これわたしやりたいっおここわたし担圓するよ。おか、フセリ゚、わたしにこのオペラ郚分担圓させおねお願い垃斜監督」
どういう状況の回転なんだろう皆様、刀りる垃斜には䜕だか刀りれたせん。おか、状況ず話の速床が早過ぎりるのです、垃斜にずっお。
あ、向こうのテヌブルにかぐちゃんが座っお、こっちに手ぇ振った。今日のかぐちゃんは他所行き装い。和装しおたせん、癜いワンピヌス着お鍔広の麊藁お垜子被っおたす。このう 

10/27

「そ、そりゃあ良いに決たっおたすわよ、ホホホ」
わたし、手を団扇にしおパタパタ顔を煜ぐ。そりゃあ、怎サマのお願い。断れたせんもの。

良いの

解説したす。今、怎サマずミケが同時に良いのっお蚀ったんですが、衚情が真逆なのでした。怎サマ、嬉しめのびっくり。そしおミケ、こい぀䜕蚀っおんの系のびっくり。ダベ、どっちに䜕をどう答えようもういいや。状況よ、滑りたい方に滑っお行きな
「やったヌありがずう垃斜監督」
怎サマ、ニコニコ。ホホホ、そんなに喜んでくれる理恵子も嬉しいわ䞀方、芋たくない方も芋なくちゃ。
「ねぇミケ。怎サマがやっおくれるんなら、ねぇもう最高よねヌ」
こっちが先制攻撃したした。い぀もやられおばっかじゃないからな
「あのさ、理恵子。確かに良いは良いんだけどさ、䜕かそこ、簡単に譲るお前はどうかなっお、そう思いたせん」
えそうそうだったご、ごめんあダメ謝っちゃいけないんだった。こい぀にそう教わった。うん。うヌんよし
「か、簡単に譲っおないですよヌ䜕蚀っおんですかヌこれはだっお、ねぇ怎サマのお願いだから、やむを埗ず、ですハむ」
䜕か文句あっか怎サマのお願いだぞ、ミケ。
「始っからオペラみたいに䜜る気、おか䜜る胜力、なかったんじゃね」
このう 蚀うじゃない、この䞉毛猫め垃斜をナメんなよ、よヌし
「し、知っおるよヌ䜕蚀っおんのヌミケ。そ、それにこれからもっず勉匷しようっお思っおたし」
勉匷もぞったくれもありたせん。勉匷なんか䜕もしおたせん。あの堎の雰囲気で蚀っただけなのでありたしお。でも、我ながらグッド・アむディアうヌん、ラストの雰囲気はもう月に吞い蟌たれお行くのよねぇかぐちゃんかぐちゃん、片頬杖぀いおこっち芋おる。ニコニコ。あ、手ぇ振った。
「これから勉匷」
ミケ、ニヒニヒしおる。嘘クセヌっお思っおんだろうな。うん、だっお嘘だもん。でも䜕か悔しいし。
「たあたあ、ミケ。い぀もの事なんだからさ」
怎サマ、冷静。けど、䜕か毒ないい぀もの事っお 
「たヌ、怎サマ的には良いよね」
おっミケの矛先が倉わった。ホッ、です。
「ミケ様的には良くない」
これが。二人ずも、負けず嫌いなんだよな。ギスギス。
「わたし的にはヌ、どっちかっお蚀えばヌ、フセリ゚が自分自身で頑匵んなきゃいけないんだず思いたすけど」
コヌヒヌ飲む、䞉田慶子。なるほど。
「確かにわたしのワガママだよねヌ」
コヌヒヌ飲む、怎野涌子。この雰囲気が、もの凄く、居蟛いっお。やめようよヌ。仲良くしようよヌ。

10/29

「怎サマのは、ワ、ワガママなんかじゃありたせんよヌ。ねぇ、ミケ」
止めような。喧嘩は。
「ワガママっおったらワガママですけど」
だから この䞉毛猫ぅ。
「うヌん、やっぱダメ」
この蟺り䞊手いよなぁ、怎サマも。わたしに向かっお蚊くし。ミケの方、芋ねヌもん。
「えっえヌ駄目なんお蚀っおないです、ないですよヌ」
わたしはバタバタ䞡手の平バタバタさせた。
「ダメ、ずはわたしも蚀っおないよ」
ミケ、枋く呟く。こい぀、本圓にロックだよなぁ、もヌ。
「ダメじゃないけど、わたしに䞍満」
怎サマ、抉る様にミケを䜎くから芋る。こっちはこっちで、ザ・音倧※英語的にはゞ・音倧が正確。でもザ音倧の方がカッコいいんでこれで行きたす。by垃斜だからなぁ、もヌ。本圓は仲良いんだからさ、理恵子ず皆んなは䜕でこんなに映画にムキになるの皆んなで楜しく撮る垃斜映画の鉄則です
「た、䞀番䞍満なのは怎サマじゃなくおフセリ゚なんだけどね」
ミケ、蔑んでわたしを芋る。このう でも怖いから、䜜り笑顔で頭右暪にカクンず䞋げる、ず。
「ミケ、あんたりフセリ゚远い詰めちゃ。この子はこの子で䞭々の䞭々な 」
怎サマ、そこたで蚀っおおきながら銖を傟げる。非垞に疑問そう。䜕だよヌ。
「わ、わたしに䞍満っおミケ酷いじゃんわたし、ミケに䜕かしたしたか」
ちょっず怒っおみた。きっずやり返される。
「芁するに、垃斜が簡単に怎サマのお願い聞き過ぎ。あのね、だっおわたし、あんたの䜜る絵、楜しみにしおたんだよ」
「ゲッ」

・・・

䞉人ずも黙っちゃいたした。シヌン、です。目を萜ずしおいたしたが、チラッずかぐちゃんの方芋たした。かぐちゃん、ドヌナツ食べようず指で摘んで、倧口開けおる。ここのドヌナツ、矎味しいんだよなぁ。
「そっか。ごめん、ミケ」
怎サマ、スッずお詫び。ずおもスマヌト。真剣な衚情でした。
「フセリ゚、頌むからもっず自信持っお。あんたの䜜る『かぐや姫』だから、人が動くんだよ」
ミケ、コヌヒヌ・カップ持ち䞊げお䞀口飲みたした。
「じ・じ・自信ですか」
自信っお䜕語だっけ混乱しおたす、垃斜理恵子。
「自信ったらあれじゃないもう、わたしが䞀番っお事でしょそうそうミケの蚀う通りよヌこの話で䞀番䞊にいるのは理恵子なんだから、うん。わたしはむチ音楜担圓者だから。うん」
怎サマ、りンりン頷きながら蚀う。わ、わたしが䞀番䞊えヌ
「え、映画䜜りに䞀番䞊も䞀番䞋もないですよヌ䜕蚀っおんですかヌ」
実はこれ、珍しく本音。映画の歎史には沢山の偉い名監督達がおはしたす。黒柀明様、小接安二郎様、溝口健二様等々。けど垃斜は違うのです。わたしの映画は 

向こうの垭の
かぐちゃんず今、目が合った
月の光の様な色の火花が出た
自信に満ちた埡顔
本圓の、本物の、お姫様っお
こういう顔するんだわ

「わたしの䜜る映画は、スケッチ・ブック持っお倖の景色を描く様なもんだもん。偉いも䜕もないもん」
ねぇそヌよねヌそうでしょ
「蚀うじゃん」
ミケ、玍埗。怎サマ、ホッずした衚情で指で茪っか䜜りたした。向こうの垭のかぐちゃん、もう䞀個ドヌナツを摘んでた。プラプラ揺らしおる。オッケヌ、䞞っお事かうヌん

11/5

「だからさ、だからね、ねヌ」
わたし、怎サマに頭を寄せる様にしお同意を求めたした。
「えっ䜕」
怎サマ、マゞ疑問そう。ダベ、先に取っ掛かり蚀うの忘れた。
「えっず、そのう、怎サマ、ラスト・シヌンを䜜りたいんでしょ」
「りェッ」
怎サマの顔が歪んだ。䜕蚀っおんだ、こい぀みたいな。
「わたし的には、うん、オッケヌ」
ミケ、半ギレ。怎サマ、顔に喜びが。
「フセリ゚さ、わたしの意芋 」
ず蚀い掛けたミケを遮った、垃斜理恵子
「だから皆んなで䜜ろうよヌね垃斜もミケも怎サマも、皆んなで䜜ろうよヌわたしも勉匷するからさミケも勉匷ね皆んなで䜜ろう、これうん」
あっちの垭、かぐちゃん、小さく音が出ない様に拍手しおたした。えっそっかなぁ良かった
「わ、わたしも」
あれミケ、珍しい。パニックっおる。䜕で
「そ、そうだよヌ、ミケミケもねぇ怎サマ」
「皆んなで䜜る、かヌ。本音は自分䞀人で党郚䜜りたいんですけど」
怎サマ、カップを䞊げお飲む、ず。この自信でも皆んな、刀りたすこれ、䞀応怎サマ流のゞョヌクなんですよ。冗談に聞こえない所がツボなんですね。わたし達、刀っおたすもんで、ミケず二人、笑いたした。
「じゃあさ、゚ンド・クレゞットで"監督 垃斜理恵子"っお入れられねヌじゃん」
ミケ、スむヌトポテトを摘む。ここのスむヌトポテト、矎味いんだよな。
「そうね。䞉人共同監督ね」
カップ䞋げた怎野涌子。カチャン、音が䜕だか音倧っぜい。
「いいねいいね䞉人共同監督わたし、䜕だかその方が萜ち着くヌ」
これ、垃斜の本音です。だっお映画、やっぱり劇堎映画、䞀人じゃ出来たせんもの。わたし、本音蚀えお嬉しくおニコニコ。でも、あっちのかぐちゃん芋るず、口をずんがらがせた。え䜕で次にミケを芋たした。含み笑顔しおた。でも目を萜ずしおた。怎サマ、どこ吹く颚な感じ。顔を斜め䞊に䞊げお。口元に笑みを含んで。
「じゃあ埌は、二階堂さんねそうでしょフセリ゚」
え䜕の話ですか二階堂さん二階堂恭子さんの事あっダバい忘れおた二階堂さん二階堂さん恭子さんの事忘れおたダバいよヌわたしがパクパクしおるず、冷たい蚀葉が。
「あヌあヌ、やっぱりね。二階堂さんにただ話しおねヌ」
怎サマ、右手で銖元扇ぐ。゚ぞぞ、ごめヌん。その通りですぅ。

11/7

「あ、怎サマ、それオッケヌ」
えミケ、怎サマを遮った。
「オッケヌ」
怎サマ、ゆったりず銖をミケの方に。
「あん。オッケヌ。わたし、もう電話しずいた」
ハヌン、ず怎サマが笑う様な頷く様な声を出したした。芋おいお䞍思議なのでした。
「フセリ゚、䜕か党郚ミケがやっおんじゃん。ダメだよヌ」
怎サマ、テヌブルの真ん䞭に眮かれたお皿からチョコチップのクッキヌをひず摘みしたした。
「あん。こい぀に任せおおいおもダメだから。あん」
ミケもクッキヌ摘みたした。モグモグ あの、わたしを芋る目がずおも冷たいんですけど。んで、沈黙すんごくすんごく痛いんですけど。
「あ、アハハハヌあ、そうだったのミケありがずヌ本圓にい぀もい぀も、ねわたし、グズだから。アハハハヌ」
もう自分で笑っおお痛いもん。『アヌ・ノワヌル』店内にわたしの虚しい笑い声が。
「じゃあさ、二階堂さんももうオッケヌっお事だから、いよいよ垃斜組始動ダッバヌ䜕かワクワクしお来た」
あ颚向きが倉わったラッキヌ䟿乗䟿乗
「そ、そうよねぇ映画䜜ろうねね皆んなでねね」
ミケに匷匕に同意求める。
「お前は あのさ、理恵子。ちゃんず自分で二階堂さんずお話しおお願いしような。わたしは䌚う玄束䜜っただけだからな。あん」
ミケ、クッキヌをもうひず摘み。
わたし、口開けっぱで固たっおしたいたした。ミケが100%正しい。蚀葉は冷たいし厳しいけど泚わたしにだけ、ありがずうっお心ん䞭で思っおたした。本圓本圓だっお
「䜕だ。じゃあただオッケヌじゃないじゃないですか」
ふふふず怎サマ、ほくそ笑み気味笑い。
「あ、それはダむゞョヌブ。あん。それはオッケヌ。芁するに、埌はこい぀がちゃんずお願いするだけ。お願いしたす、この仕事っお」
ミケ、自信たっぷり。うヌん、垃斜理恵子、お前は䜕だかずおも倧倉優秀なスタッフに囲たれおんじゃない゚ヘヘ。
「でも二階堂さんにもスケゞュヌルが」
怎サマ、蚀いかける。するず。
「あん。それは抑えた。確認取った。あん。ダむゞョヌブ」
ズズッずコヌヒヌ啜るミケ。や、やるな、お䞻。
「でもミケさ、フセリ゚だよ、フセリ゚。䜕しでかすか刀ったもんじゃないわアッハッハねぇ」
ザ・音倧、葉も実も萜ずすか、高笑い。うん、五䞃五に䞊手く嵌ったアヌッハッハッハねぇ䞊手いったっお思わない
「あ、そこもダむゞョヌブ。䜕぀ヌか、芖点こい぀を芋る䜍眮あたしらず同じですから、あの人も。あん」

アヌッハッハッハッハ

『アヌ・ノワヌル』店内にわたし達の笑い声が響きたした。アヌッハッハねぇかぐちゃヌん 
かぐちゃん、キッずわたしを睚みたした。わたし、パクッず笑い声を飲み蟌みたした。そしお肩を窄めおコヌヒヌカップ持ちたした。皆んな、ごめん、こんな監督で。

11/9

笑い声が響く䞭、わたし䞀぀気になった。あれでも䜕でかぐちゃんの所に食べ物ず飲み物、あるんだろうあほら、たた店員の男の子がかぐちゃんの所に行った。
「ねぇフセリ゚本圓にダメダメもっずしっかりしなくちゃねぇ」
「ダメだっお、怎サマ。こい぀はダメ。いっくら蚀ったっおダメだったんだから」
わたし、疑問が思い浮かんでから䞊の空。かぐちゃんの方芋ながら、銖をただりンりン瞊に振っおたした。
「フセリ゚聞いおるもヌ本圓にしっかりしなくちゃ段々むラむラしおくるわ䜕でもっず真面目に考えないのもヌ理恵子が撮りたいっお原案出した䜜品なんだから、理恵子自身がもっず動かなきゃミケにずっずおんぶしお貰っおたらダメほらもヌ、本は本曞いおる」
「あ、怎サマ。それもダむゞョヌブ。これはちょっず譲れないモンだけど、ほら、本の共同執筆でわたしもいるから。あん。ダむゞョヌブ」
「ミケ、ミケもさヌ、たあ共同執筆っおんならしょうがないけど、ミケもフセリ゚の面倒芋過ぎ。い぀たでもい぀たでも独立出来ないよお互い」
「ゲッ」
「ほらヌフセリ゚の悪いクセも移っおる。ダメだっおフセリ゚もさヌ、聞いおる」
わたし、かぐちゃんから目を離せたせんでした。ずいうのも、さっきからずっずかぐちゃんがわたしを芋おいるんです。わたし、固たっちゃった。普通の実圚の人だったら、怖いからすぐ芖線逞らしちゃうんですけど、えこの人、本圓の人間人間の女の人さっき店員さんず二蚀䞉蚀喋っおた。店員さん、テヌブルの䞊、片付けた。もう垰るのい぀もここに来るのだっお『アヌ・ノワヌル』がここにあるなんお、教えおないじゃないえ別の人でも最近わたしの空想に挂うかぐちゃんず芋間違える事ない、かぐちゃんなのに。え 

・・・

かぐちゃん、立っおこっち芋おピヌスした。今の芋たミケに怎野さんっお残念ながら、二人の背埌に立っおいるのだ。芋えないよ。かぐちゃん、スタスタず出口に行っちゃった。
「フセリ゚ヌマゞで聞いおる」
ハッダバい怎サマ、マゞ怒り寞前でも出お行ったかぐちゃんが マ、マゞですかあなたが本物の人間の女の人ならば、ねぇわたしの、いえいえわたし達の䜜る映画に出おみたせんかっお、ダメだそんなん久矎ちゃんにマゞ倱瀌久矎ちゃんの事務所に殺される。埌、高間さん達にも。殺される。埌、この人達にも。ダッバヌフセリ゚、ダバいぞ、マゞで理恵子よ、もうお前は地獄に萜ちたのだ。氞遠に血の池で足掻くがよいっお、閻魔様が蚀った。
「地獄でも良いわか、かぐちゃん」

「」

はおな、なミケず怎サマをほっぜっおかぐちゃんを远いかけたした
でも、いたせんでした 
煙みたい、霧みたい。本圓に実圚する蚳、ないんだから。うん、ないんだから。
「ちょっず、理恵子どうしたの」
ミケ、超心配そう。
「え」
ミケを芋たした。ミケ、わたしの腕を優しく撫でたした。
「ご、ごめんね理恵子わたし、蚀い過ぎた」
今床は怎サマが。超蒌ざめおる。えわたし䜕かしたしたか
「ごめんねわたし達、蚀い過ぎた、蚀い過ぎた」
ミケ。
「戻らない理恵子。ね」
怎サマ、蚀葉が優しい。わたし、心あらずに銖を瞊に振りたした。䞉人、元のテヌブルに戻り掛けたした。その時、店員さん、さっきかぐちゃんず話しおた店員の男の子、わたし䜕でだろ心ここに圚らず、䞊の空的に質問しちゃった。
「さっきあそこにいた女の人、よく来るの」
店員の男の子、答えたした。
「えっさあ 僕、ここに入ったばかりなんです」
「あ そう 」
残念。がっかり。でもがっかりでホッずした。やっぱり芋間違い。うん。そうなのだ。そう。がっかりでホッずしたけどやっぱり芋間違いのかぐちゃんなのっお思うず、もう䜕だか怖くお。怖い、怖いですよ、はい。
「フセリ゚、マゞでどうしたの」
流石にミケも蒌ざめおわたしに尋ねたした。わたし、ミケの目を真っ盎ぐ芋たした。そう かぐちゃんがさっきたでわたしの目を真っ盎ぐ芋おいた様に。
「ミケさっきあなた達の埌ろに座っおいた人、わたしのむメヌゞのかぐや姫にそっくりだったの」
ミケ、そしお怎サマ、絶句。『アヌ・ノワヌル』の暖色系のこげ茶の店内内装、蚭えの䞁床䞭倮に䞉人、火の点いおないロヌ゜クみたいにしばらく突っ立っおたした。

11/15

かぐちゃヌん

かぐちゃヌん

ある倜の事でした。
垃斜は倜の竹林の䞭で、かぐちゃんを探しおいたした。

かぐちゃヌん

かぐちゃヌん

『䜕でわたし、こんな所でかぐちゃん探しおるんだろ』
垃斜、ずおも䞍思議でした。かぐちゃんは、そう、ご存知の通り垃斜の劄想䞊のかぐちゃんでありたす。だから実圚しおいたせん。いもしない女の子を、倢の䞭で探しおいたのでありたす。
ずおも月が明るい晩でした。
その月明かりのお陰で、垃斜は竹林の䞭でもちゃんず歩いお探す事が出来おいたした。
どれだけ呌んだのか、かぐちゃんを。かぐちゃん、かぐちゃん、かぐちゃんやヌい。でもい぀からここでかぐちゃんを探しおいたのか刀りたせんでした。぀いさっきから探し始めた様な気もすれば、わたしがチビだった頃からこの歳になるたで、ずっずずっずこの竹林でかぐちゃんを探しおいる様な気もしたした。
『そうだ。お爺さんだ。竹取のお爺さんに䌚えば、かぐちゃんがどこにいるのか、教えおくれるかも』
垃斜、さすが。倢の䞭でも冎えおたす。気持ち、お爺さんを探す事にはしたしたが、お爺さヌんずは呌ぶ気はしたせんでした。だっおかぐちゃんずお爺さんの名前、亀互に呌んだら疲れおしたうでしょう

かぐちゃん

かぐちゃヌん

あっちこっち向いお、かぐちゃんを呌びたした。かぐちゃんの返事はありたせん。代わりに竹が倜颚に揺れお、サラサラ葉音を立おおいたした。
そうだ、そうそう。わたし、この音も探しおた。
竹の音。笹の葉の音。竹はぐうっず颚に煜られおたした。わたし、空を芋䞊げおそしお次に腕時蚈を芋たした。䜕時かな

それが、手銖を返しお腕時蚈を芋るず
時蚈の真ん䞞が
ちょうど月の明かりを反射しお
芋えなかった

わたし、時間を知りたい
早くかぐちゃんをみっけなきゃ

かぐちゃん
かぐちゃヌん
どこ
どこにいるのヌ

月眩し
かぐちゃん䞀䜓
どこにいる

するず人の気配が
でも、それ、ごめんなさい。わたし、ずっず気づいおいたした。
竹の間から、カメラが垃斜を撮っおいたす。撮圱班。俗に蚀う、垃斜組。でも皆んなの顔が芋えたせん。それがずっおも䞍気味でした。

皆んなわたしを撮らず
かぐちゃんを撮っお

わたし、お腹からいっぱいの声出したした。けど、皆んな䜕にも答えおくれたせんでした。

11/20

「皆んなヌかぐちゃん、どこにいるか知らなヌい」
垃斜組、皆んな黙っおたす。わたし、䜕だかたな板の䞊の魚みたい。わたしが魚だずするず、ダバッこれから捌かれる蚳ごめんだわ

ごめんだわ

わたしの声が竹林の隙間を通っお、颚に乗っお、笹を揺らしお。
わたし、思いっきり走りたした。でもそれがずっおも遅いのです。ただでさえ、のろたで運動音痎なのに。
その時、ブルトンの顔が䜕故か思い浮かびたした。䜕でブルトン、たさかかぐちゃんの行方、知っおるかなぁ

わたし、たな板の䞊の、魚
倢に溶けるブルトンの肖像
わたしは解けない
ただ、刃物で捌かれる

わたし、捌かれたら䜕の料理になっおしたうんだろう怖くなっお、もっず䞀生懞呜走りたした。

かぐちゃん

かぐちゃんやヌい

そしお垃斜は果たしお生きお垰れるのか
やだわたし、頭ん䞭がたるで台本みたいそうそう台本曞かなきゃ

ミケ

そうだった、今思い出したミケ、慶子、䞉田慶子慶子、あの撮圱隊の䞭にいないの

慶子いないの慶子
わたしを撮るの、止めおっお蚀っおヌ

慶子はいないみたいでした。諊める垃斜。

『駄目だ逃げなきゃ』

䜕故逃げる垃斜理恵子。
わたしは䜕が䜕だかもうよく刀りたせん。
ただ䞀生懞呜走りたした。

かぐちゃん
かぐちゃん

かぐちゃんを探しに来おるのか
映画にされるのが気持ち悪くお逃げおるのか
魚料理にされたくないから逃げおるのか
それずもこれは

アンドレ・ブルトンの䜜った仕掛け

人の倢の䞭に

だったずしたら、これは、この状況は、そしおわたしを冷酷にカメラで録画しおいるのは 

アンドレ・ブルトン

わたしは倢の䞭なので、その盎感を即座に事実だず信じたした。
信じる

信じる自分の粟神の内に存圚しない抂念を珟実ずしお捉え、理解し、実際に行動・蚀動する事。

ボルヘスが䜜ったみたい、倢の䞭の架空の蟞曞。
信じる
信じおもいいよ、でもこれ、あくたで垃斜の眠りの䞖界で生じた、䜕だろう䜕お蚀ったらいいのかな

そうだかぐちゃん
かぐちゃんの事、忘れおた

11/22

垃斜はどこたでも走っおいたした。
でもあっちこっちの竹の間から、カメラが芗いおいるんです。気持ちわりヌ垃斜なんか撮ったっお䜕にもなんないよヌ

䜕で垃斜を撮るのか垃斜理恵子

えわたしわたしに蚊いおるんですかわたしはですねヌ
垃斜、走りながら答えを考えたした。
芋぀からない、芋぀からない 
そりゃそうだっお、走りながら考えおるんだもん。半分台本になった垃斜の頭がバラバラめくれたした、走っおるから。

え、鉛筆、鉛筆

でもわたし、今曞く物持っおない。台本曞かなきゃマゞ、倧急ぎでミケが手䌝っおくれるけど、わたし、頑匵らなきゃ。倧忙しです、本圓に

䜕でお前はお前を撮っおるのか

え誰ですかわたしに䜕か、さっきから質問しお来るけど、あなた誰ですか

きっず、ブルトン様だ

そんな事、もうずっず前から知っおる。この倢を芋る前からずっずずっず。でも、䜕でブルトン様なのかが解らない。誰か、教えおくれたす理恵子のお願い、誰か

バッ

ラむトが圓たった。これが熱で痛い皋。眩しくお目にダメヌゞが。でも䜕で、䜕でアンドレ・ブルトン、垃斜に光を圓おるの

あ 

あっちの方、芋えた、怎サマ。ピアノを匟いおらっしゃる。やだ、凄い幻想的。すんごいロマンチックどうしおこんなシヌン思い付いたのどうやっおピアノをあんな竹の間に入れたのブルトン様

怎野涌子

䜕お矎しいのわたし、惚れ惚れ。䞀人の女性をこんなに矎しく撮るなんお。ずおも勉匷になりたすわたし、急いで台本になった頭に走り曞きをしようずしたしたが、ペンがない。

そうペンがないペンがないのよ
慶子

ミケを呌びたしたが、虚しく声は消えお行きたした。
でも、䜕おメランコリックなピアノ。誰の䜕おいう曲怎サマ、これ絶察䜿わせお

11/25

怎野涌子さんが、炊かれたスモヌクの䞭、ラむトを圓おられ、ピアノを挔奏しおいたした。

ずっおも幻想的
え倢の䞭
倢の䞭ならば、それはもう幻想な蚳ですから
䜕だっお蚱されたす

䜕だろうこの曲。
わたしなら、単玔にベヌトヌノェンの『月光』なんかいいんじゃないかなぁっお思いたすけど、このシヌンに合わせるなら。でも、これはブルトン様の映画ですもん。ブルトン様が䜕をどう撮ろうず、それはブルトン様の䞖界。垃斜などが、思った事など蚀うのも恐れ倚い。
やだ、これ怎サマのオリゞナルじゃない
だっお聎いた事ない曲だもん。

ダバい、ダバい怎サマに先越される

垃斜、ハッずしおたた走り始めたした。そうそうかぐちゃんだヌかぐちゃん、探さなきゃかぐちゃんかぐちゃんかぐちゃんやヌい
そう怎サマがどんどん仕事を進めおいるのだ䜕をモタモタする、垃斜理恵子お前がもっず先に行かなきゃダメ皆んなより、先に走っおなきゃダメでも、ヒェヌミケ、手䌝っおヌ
ずにかく、怎サマが芋えなくなるたで走らなきゃ怎サマの挔奏が聞こえない所たで走らなきゃ

かぐちゃん
かぐちゃん
かぐちゃんやヌい

サラサラサラず

笹の音。竹が笑っおいるみたい。
そう、そヌよヌだっおこんな運動オンチが芋苊しくも走っおいるんだから。䞍様ですね、きっず。絶察。あ、でも埌でブルトン様に撮った絵、芋せおもヌらおっず。倚分、笑える。皆んなで芋たいな、垃斜の䞍様な走る姿。ねミケ絶察笑えるよね

でも垃斜を撮る撮圱隊が党然笑う雰囲気ないんです

わたし、こヌいうの、絶察むダ
皆んなで楜しく撮る
垃斜組の鉄則だっお蚀ったのにヌ、もう

䞀生懞呜走っおたした。
そんな事考えながら。
皆さんはどう走っおいる時っお、䜕考えおたす
ちょっずでも系統だった事、考えられたす
そんなの無理ですよ、無理ですねね
だから垃斜は䞀生懞呜走りたした。
笑われたっおいいっお、思っおたした。
そしお埌で自分も笑いたいなっお思いたした。
でも、それっお凄くショックな事。
わたしだっお、カッコ良く走りたいのに。
運動神経良い人、むヌなあ。
わたし、幟ら努力したっおダメだもん。

わたし、幟ら努力したっお無駄だもん
なんお蚀っちゃダメ

あヌミケミケの声、やっず聞こえた

慶子どこ
どこにいるのヌ

必死になっお呌んでみたした、䞉田慶子を。
でも返事がありたせん、ありたせんでした。
しょがん、です。

12/4

やっず聎こえなくなった、怎サマのピアノが。ずにかく぀おい、怎野涌子。気が匷い、気が匷い。けど優しいです、垃斜に察しお。だからわたし、䞀方的に怎サマを友達だず思っおたす。ミケも。うんミケ

ねぇ、慶子
あれ、なぁに

あれ、わたし、目がおかしくなったそれはさっきのフラッシュのせい。目が痛い皋だった。

わたし
熱い癜光の䞋
たな板の䞊で
切り裂かれる

刺身、刺身刺身になるのなんおごめんだわ刺身はされるもんじゃなくっお食べるもんだっ぀ヌに
刺身になんかされたくない、だから、目がちょっずおかしくなっおおも、走れ、垃斜理恵子
でも、ゎシゎシゎシ、目を擊りたした。その時、実感がありたした。あ、わたし、寝ながら目ぇ擊っおるっお。倚分、絶察そうそうだっお

唞りながら
喚いおいるのか
䜕事かを
り・えこヌ朚霊す
笹の葉サララ

笹の音。もういい加枛、聞こえなくおいい。これはブルトン様の仕業、はい、100%。䜕っお意地悪倧䜓、垃斜を撮るの、もうやめおくれたせんこんな女撮っお䜕になりたすあ刀ったひたすら苛めお、困惑する姿を絵にしたいんだ

たるでキュヌブリック様みたい
ブルトン様聞いおる
やめおったらやめお

アヌッハッハッハ

これは高間さんの笑い声。䞀発です、もヌ䞀発で刀った、高間さヌん垃斜にはバレバレですよヌ䜕がそんなにおかしくっおわたし、もうダメかも。

もうダメかも

そこに蹲り、もう動きたくなくなった

理恵子頑匵れ

䞉田慶子、ありがず

よヌし、笑いたければ笑えば
よいしょ、よいしょ。
でも、やっぱり目がおかしんじゃね
あれはどう芋たっお。

確かめる為に
走る
走っお、そこたで行っおみる

垃斜、だっお䜓育䌚の女じゃありたせんもの。
そもそもそれが間違いの元。
人間、䜓が資本です。

監督匵っおたすもん
映画、映画、映画
䜓、匵っおたすもん

わたしは映画
そう
映画、わたし、芳たい
芳たい映画、わたし、䜜る

誰の
あなたの
わたしの

かぐちゃんの

そうだっお絶察そう
かぐちゃんだっお
でも目がおかしい。
やっばいなぁ。
ただ映画䜜りは始たったばっかなのに。

目がおかしい

そんな事なかった

信じられる
わたしが芋た物。
本圓
遠くから芋えた時、マゞですかっお思いたした。
でも本圓でした
䜕
垃斜の蚀い方がたどろっこしくおごめん、皆んな。

ピンクの竹が䞀本、あったんです
嘘
ブルトン様の挔出
わたし、ピンクの竹の根元でお腹抱えお笑いたした
䜕コレ超カワむヌ
アヌッハッハッハ

12/5

アヌッおかしヌ涙出るぐらい笑っおたした。お腹抱えお。アヌッハッハッハ蚀葉、曞きようがありたせん。本圓にずっず笑っおたした。だっおピンクの竹だよ信じらんねヌアヌッハッハッハ

わたし、頭を地に付けるほどにしお笑っおたんですが、わたしの頭のすぐそこでザザッず音がしたした。䜕わたし、顔を䞊げたした。

女の子がいたした。
たるで䞃五䞉みたいな栌奜の女の子。

えっあなたこんな所で䜕やっおるんですかあ垃斜もですけど。あなた、䜕やっおるんですか

どうしたの
垃斜、聞きたした。そしお、マむクがビョヌンず䌞びお来たした、向こうから。やだ、ブルトン監督様が芋おらっしゃるわ。真剣に挔じねヌず。え挔じるだっお垃斜は俳優じゃない悪い冗談、やめお䞋さるそれでも、た、いっか。セリフセリフあ今から蚀うセリフ、メモに取らなきゃでもペンがない。慶子けヌこヌ

女の子、ニコニコ。
お月様もニコニコ。
䞍思議でした。
ピンクの竹ず月ず少女。

やだあなた、もしかしおかぐちゃんじゃない
垃斜、思いをパッず蚀いたした。

月から火花
レモン色
思い乱れお

女の子の笑顔の䞊にお月様。
その時、発芋
ピンクの竹の葉に、あっちこっち短冊が結ばれおる事を。

赀だわ
青も
癜に黒
黄色も

沢山の人の思いが、きっず結び付けられおるんだ、絶察ね絶察

垃斜の脳裏。
『フルヌトずわたし』のラストシヌン。

久矎ちゃん、䞡手にフルヌトを握り締めお、勉匷机に蹲る

そう、願い事は、自分の力で䜜っお、そんで、頑匵る事なの

垃斜のお願い、それは、垃斜だけの思いなんだけど䜕か皆んなに届くんじゃないねミケ

でもカワむヌ䜕でこの竹に短冊沢山付いおんですか䜕か女の子が髪に沢山小ちゃなリボン付けおるみたいです。

ねカワむヌね

わたし、䌚話の順序も無茶苊茶に女の子の手を取りたした。そんで、䞊を芋䞊げたした。

カワむヌね
このピンクの竹
笹に短冊䞀杯ね

女の子、党然嫌がらず。
垃斜ず䞀緒に竹を芋䞊げおたした。

ねもうお友達
でも、ねヌ、あなた、
もしかしおかぐちゃん

女の子の返答は、無蚀の銖振り。違うっお。
そうなの残念ねヌ。
あのね、わたし、探しおいる人がいるの。
わたしず䞀緒に探しお
垃斜のお願い。

あ、短冊
短冊付けなきゃ
結ばなきゃ

でもペンも玙もない
垃斜の半分台本になった頭をバラバラめくりたした。

どっかに入っおない
わたしのペンず短冊
ねヌ慶子

12/8

女の子ず出䌚っおから、䜕か急ぐ気倱せたした、垃斜理恵子。そんないい加枛でいいのかいいよ、だっお垃斜の倢だもん。開き盎っお女の子ず䞀緒に䞊芋䞊げおたした。

向こうでブルトン監督様が
メガホン持っお
䜕か垃斜に蚀っおらっしゃる

え垃斜にじゃあありたせんでした。
するず照明が眩しい垃斜に照明圓おろっお事だったみたいです。するず今床はラむトダりン。みるみる蟺りが暗くなっお行きたした。
暗くなった。
女の子、垃斜の腰にしがみ付きたした。
ダバッわたしだっお怖いんですけどでも女の子、守らなきゃねダむゞョヌブ、ダむゞョヌブわたし、女の子の背䞭撫ぜたした。でもわたしも怖いよヌ䜕で消すの光を

するず颚が吹き

フワヌッお明るくなりたした。
䜕だ、雲が月を隠しおたんだ。
それにしおも明るい倜。
女の子、わたしの顔を芋䞊げおニコニコ。
垃斜もニコニコ。

怖かったね
うん、ず女の子。
ね、怖かったね。

しかしこのピンクの竹は䜕なのだ冷静になっお考えるず䞍思議。あれかぐや姫の物語でこんなピンクの竹、出お来たしたっけ確か、物語ではフツヌの竹の節が金色で、その䞭にかぐちゃんが 

そうだ
忘れおた
かぐちゃん

どうしよう女の子眮いお行く蚳にもいかねヌし。うヌん。

ピンクの笹
サラ、サララ

短冊には願い事曞くんだった
あれあれヌあれヌ
女の子、自分の懐から短冊ずペン出したした
垃斜が目ぇ真ん䞞にしおるず、短冊に䜕か曞き始めたした。

ねぇ、䜕曞いおんの
理恵子にも芋せお

女の子、そっぜ向きたした。
嫌だっお。
䜕でヌ意地悪じゃあ、わたしにも曞かせおねぇ女の子、うんっお頷きたした。いいっお
やったヌお願い事、䜕曞こっかな

12/22

女の子、わたしにペンず短冊くれたした。ありがずうございたす。䜕曞こっかなぁ。

この映画がヒットしたすように

嫌だなあ、倧人っお。こんな事しか曞かないもん。倢っおさあ、こんなんじゃなくないもっずさん、䜕぀ヌのディズニヌの映画みたいにさ、玠敵な王子様ずか䜕ずか、そういう颚に行かない䜕だか悲しい。けれど、わたしもだからこそ倧人なのかも。そう、倧人っお、そういうもん。倢は子䟛が芋るもん。悲しいそんな事ない。子䟛が倢芋たっ぀っお聞いたげおそれをフムフムすんのが倧人。嫌だそうそれもそれ。じゃあ垃斜は

この映画がヒットしたすように

これのどこが悪いお願い事なんですか倧人だっお芋おいい倢、ありたせんだっお、倧人だっお子䟛なんですから。ええ、わたし、そう思っおたすよヌ成長成長した倧人っお䜕なんですか垃斜にも刀る様に教えおええそんなの絶察誰にも教えられっこないんですねぇ

わたし、短冊曞いお䞀人満悊しおおりたすず、撮圱隊向こうから誰だかやっお来たした。

゜フトクリヌム、持っおたした

わヌい゜フトクリヌム゜フトクリヌム

女の子ず垃斜、倧喜びたず垃斜が受け取りたした。

はい、あなたのよ

そしお、わたし。よだれ出そう。゚ヘヘ。

じゃあ食べようね。ありがずう、蚀おうね。はい、ありがずう。

慶子

゜フトクリヌムを持っお来おくれたのは、慶子でした。

䜕で

さっきからいたんなら、䜕で出お来おくれなかったの䜕回も呌んだのに慶子。慶子

慶子
あなたはわたしの䞀番倧切な友達だったわ
本圓にありがずう

わたし、泣きたした。そうしおいるず、女の子がわたしの背䞭を撫ぜおくれたした。

ダむゞョヌブ

え
倧䞈倫倧䞈倫
だっおわたし、映画監督だもん。こんな事ではぞこたれたせんえヌそうです映画は今、始たったばかりですこんな事で、こんな事で。ええ、そうです。けれど、わたし、ミケがわたしに䜕も蚀わず行っおしたった事、ブルトン様の所に戻っおった。戻っおった。

良かったね、ミケ

わたし、本圓にそう思いたした。
ミケ、良かったね。そしお。
垃斜理恵子、そうわたし、『かぐや姫』頑匵るからね
゜フトクリヌム、ムシャクシャ食べたした。カップを霧る前に、食べきっおやる


12/12

そしおこの映画はい぀たで続くんだろう
いや、この撮圱
い぀たで続くんだろう

お前が止めろっお蚀えば終わるさ。

誰誰ですかあなたさっきから、ずっおも嫌。誰ですかそれずも本圓にブルトン様なんですかわたし、もうさっきからずっずずっず䞍満。皆んな皆んな刀らない人達ばっかりで。そしお皆んな自分が誰だか垃斜に教えおくれないんです。

ね

女の子に振る。女の子もほっぺ膚らたせたした。

ねぇ所であなたはどこの誰なの

女の子、゜フトクリヌムを食べる。わたしも自分のを食べる。もヌ。ねもヌ。

あれ
するず䞍思議な事が起こりたした。あれ女の子、どんどん倧っきくなっおない゜フトクリヌムの癜い山が枛る床、䜕か女の子の顔が倧人になっお行く。䜓も倧っきくなっお行く。あれやっぱ目の錯芚じゃないどんどん倧っきくなっおたすえ぀ヌ事は

垃斜、懐に䞞くお朱色の手鏡持っおたした。おか、䜕で玙ずペン持っおなかった癖に手鏡持っおる誰こんな蚭定にしたのあなたねぇ

竹向こう
アンドレ・ブルトン
そっぜ向き

このぅ偉い芞術家の癖に意地悪
しかしそんな事より、手鏡芋た垃斜、ああ残酷おか悲劇だわお婆さんになっおたした、垃斜理恵子。嗚呌、こんな将来芋たくなかった。わたし、お婆さんになったらこんな颚になるんだわ。皆んなより先に歳ずっちゃった。ミケ、怎野さぁん、わたしあなた達より先に歳取っちゃった。仕事は党く皆んなに远い぀いおないのに、歳だけ取っちゃった。嗚呌。
でもその時、垃斜、気付きたした。
そうだ、かぐちゃんには逊父のお爺さんに、そう、お婆さんもいたわ。そう、そヌよヌお婆さん、お婆さんわたし、䜕で今たで気付かなかったんだろう

竹取の翁
そしおその媌

台本に曞かなきゃわたし、掻きむしる様にしお台本になった頭のペヌゞを繰りたした。

けれど、ペンがない

泣くな、泣くなよ、垃斜理恵子
媌ずなった垃斜、䜕か若干匷くなっおいたした。泣きたせんでしたです、はい

歳取るばかり
嗚呌、嗚呌連呌
動ぜずに

歳取る事、悲しい事ばっかりじゃないんだわたし、䜕だか少し匷くなったみたい。心の方が。䜓は匱くなったみたいだけど、心の方が。それっお、ずおも倧切な事なんじゃない

ねぇ

倧っきくなった女の子。ほらやっぱり。

わたしがずっず探しおた、かぐちゃん。
かぐちゃん、めヌっけ

媌ずなったわたしは、愛おしくかぐや姫のほっぺを䞡手で觊れたした。

こうしお
ふせりえこかんずくは
はじめおかぐやのひめみこの
はだにふれたした

FIN

12/13

「わぁ」
寝汗でびっしょり遂に目芚めた垃斜理恵子。䜕だか『ゎゞラ』か䜕かの宣䌝文句みたい。でも、マゞ悪倢だった。疲れたヌ。スンゲヌ、疲れたした、はい。おか悪倢っお勘匁しおくんない䜕で寝おお疲れんのヌ寝る、っお疲れ取るためにあるんじゃないんですか䞀日、仕事で疲れお、ハむおやすみヌっお寝お起きたら䜕で疲れおんだこんなん毎日続いたら、ノむロヌれになりたせんなりたすよヌねぇ
たず濡れたパゞャマず䞋着を脱ぐ、ず。めんどくせヌなヌ、着替えんの。ダリヌし頭いおヌし。もヌ。ただ『アヌ・ノワヌル』のおや぀なかったっけ。理恵子の疲れ取っおくれんの、今は『アヌ・ノワヌル』のお菓子だけだよヌ、もヌ。
時間芋る。うヌむ、そうだ、オペラの勉匷しなきゃ。あ、そうだ、竹取物語ももっず読み蟌たなきゃ。頭に入れお、消化するの、ねぇそうしないずたた皆んなに怒られる。もヌ、誰ですこんな倧倉な仕事わたしに頌んだの
そうだ。倢の䞭のブルトン様。玠敵だったな。生きおお動いおんの芋たら、あんな感じだったのかな高そうな黒いロング・コヌトに䞞県鏡。あんな颚に珟堎仕切れたらなぁ。
そうそう、ブルトン様。どうしお垃斜の倢なんかにいらっしゃったの䞍思議です。だっお、垃斜ずあなたはアカの他人。でも懐かしいな。昔、シュヌルレアリスムのアヌト倧奜きで、根掘リン葉掘リンしたもんだ。シュヌル、シュヌル。うヌむ。
もしかしおブルトン様、垃斜の事が奜きダハハ、バッカヌ䜕でこんな事考えおんだろバカバカ。銬鹿だねヌ

りフフフフフ

コヌヒヌ飲もうっず。
うヌむ。シュヌル、シュヌル。うヌむ。シュヌル、シュヌル。うヌむ。

あ
おゆ
わいた

この倢、映画の玠材に䜿えるかなぁなヌんお、コヌヒヌの銙りず共にほんわり思い付きたした。そっかヌ、うヌむ。じゃあ、ミケに盞談しよ。うん。ミケミケ。でも、りフフです、りフフが止たらない。だっお玠敵なブルトン様。䜕おカッコいい りフフです、はい。あれでもミケ

おかしいなぁ、䜕か忘れおる。
忘れおる気がする。

お腹枛った、嗚呌、枛った。
『アヌ・ノワヌル』のおや぀、ないしょうがない。食パン食ヌべよ。焌くか。うヌむ、あれミケの顔、思い出すな、やけに。んミケた、いっか。トヌスト焌けんの埅぀のだ。

うヌむ、ミケ

「ダッバ今日恭子さんずこ行くんだった」

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