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2024高校ラグビー:高校日本代表の試合を振り返る

みなさんお久しぶりです

つい先日、高校日本代表のイタリア遠征での試合が終了しましたね
結果としては1勝2敗、U19イタリア代表を相手にした試合に関して言えば1勝1敗で遠征を終えることになりました

そこで、今回はYouTube上で配信のあったU19イタリア代表との2試合を振り返り、「どのようなラグビーだったか」を考えていこうかと思います


高校日本代表スコッド

今年の高校日本代表に選ばれた選手は、表にまとめた通りになります
目立つところとしては、

  • 東福岡・桐蔭学園の選手が多い

  • 判明している限りでは関東圏に進学する選手が多い

  • LOは全員190cm超えと、全体的に見ても大柄な選手が多い

といったところでしょうか

前評判の範囲では桐蔭学園でも主将を務める城選手や東福岡の高比良選手、BKでは佐賀工業のHB団でもある井上選手と服部選手が良いとは聞いていましたね

FWの選手が大きく、BKの選手も何人か180cm超えになっていたりと、ランナー且つ良い体格をしている選手が揃っていた印象です

U19イタリア代表第1戦 : 20 - 22

高校日本代表のアタック

プレースキックの成否によって生まれた差といってしまう事もできるほど、競り合う試合展開になりました

印象としては少し小難しいようなフローでアタックをしているような印象があり、特にセットピース起点の動きに関しては複雑な動きをしていたシーンもあったかと思います
一方でポッドを使ったアタックでは選手に選択肢がそう多くはなく、相手としても絞りやすいというか、シンプルなキャリーに一貫していたようにも見えました

アタック全体を通じて言えるのが少し個人による打開の要素が強いようなラグビーを見せていて、短い期間でのチームの組み立ての影響か、キャリースキル以外の要素で勝負しようという姿勢は見えなかったように思います
ポッド様式のキャリーも多く見られていましたが、ポッド内の整備もそこまで見られず、少し走り込むベクトルやタイミングにズラがあるように感じました

ただ、後半にかけてアタックの水準は上がり始め、パスでアングルをつけることでアクセントをもたらすことができているようにも見えました
ペナルティをもらった後のラインアウトモールからのスコアなど、点を重ねる形というのも見えてきていたのではないかと思います

高校日本代表のディフェンス

全体的にディフェンスラインのスピードで前へプレッシャーをかけるようなスタイルのディフェンスをしていて、細かく見ていくとCTB以降の外側の選手が少し被せるようなディフェンスをしていたのが印象的でした
ただ、内側の選手との連携は少し不足しているような印象もあり、内側の選手の加減速に外側の選手が対応できていないシーンも散見されたかと思います

詰めるような動きをしているにも関わらず視野は少し狭めな印象で、対面の選手への過剰な集中のあまり先述した周囲との連携ができていないような印象です
ラックに視線が集中している選手も多く、今回の試合で大きくゲインを奪われた要素として「相手がラックを挟んで大きくサイドチェンジをしてくる」ような動きをしていて、それに対して逆サイドの選手のフォールディングやコミュニケーションが不足していた要素はあるかと思います

イタリア代表が表裏・ないしはポッドを絡めたアタックをうまく構築していたというのもありますが、ディフェンスの詰め方のレベル感のところで統一感がなく、イタリア代表側の壁役になる選手に何人もコミットしてしまったりしているシーンも見られたりと、ディフェンス全体としてもう少し視野やラインの構築のところにこだわる余地はあったように見えました

U19イタリア代表第2戦 : 36 - 27

高校日本代表のアタック

今回の試合では15番をつけた服部選手を中心にキックを先述の中核に置いたラグビーがうまくハマっていたように思います
距離をしっかり稼げるキックを蹴ることができているので、自陣で無理に前に出ようとしなくてもエリアゲームができるのが強かったのではないでしょうか

走力の部分でも相手を上回ることができているシーンも多く、「走り勝つ」という観点においては互角以上の勝負ができていたように見えました
一方でフィジカルの土俵に立ったシーンでは相手に強くプレッシャーを受けるシーンも目立ち、いかに自分達の土俵の上で戦うかといった部分が徹底できるかが勝負のキモになったように思います

セットピースからのアタックなど準備が伴うシーンではかなり組み立てたアタックをしていたように見え、それに関しては結構ハマっていたように見えます
一方で少しのタイミングのずれや角度のずれなどでうまく動かないシーンもあったように思うので、もしかすると戦術的なマージンはそこまでなかったのかもしれません

逆にセットピース以外が起点になったシーンではそこまでガチガチに組み立てている要素はなく、原則が厳密に決められているわけではないようにも見えました
オフロードパスのような組み立ての範疇にないプレーもうまくハマっていたことから、今回の試合ではある程度心の余裕を持った状態で試合に臨むことができていたようにも感じます

高校日本代表のディフェンス

今回の試合に関しても、とにかく前に出る勢いの部分で相手にプレッシャーをかけようとする意図が見え、揃って上がるという部分の精度に関しては第1戦と比べると改善し、精度が上がったように見えます
一方で個人が対応できるレンジ・幅感は少し狭いような印象で、自分の対応できるレーンから外れると精度がガクッと下がるように見えました

また、ラックから近いエリアでのキャリーへの対応に関しても若干後手に回っていたような印象で、相手がパスを重ねずにキャリーをすることで日本代表のディフェンスラインとイタリア代表のアタックラインとの間に空間がさほど生まれず、日本代表のディフェンスラインの持ち味でもある「スピードとモーメンタムを活かしたディフェンス」をうまく当てはめることができていなかったように見えました

そのため、シンプルなフィジカルの分野ではイタリア代表に軍配が上がり、近場での相手アタックから崩されるシーンもありました
フェイズが早い段階での「組み立てが生きるディフェンス」では落ち着いて止めることができていましたが、フェイズが重なると押し込まれてしまっていたり、そもそもの組み立てが難しい相手のキックリターンに対する対応など、全体での意思統一にブレがあったような印象もありましたね

高校日本代表のスコッドと試合を振り返る

花園の試合をそう多くは見られていないので「どの選手が良かったか」という部分での知識はあまり深くはないのですが、今回の遠征ではかなり粒揃いのスコッドだったように思います

世代特異的というか、高校年代やU20年代に多く見られるような激しく前に出るディフェンススタイルをある程度形にすることができる選手も揃っていましたし、アタックに関しても走力があるBK3が揃っている事もあって、「走る」という点においてかなりクオリティの高いメンバーだったように見えました

一方で、何度も言及しているように早いフェイズでの組み立てがはまっている一方でリズムのや位置のずれへの対応が後手に回ってしまっていたり、全体的に単調なアタックになってしまっていたのは今後の課題にもなってくるのかな、と感じました
SOの選手の質も高くゲームをコントロールできる選手が揃っていたとは思うので、選手たちに物理的にも戦術的にもより広い視野を持たせることができれば、もっと面白いラグビーを展開する事も可能かと思います

今回は以上になります
それではまた!

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