桜1

地方創生支援メディアはじめます!

冷やし中華には早いので…。

「人」が消える日本

「ブラックスワン」をご存知でしょうか。なんだそれ?…との常識を覆し、オーストラリアで黒い白鳥が発見されたことにちなみ、予期せぬ問題が発生することを指す言葉です。2008年の金融危機の際に大きく取り上げられ、今や経済報道以外にもよく使われるようになりました。

では「灰色のサイ」は、ご覧になられたことがありますか? ってあるに決まってるでしょ!…ですよね。私も、動物園で「実物はでかいなー」とあらためて驚きながら、遠間から眺めます。あれです。

最近その「灰色のサイ(グレーライノー・gray rhino)」という言葉が注目を浴びています。どこにでもいそうで、のんびりして見える灰色のサイ。しかしいったん動き出すと、その暴れる巨体を止められるものはいない。

転じて、多くの人が良く知っている問題で、普段はあまり意識されていないものの、危機として表面化すると大きなリスクとなることを指します。

日本は他の主要国と同様、多くの課題を抱えています。世界で最も早く進む少子高齢化、改善見通しの立たない国家財政、震災後に再考が迫られているエネルギー・環境問題、世界のパワーバランスが揺らぐ中、軍事・食料など安全保障に対する考え方も、従来と同じでいいはずがありません。


※写真はイメージです(サイ…?)


私は報道機関の経済担当記者として、日本を様々な角度から、幅広く取材してきました。バブル後の不良債権問題、ITバブル、世界金融危機、東日本大震災と復興予算の「絆」経済、世界的な低成長の長期化…。それらを最前線で眺めながら、高度経済成長、バブル崩壊、失われた20年を経て「この国はどこへ行くのか」を探し求めてきました。

ここまで取材を重ねた結果、私はそれを見定めるうえで、最も重要な鍵となるのは、地方経済の浮沈ではないか、と考えるようになりました。

急速な人口減が発生している地方経済をてこ入れせず、そのペースが加速していけば、この国が向かい合わなければならない多くの課題を解決する最大の「資源」であるはずの人々が、いなくなってしまう…。

人口減はすでに多くの集落を過疎へ引きずり込み、その波は地方の大都市をも巻き込んでいます。某国のミサイル発射や震災などは、発生時期がわからない未知のリスクですが、人口減はすでに、我々の目の前で発生している既知のリスク、まさに暴れ始めた「灰色のサイ」なのです。


スターウォーズとアベンジャーズ

初代の地方創生担当相を務めた自民党の石破茂元幹事長は著書の中で、現在の出生率から算出すると、西暦3000年には日本の人口がわずか1000人(1000万人ではない!)になるとの衝撃の試算を紹介しています。

20年の東京五輪が終わった後すら想像がつかないのに、3000年とはとても考えが及びませんが、実は日本は74年以降、人口を維持することが可能となる出生率(人口置換水準といいます)には一度も達していません。つまり、この問題は45年前から静かに、しかし着実に進んでいたのです。

人口減に即効薬はありません。たとえ急に出生率が上げることができたとしても、亡くなる方々の多さを含めば、人口は減り続けます。「向こう100年で日本の人口は半減する。そんなことは歴史上、例がない」。ある政府関係者の危機感を募らせた顔は、記憶に強く残りました。

地方経済再生の必要性は、人口減を緩やかにするだけではありません。大げさにいえば、これまでのような集権的、一極集中型の資本主義が岐路を迎えているように見えることからも、時代の流れに合致している気がします。

例えばポピュリズムが台頭する欧州。政策が手厚い仏を除く主要国では、人口減が日本と同じように悩みの種ですが、経済停滞の長期化は移民に対する反感を高ぶらせ、極右と極左が同時に台頭するという、異例の事態が発生しています。

多くの専門家が指摘する通り、英国の欧州連合(EU)離脱や米国でのトランプ政権発足などに共通して見られるのは、従来の体制に対する不満の爆発です。1%の人が巨額の富を得て、99%はその恩恵に浴せなかったグローバリゼーションに不信任を付きつけた、と言ってもいい出来事でしょう。

新たな問題は、その多くが従来のような左右対立では論じきれないものばかりです。日本でも原発や自由貿易協定(FTA)、性的少数者(LGBT)などに関する主張や考え方は、旧来の党派を超えたものとなっています。

その是非はともかく、中央集権的なあり方は次第にその役割を終え、今後は多様性や柔軟性に富む多極社会が到来するのではないか、と考えるに至りました。


※写真はイメージです(製作提供:5歳男子)


その考え方自体はさほど、新しくないかもしれません。しかし今は組織が、社会が、国家が、地響きをとどろかせながら、動いているように感じます。ダースベーターを頂点とする集権構造の大企業的なスターウォーズ型から、様々な個性を持つキャラクターが、それぞれの強みを生かしたチームとなって戦うクラウド的なアベンジャーズ型へ、着実に移行しています。


「時のふるい」で研ぎあげた本質を求めて

最後にもう1点──ここが最重要──ですが、地方創生が必要不可欠なものであると考える理由は、うらやましいからです。涙。

私は東京の特別区内で生まれ育ち、現在もその中で生活しています。小学校の頃は放課後に水筒を持って、デパートのおもちゃ売り場をのぞきに行きました。夏休みに帰る田舎もなく、真っ黒になってたくさんのお土産や昆虫を持って戻ってくるクラスの仲間をうらやましく思っていました。

そうした経験が底流にあるためか、私には地方文化に対する強い憧れがあります。パリで食べるステーキはともかく、普段食べる日本食に最もあうワインは山梨などの国産だと確信していますし、日本酒の独自酒米が各地で増えてきたことは、多様性やテロワールといった観点から心が躍ります(お酒の話ばかり…)し、「伝統技術」と聞けば尊敬という名のよだれが出ます。

都会っ子の私から見ると、地方は魅力的な宝の山々です。東京は何でもあるように見えるけれど、それは大抵どこからか持ってきたもの。しかし地方には、長いこと「時のふるい」にかけられて研ぎ澄まされ、人の心を魅了してやまない「本質」を突き詰めたものが、あちこちに存在しているように思えるからです。

それは美しい自然であったり、みずみずしい農産品だったり、伝承されてきた技術であったり、神様をお迎えするための儀式のようなものであったり、様々な形で、いたるところに、力強く存在しています。

おそらく地方創生は、そうした他にはない各地の魅力、独自性を戦略的に磨き上げ、その価値を求める人をたくさん集め、その状態を地域・世代間で自律循環させていくことが必須です。若者に受けそうなグルメやゲームのイベントを開催して、2日間だけ人を集めることでは、きっと街は興りません。

今回発刊する本誌は、そうした問題意識の下、地域活性化や地方創生に取り組む皆さんを応援するメディアになっていきたいと考えています。

当面は本業を抱えたままなので匿名です。記事数も限られてしまうと思います。それでも動き出そうと考えたのは、これまでお会いした地方創生に関わる方々の熱意や意気込みに、強く背中を押されたためです。

わたしもすぐその輪に加われるよう、鋭意取り組むつもりです。


地域の「結合(united)」に向けて

本誌の名前は「ユナイト・ジャパン(仮)」としました。


※写真はイネです


結合された状態を意味するユナイテッド、ではありません。地方の文化を、技術を、強みを3本の矢のように有機的に結合させ、日本だけではなく、世界にも誇れるものへと育て上げるお手伝いを、メディアの機能を使って支援したい、と考えています。

皆さんの身の回りに「こんな面白いのに知られていない!」取り組みがありましたら、是非とも教えてください。取材へうかがいます。皆さんが誇る故郷や地元に、お邪魔できる日を楽しみにしております。

ユナイト・ジャパン編集長 SKay


日本の地域を元気にしたい!あなたの街にも取材へおうかがいさせてください!