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2023大学ラグビー番外編:U20フィジー代表対U20アルゼンチン代表の試合を勝手に数値化して見てみた

みなさんこんにちは
少し間が空きましたが、改めてU20 Championshipsの順位決定戦について羅ビューを続けていきたいと思います

今日は9位決定戦のU20フィジー代表対U20アルゼンチン代表戦です
ライブ映像へのリンクはこちら↓

最初にメンバー表です

次にスタッツです

意外とまではいかないですが、少し不思議なスタッツですね
順番に見ていきましょう


フィジーのアタック・ディフェンス

フィジーのアタックシステム

まず、ポッドは結構曖昧というか、ある程度1stレシーバーとキャリアーが決まっているだけで複雑なシステムやムーブはなかったように見えます
3人でポッドを構築するくらいの決め事は決まっているかもしれませんが、その時々で人数や立ち位置はまばらなように感じました

まぁ、単純に僕の戦術を見取る力が足りないからかもしれませんが

アタックのバリエーションのみを見るとそこまでバリエーションは見られず、個人の強さやスキル、ひらめきによって打開を図っているような印象でした

とはいえ個人の武勇というか、スキルは目を見張るものがあり、今回特に注目したのは13番のNalaga選手のアタックセンスですね
ステップによるずらしからスピードのあるキャリー、ハンドオフのスキルも高く相手を外すことに長けている印象でした

フィジーのキャリー

キャリー・パス比は約3:4とキャリーの方が比較的多めですね
後半にかけて回数も3割強増加しており、後半にかけてポゼッションが増加していることが想像できます

キャリーの種類ごとに細かく見ていくと、前半は9シェイプでのキャリーが多く、後半はシェイプに分類されないアタックのうち特にエッジでのキャリーが大幅に増加しています(前半1回→後半14回)
その一方でOtherはキャリー数に比するとそこまで多くなかったです

キャリーのタイプはコンタクト時の姿勢を用いて2種類に大別できると考えています
「コンタクトの瞬間に強く踏み込み、肩から上腕にかけての部位でコンタクトするパターン」と「コンタクトをそこまで重視せずに自然なランニングの流れでコンタクトするパターン」の2つが今回見受けられたパターンですね

前者はバックローやCTBの選手、後者はLOをはじめとする手足の長い選手に多い傾向にあると思います
良し悪しは正直そのシチュエーションによるとしか言いようがないのですが、後者の方がフィジアンらしいですね

前者のキャリアーとして選手例を挙げると、NO8のSaumaisue選手や12番のFinau選手を上げることができるかと思います
この2選手はコンタクト時の姿勢が最も強い状態かつ懐にはいられないようなコンタクトをすることが多く、肩で間合いをとるような感じですね
トップチームだとトゥイソバ選手が近いプレースタイルでしょうか

一方後者の例としては、BKながら長い手足を生かしてラインブレイクしていた15番のBasiyalo選手を上げたいと思います
BKなんですけどね、彼
フィジアンらしい手足の長さがすごかったです

フィジーのパス

パス回数そのものは極端に多くはなかったですが、特徴は結構出ていたかなと思います
特にオフロードとOtherの部分ですね

Otherの部分に関していうと、組み立てが少し足りない感も否めませんでしたが、崩れたシチュエーションから繋げたりラインブレイクからパスを繋げたりすることが多かったためにそのような数値(前後半合わせて33回:全体の約1/4)になったのかと考えています

そしてフィジアンラグビーといえばコレ、オフロードパスですね
回数としては極端に多くはないですが(前後半合わせて17回)、つなぎ方が特徴的というか、繋ぐためにコンタクトするあたりにフィジアンソウルを感じました
ただ、どの選手も繋ぐ意識は高かったと思いますが、今回見た試合においては極端な意識性はなかったようにも思います

フィジーのブレイクダウン

少しクオリティの部分で難ありでしょうか
飛び込むか、高いかの二択感は否めなかったです
アタックのブレイクダウンの部分ではターンオーバーされることこそ少なかったものの、球出しのアベレージは遅かったように感じましたね

特に崩れたシチュエーションでもなく3人以上オーバーにかけたラックが多かったようなイメージが強かったです

ディフェンスに関してもそこまでプレッシャーをかけているような印象はなく、アルゼンチンサイドにスムーズに球出しされていたような印象ですね
アルゼンチンはテンポもよく、ラックにかける人数に関しても2人以下で収めていたので良かったです

フィジーのディフェンス

成功率はもう少し粘れそうですが、1対1のディフェンスに関しては総合的に見ると悪くなかったように思っています
体をしっかり当てることもできていて、外されることもありましたが基本的には極端に押し込まれることもなくディフェンスをすることができていたように感じます
しっかりハイとローをうまく使い分けることができていましたね

一方システム面で見るとアルゼンチンに崩されるシチュエーションが多かったかもしれません
どちらかというと前につっかけるようなディフェンスをしているので、すれ違いによってビッグゲインを切られているように思います
また、前につっかけることによって後ろのエリアが空くこともあったのでキックでラインブレイクされるシーンもありました

同様に、個人で前に飛び出すシーンも時たま見られ、それによってずらされたりするところもネックでしたね

アルゼンチンのアタック・ディフェンス

アルゼンチンのアタックシステム

基本的には日本戦と同じように1−3−2−2感のあるシステムを組んでいたように感じています
同様に9シェイプを用いたアタックも多かったところまで一緒ですね

一方、今回の試合では10番のDicapua選手が起点となるアタックを多く実行していたようにも感じています
後半こそ少し崩れたシチュエーションが増えましたが、前半も含めて10シェイプへのパスワークが他のチームに比べて比較的多く、Dicapua選手のゲームコントロールの良さが遺憾なく発揮されていました

キックの総数は少し少なめで、フィジーの選手のキックが伸びなかったこともあってかキックレシーブ後はキャリーにつなげる回数が多かったように思います
キックの質そのものを見ると悪くないクオリティでしたね
タイミングやチョイスは比較的ハマっていたように思います

アルゼンチンのキャリー

FWの選手のキャリーは相変わらずいいですね
ただ、フィジーの選手の1対1の体の強さや低くタックルに入ってくることもあり、そこまでキャリーでじわじわ押すというような展開にはなりませんでしたね

回数を見ていきましょう
前後半で様相は変化して前半は9シェイプが中心、後半はシェイプ以外の中央エリアでのキャリーが多いという結果になりました
一方エッジでのキャリーは前後半でそれぞれ7回・9回とキャリー全体の20%程度でしょうか
それ以外は傾向らしい傾向は見られなかったように思います

キャリーの質に関して見ていくと、フィジーの選手のような1回完全に止まるBump-off狙いのキャリー姿勢はそこまでなく、足をかいて前に出ようとするイメージが強かったです
ただ、先述したようにフィジーのディフェンスがそこまで崩れなかったこともありコンタクトを含むキャリーで効果的な前進を図ることができたものはそこまで多くなかったのではないでしょうか

アルゼンチンのパス

表裏を使ったアタックが比較的多く見られたように思います
前半はキャリー・パス比がほぼ1:2となっており、パスにこだわっている様子が見られています
一方後半は2:3程度になっていたので、少しイメージを切り替えたのかもしれませんね
ただ、トライ数そのものは減っていたので難しいところです

パスを種類別に見ていくと前半は9シェイプへのパス回数と同じくらいバックスライン上でのボール回しがカウントされており、バックドアへの供給も9回と少し割合としては多めになっています
逆に後半はカテゴライズから外れるOtherのパスが多くなっていたことから、システマチックなアタックが阻害されていたということができるかもしれません

全体のパス回数の減少とともに表裏を使っていることを示唆するような項目の数値も減少しており、後半にかけてシステムの実行に至っていない様子が見受けられました

質自体はとても良かったですね
オフロードの多いフィジーとは対照的にオフロードが試合全体で3回と、ボールを無理に繋がないような姿勢が見られています
前半多かったバックドアへのパスについて見ると姿勢はしっかりと相手に対して正対=スクエアになった状態でバックドアへのパスを繋ぐことができていたように感じました

アルゼンチンのディフェンス

試合全体のイメージだけを見るとそこまで悪くないのかなと感じていたのですが、いざ最終的な数値にしてみると少し低めのタックル成功率ですね
全体で80%割っていないのが救いでしょうか

タックルやデイフェンスシステムに関しては極端に悪いという感じはしなかったとはいえ、Bump-offされたりシンプルにスワービングで抜かれたりするシチュエーションも何度か見られたので、システムの構築に関してはもう一段階上があるかもしれません

まとめ

どちらも各々のチームの良さを示しながらも、セットピースでの安定からスコアにつなげることのできたアルゼンチンが勝利を収めたという形でしょうか
フィジーも悪くはないのですが、相手ラインアウト起点の失点が多いこととミスが重なったことで取りきれず取り切られるというパターンが多くなっていました

全体的にまだまだ戦術的にもスキル的にも伸び代のあるチームだと思うので、来年はより一層楽しみになりますね

今回は以上になります
それではまた!


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