2023大学ラグビー番外編:U20フランス代表対U20アイルランド代表の試合を勝手に数値化して見てみた
みなさんこんにちは
どんどん大学カテゴリーの試合が終わってきてネタが切れそうな今本です
今回は7/15に行われたU20フランス代表対U20アイルランド代表の試合、チャンピオンシップの決勝についてレビューしていこうと思います
また、それに合わせて日本の現在地と見比べて、何が求められるかについても見ていきたいと思います
それではメンバー表から見ていきましょう
次にスタッツです
順番に見ていきましょう
フランスのアタック・ディフェンス
フランスのアタックシステム
基本的には自由なスタイルというか、特に10シェイプの位置に立つ選手の形態がまばらなような印象があります
日本戦の時も書きましたが、あえていうなら1−3−2−2が近いかもしれません
バックスに展開する時の1stレシーバーに関しても、基本的にはSOのReus選手が担当していましたが、12番のCostes選手や13番のDeportere選手が入ることもあり、柔軟なフォーメンションで組み立てているような印象を受けました
また、試合の組み立てを主に担当するのはHB団であることが試合の流れから見ても自明ですが、その中でも9番のJauneau選手が大きく寄与している様子が見受けられました
トップチームのデュポン選手の雰囲気に極めて近いプレースタイルを持っている選手であるように見えます
キックに関しても、バックフィールド間の蹴り合い以外に関してはラックからJauneau選手がBoxで蹴っている回数が比較的多かったように思うので、なおさらですね
細かい数値は後述しますが、全体的に見ても「フレンチフレア」「シャンパンラグビー」と形容されるような「ザ・フランスラグビー」といった感じのアタックシステムを組んでいたように思います
最初に述べたようにスタイルを総合的に見ると自由ですが、自由に見えてしまうほどその場の状況に合わせた適切な状況判断や意思決定に沿ってアタックを構築しているのではないかと踏んでいます
そもそものフットボールはカオスなものですしね
フランスのキャリー
こちらに関してはバランスよく、選手が伸び伸びとプレー・キャリーをしていたように感じました
システムそのもののバリエーション自体もあるとは思いますが、要所要所で必要な選手の適切な閃きによるキャリーが生まれていたように見えます
あえて言及するとすれば10シェイプでのキャリーがほとんどなかったことでしょうか
回数だけ見ると前後半を合わせても1回と、組み立ての基礎となるのは9シェイプであるように思います
実際、後半にかけて9シェイプでのキャリーは増えていき、前後半合わせると106回中20回のキャリーが9シェイプでのものとなっています
また、ピック&ゴーをする回数が他のチームに比べると多めということに言及してもいいかもしれません
前後半合わせても14回と数だけ見れば少なく感じますが、他のチームに比べると多いですし、ゴール前に限らず敵陣22mラインの近くからピック&ゴーが選択肢に入ってくることを考えると相手としては非常に守りにくいということが言えるかと思います
なぜなら、早い段階でラックの最も近いエリアにFWの選手を置くなどの工夫をしてピック&ゴーでのゲインを防ぐ必要が出てくるからですね
フランスのパス
正直なところ、パスの完成度を見ると他の国のトップチームと比べても遜色のないレベルまで達しているようにも感じました
バリエーションに関してもそうですが、選択肢の適切さや精度、相手の勢いを殺さない綺麗なパス、随所で見られるオフロードパスなど、極めてレベルが高いように感じられます
特にHB団の選択肢の豊富さ、テンポはには目を見張るものがあったように思います
中でもSHのJauneau選手のパスワークは素晴らしく、地面から素早くパスアウトすることもあれば、少し動きを入れて相手を寄せ切ってからのパスをするなど、相手をうまく翻弄することができていました
パス回数を見ていきましょう
前半こそ多くのパスが9シェイプやOtherに偏っていたりと、システムの始めや崩れたシチュエーションでのパス回数が増えていましたが、後半にかけてバックスラインへのスムーズなボール展開が増え、アタックのバリエーションの多さを示していました
特にオフロードの多さは顕著でした
ニュージーランドのような身体能力を活かして繋ぐようなパスではなく、前もってキャリアーの脳内でイメージを組み立てているかのように、コンタクトしてから繋ぐまでがスムーズでしたね
おそらくはそのように指導されているか、選手のボディコントロールが優れているかだと思います
パスの質に関しては先述した通りですね
フランスのディフェンス
成功率は驚異の90%超え(当社比)と極めて高い水準を誇っていました
アイルランドに2本のトライを奪われてはいますがタックル自体は成功しているため、ビッグゲインからトライを取られているわけではいません
両チームともにラインブレイクは3,4本とかなり控えめですしね
タックルの質に関しては欲を出せばもう少し改善することのできる要素はあるのかもしれませんが、FW戦・中央エリア・大外と大きなミスもなくディフェンスは完結していたので素晴らしかったです
特に大外のディフェンスに関して、両WTBが大きく外されることもなく、相手をしっかりグリップして完全に倒し切るところまで持っていっていたのも大きいかと思います
ディフェンスのシステムに関してはそこまで極端にラッシュアップしてくるわけではなく、基本的には少し流し目で相手の若干のゲインを許容するようなスタイルでしょうか
突出したとしても1人で前に思い切って出る程度であり、その周囲に生まれるスペースも周りの選手がカバーすることができていました
ブレイクダウンに関してみると、おそらくはシステム的にそこまでプレッシャーをかけない方針だったように見受けられました
もちろん必要な時は適時ジャッカルを狙ってはいるのですが、毎回スローダウンを狙うほど拘ってはいなかった印象です
アイルランドのアタック・ディフェンス
アイルランドのアタックシステム
基本的に10番のPrendergast選手を起点とした10シェイプを基礎とし、表裏をかなり積極的に使ってくるような印象を受けました
ポゼッションは公式記録だとほぼ同じくらいだったのですが、フランスがBKへの直接供給が少なかった一方、アイルランドは9シェイプからのスイベルパスやラックからの直接パスなど10番に多くボールを持たせているようなイメージです
また、10番に意思決定・状況判断の余裕を持たせるためか、Prendergest選手はそこまでスピードを持ってボールレシーブするというわけでもありませんでした
どちらかというとゆっくり前に出ながら複数あるパスの選択肢の中からチョイスするといった感じですね
キックに関していうと、キックによる競り合いやエリア獲得をそこまで重視しているような印象はありませんでした
数自体も前後半合わせて15回と、一般的な数値内に収まっています
アイルランドのキャリー
主にバックローの選手に強いランナーが揃っていましたね
よく言えば必要な選手が必要な時にボールをもらっていたということができるかと思うのですが、言い方を変えるとトータルで見た時の「パンチ」はなかったように感じました
パス回数が少し多いこともあってか、ポゼッションの割にキャリー回数が少し少ないような印象もあり、またビッグゲインへと至るようなキャリーもあまり見られませんでした
ラインブレイクも前後半合わせて4回、中でもランで切り崩したものは3回にとどまっています
とはいえ、そこまで強烈な選手がいなくてもこのような試合展開になったのは、フランスのディフェンスラインがそこまで上がってこなかったことに合わせて、ボールをもらうまでの各々のランコースやタイミングが良かったことにあると思います
シンプルにボールをもらって前に出るだけではなく、その角度やタイミングをずらすことによって、少しずつのゲインを実現することができていました
アイルランドのパス
キャリー・パス比に関して見ると、若干パスが他のチームよりも多かったような印象です
また、先述したように表裏を好んで使う傾向にあるため、結果としてパス回数も増えていました
しかし、ラインブレイクをもたらすような決定機や決定的なパスがそこまで見られなかったのも事実です
各プレイヤー・ポッドのランニングスピードが少し遅めということもあり、数回のパスでは相手をうまく切ることができないという事態に陥っていました
フランスの詰め方がうまかったこともありますけどね
回数を見ていくと179回のパスのうち44回(約1/4)が9シェイプへのパス、31回(約1/5)がバックスラインへのパスと、比較的バックスラインへのパス供給が多いことがわかります
また、バックドアへのパスが28回、バックスライン上でのシンプルなパス回しが23回と、表裏を使ったアタックに関係するパスの方が回数が多かったですね
パスの質はフランスに負けず劣らず良いものを見ることができました
もちろん各選手のレシーブ時のスピードがそこまで早いものではないというのもありますが、後方に流れたり相手のキャッチミスを誘発するような質の悪いパスは少なかったような印象です
アイルランドのディフェンス
ディフェンスに関しては若干の難あり、といったところでしょうか
フランスの選手が強い、ということもできるかもしれませんが少し姿勢を崩される場面が多めでしたね
流石にタックル成功率で10%もの差がついたらしんどいでしょう
システム自体はシンプルで一般的なシステムからそう外れたものではなかったように思いますが、フランスの選手の強さはもとよりボディコントロールやずらしの上手さに翻弄されていたように思います
日本がこの舞台に立つためには
この試合を見て一貫して受けた印象は「トップチームと戦術的な雰囲気が全くといっていいほど似ている」というところです
つまり、U20カテゴリーでもトップカテゴリーでも一貫したコーチングを受けていることが想像できるというわけですね
例えばフランスでいうとSHのJauneau選手とReus選手の試合の組み立て方やプレースタイルはトップカテゴリーのデュポン、ヌタマック両選手と似たような雰囲気でしたし、一方アイルランドはPrendergest選手にトップカテゴリーのセクストン選手に似た雰囲気を感じました
日本もおそらくは似たようなコーチング哲学を持っているとは思いますが、今のところ「一貫性」という面でユース・U20・トップカテゴリーについて同じ印象を受けるかというと、全くそうではありません
もちろん外国人選手の起用法や存在感など異なるものはあるかと思いますが、「日本流」「Japan Way」という意味で一貫した「これが日本のラグビー!」というようなスタイルはそこまで感じ取ることができません(今本ができていないだけかもしれませんが)
そのため、そういった点では少しヨーロッパの方が一歩先に行っているような気がします
まとめ
流石、の一言でした
強く、楽しかったラグビーでした
ここまで完成度の高いラグビーを見るとU20カテゴリーでも十二分に楽しむことができると思います
これから各順位決定戦に関してもレビューしていこうと思うので楽しみにお待ちください
今回は以上になります
それではまた!
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