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「背表紙のチカラ」の、はなし。#24

また一つ、馴染みの本屋が閉店してしまった。

本屋って、立ち寄ってオシャレな雑誌・新刊の背表紙を眺めるだけでも、
”時代の瞬間”を少しだけ読み取れるような、非日常で贅沢な意識を提供してくれる。歩くだけで価値のあるエンターテイメント、と言っても過言ではないと思っています。

その中でも、幼少期から家の近くにあった本屋は特別で。
キャラクター絵本に夢中になるところから私の記憶は始まり、
小学生になると少女漫画の面白さを知り、受験期には参考書を探し求め、
自分でお金を稼げるようになってからは、
旅行雑誌のコーナーに吸い寄せられるようになっていきました。

一つの本屋の中には、いろんな世代の私の思い出が散らばっていて、
それはコーナーごとに表情を持って、いついかなる時も、
変わらずに迎え入れてくれるのでした。

そんな近所の本屋がなくなってしまうと、
営業不振なら仕方ないね、では片付けきれない程に、
時間の流れの無常さをひしひしと感じて、
なんだかやるせ無い気持ちになってしまいました。。

話は少し変わり、
私はここ数年、文庫本は必ず紙の本で読むようになりました。
(本屋の売上に貢献したいのです!!と立派な大義があるわけではないのですが、、、)

それは、ある読書好きの先輩が「紙で読むと、作者の改行の癖や気遣いまでが見えて良いんだよね」と仰っていたからです。

文字サイズが自由自在に変えられる電子書籍は便利だし、私も日常的に活用していますが、
紙に乗って世に届くことを前提に作られたであろう作品たちの、
作者の細かな心遣いを余すことなく堪能できたら良いなと思い、
好きな作者のものは、紙の本を購入するようになりました。

そして何より、紙の本を購入した後には、
自分が選んだお気に入りの本たちを綺麗に並べた、自宅の本棚を眺めるだけでも、また心は少し豊かになるような気がしています。

本屋でも、自宅でも。
本の背表紙には、きっと不思議なエネルギーがあるのだと思います。

試行錯誤の末に辿り着いたタイトルを背負った、作者の意思のカタマリ。

本は、読む前からもう私たちの心を動かしている。
過言かもしれないけれど、そんな気がしてならないのです。

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