見出し画像

重い荷物も楽々移動。Gap, H&M, DHL等大手各社が導入を進める物流倉庫ロボット「Stretch」

ロボットの研究開発を手がけるBoston Dynamics社は、2022年3月末に同社の物流倉庫ロボット「Stretch」の製品版の販売開始を発表しました。
同時に、2022年の納品予定分は既に完売しており、現在は2023年分および2024年分の納品分の予約を受け付けているとも発表しました。

2022年の顧客には、物流大手のDHL社やPerformance Team社、また大手衣料ブランドのGAPやH&Mが含まれているといいます。

この注目のロボット「Stretch」はどのようなロボットなのでしょうか?
今回は最新の物流ロボットについてお伝えします。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。また弊社では最新ロボットの導入支援も行っております!今回ご紹介した製品に興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

1時間で800箱の荷下ろしを実現

「Stretch」は荷下ろし・荷積みを主要な機能としています。アームの先についた吸盤を使い、荷物を移動させます。「Stretch」は移動可能でアームのリーチも長く、荷物の移動が柔軟にできます。さらに、乱雑な積み重ねや落下した箱の回収など、複雑な状況下でも自律的に動くことができるそうです。

▲「Stretch」 Boston Dynamics社 youtubeチャンネルより

「Stretch」は段ボール箱からパッケージング用の箱まで、幅広いパッケージの種類とサイズに対応しており、最大約22.7kgまでの荷物を扱うことができます。また、「Stretch」はサイズがコンパクトかつ高度な移動能力を持つため、トラックや倉庫内の狭い場所でも稼働できます。事前のプログラミングも不要で、既存の倉庫に数日で設置することができ、すぐに使用可能とのことです。導入が簡単なのは嬉しいですね。

「Stretch」は1時間で最大800箱もの箱を移動させることができるそうです。稼働時間については、大容量バッテリーを使用すれば最大16時間稼働します。1時間800箱×16時間稼働と考えると、最大で12,800箱の荷下ろしができる計算になります。自動でこれだけの箱を移動させられたらとても便利ですよね。

ロボットで荷役作業の負担と危険を減らす

陸上での貨物の輸送機器(トラック、船舶など)への積み込み・荷下ろしや、倉庫やヤード等への入庫・出庫を総称した作業のことを荷役作業といいます。東京海上日動リスクコンサルティング株式会社の資料によると、荷役作業に関する災害のうち64%が人力での荷役作業中に起きたものだそうです。実際の災害事例を厚生労働省の資料から1つ紹介します。

被災者はトラックの荷台から段ボールを降ろそうとしていました。
しかし、荷台からトラックのリアバンパーに足をかけて後ろ向きで降りようとしたとき、足を滑らせ転落してしまいました。同被災者は保護帽を着用していなかったこともあり、頭部を強打し、その後死亡してしまいました。
 
このように、人力での荷役作業は危険も多い作業です。同資料によると、荷役作業時の死亡災害の原因では、墜落・転落と荷崩れが40.4%を占めているそうです。筆者が調べたところ、特にトラックでの荷役災害の例が多いように感じられました。

▲「Stretch」 Boston Dynamics社公式サイトより

「Stretch」はトラックからの荷下ろしをすることができるので、転落・墜落や荷崩れの災害を防げるのではないでしょうか。また、災害防止だけでなく、重い荷物を運ぶことによって腰や手首を痛めるリスクが減るメリットもあります。
 
従業員が健康で安全に働くことができるというのは素晴らしいことだと思います。また、荷下ろし・荷積みを「Stretch」がやってくれている間、人間はその時間を別の作業にあてられますよね。「Stretch」の導入は、生産性の向上も見込めるのかもしれません。

物流大手DHL社との協業

2022年1月26日、北米における倉庫の自動化をさらに進めるために、DHL社はBoston Dynamics社に1500万ドル(日本円約19億円)を投資することを発表しました。Boston Dynamics社は今後3年にわたり、北米の複数のDHL社倉庫に「Stretch」を納品する予定です。DHL社は「Stretch」の最初の商用顧客となりました。
 
「Stretch」は一部のDHL社施設において、トラックの荷下ろしから始まる倉庫内の複数の箱を移動させるタスクに導入される予定です。最初の配備に続いて、「Stretch」は倉庫の作業の流れをサポートするための他のタスクにも対応し、倉庫作業の自動化に貢献するとのことです。

▲DHL社の「Stretch」 Boston Dynamics社公式サイトより

Boston Dynamics社のCEO、Robert Playter氏はDHL社との協業に関してこう述べました。
「『Stretch』はBoston Dynamics社の最新ロボットであり、倉庫内の課題を解決するために設計されたものです。DHL社と協力して、倉庫作業の自動化と従業員の安全性向上を実現するロボットを提供できることを嬉しく思います。『Stretch』はDHL社の業務に大きな影響を与えることができると確信しており、このロボットが大規模に稼働する様子を見るのが楽しみです」
 
また、DHL社のSally Miller氏はこう話します。
「倉庫作業の自動化に投資することは、業務効率の向上とお客様へのサービス改善に重要な役割を果たします。Boston Dynamics社との提携により、当社の倉庫に最高クラスのロボティクスを導入できることを嬉しく思います。『Stretch』は、柔軟な自動化によって業界の課題に対応し、それを地域や世界に拡大することができるでしょう」
 
「Stretch」の第1弾のユニットは今春からDHL社の倉庫に配備され、DHL社は今後数年の間に段階的にBoston Dynamics社のロボットを追加し、複数の施設に広めていく予定です。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! 今回ご紹介した製品含め、ご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?