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性暴力を許さない(教育委員会に正しい対応や判断を求めた記録)

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公立学校で遭った性被害を教育委員会に申告した当時の記録をまとめています。
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#セクハラ裁判

宮崎教育委員会に性被害を訴えたら

宮崎教育委員会に性被害を訴えたら

2016年に上司による性被害に遭い、1年後、宮崎県教育委員会、延岡市教育委員会に申告した際の対応で二次被害を受けました。

宮崎県教育委、延岡市教育委に対して裁判を起こし、損害賠償請求をしましたが、2020年12月25日に放棄しました。(判決はなく、合意や和解はしていません)

被害申告後から記録として書き記したり、録音していたりした教育委員会との当時のやりとりを、ライターの友人に協力してもらい、

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prologue. 行政裁判を起こす覚悟

prologue. 行政裁判を起こす覚悟

もう、裁判を起こすしかない。

「教育委員会を相手に裁判を起こします。助けてください。よろしくお願いします。」

2018年の春、そう言って弁護士事務所の一室で頭を下げた。

「行政裁判」
自分の人生には全く縁がないと思っていた。

本当のことが知りたい。自分に起こった事件を受け止めきれない心に折り合いをつけたい。少しでも納得したい。理不尽さや苦しみから解放されたい。この辛く苦しい経験を無駄にした

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episode1. 2016年3月13日 事件の日

episode1. 2016年3月13日 事件の日

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。フラッシュバックなどの症状がある方はご注意ください。)

その日は日曜日で、空は朝からどんより曇り、時折雨がパラパラと降っていた。私は午前中から買い物に出かけていて、あちこち店に立ち寄り、お昼にはよく行く店で洋服や雑貨を眺めていた。ちょうど12時半を過ぎた頃、携帯が鳴った。

第一小学校 A教頭。

あ、今日はPTAとの作業の日だった。もしかして

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episode2. 事件後の職場

episode2. 事件後の職場

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

事件の次の日の昼休み、私は一人で教室にいた。午前中の授業の片づけをしているところへ突然A教頭が現れ、私は一瞬にして凍りつく。

「昨日はすいません。これ良かったら。」
何だか少し照れたような、ぎこちない様子で手に持っていたクッキーの缶を差し出した。

「ところで生徒たちはどんな?荒れてるんでしょ?また何かあったら言っておいでね。」

A教頭

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episode3.「私が悪かったと思う?」

episode3.「私が悪かったと思う?」

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

もし、来年度もA教頭が残って学校での仕事が続けられなくなったら…という不安から、民間企業での職探しも始めた。知り合いの会社から一般事務で働かないかと誘われたが、役員秘書も兼務して出張の同行なども出てくるかもしれないと言われた。「出張先でお酒が入って、もしもまたあんな目に遭ったら…」と思うと、不安と怖さでいっぱいになり、せっかくの働き口でも断

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episode4. 被害相談窓口につながる

episode4. 被害相談窓口につながる

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

ハルに付き添われて相談センターに入ると、相談員の木谷さんが「どうぞ座ってください。」と温かく迎え入れてくれた。ずっと誰にも話せなかった事件の詳細をつい先ほどハルに打ち明けたばかりで、まだ心が落ち着かない。木谷さんの「何があったの?」という穏やかな声に背中を押され「実は、先ほど友人に相談したばかりのことなんですが…」と緊張しながら、ハルに見せ

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episode5. 事情聴取と教育委員会の出した答え

episode5. 事情聴取と教育委員会の出した答え

(※ 人物は仮名で、役職は当時のものです。)

2017年3月22日(水)
後から振り返ると、この日からもう一つの長い闘いが始まっていた。

延岡市教委からの事実確認の聴取を受けるため出かける準備をしながら、昨日の電話で言われた「ついて行った」がどうしても頭から離れない。引き出しに指を挟んだり、手足をぶつけたりとケガをし、自分の精神状態も思考も平常じゃないことは分かっていた。

そんな頼りない自分

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episode6. さよならの理由が言えない

episode6. さよならの理由が言えない

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

延岡市教育委員会 B課長補佐からの文書訓告処分決定を告げる電話から「もしかしたら教育委員会に本当のことが伝わっていないのかもしれない」という思いが四六時中、頭から離れない。

決定された処分が信じられず、いてもたってもいられなくなった。何かできることはないかと必死に考え、最初に思いついたのは「あの日、食事へ誘われていた」はずの森先生に連絡を

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episode7. 事故報告書の情報開示請求

episode7. 事故報告書の情報開示請求

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

延岡市教委より「A教頭の文書訓告」という連絡を受けてから「相手も認めていて概ね一致している」はずの「刑法にふれるようなこと」が単なる文書訓告なわけがないという思いが片時も頭から離れない。

どこまで教育委員会に真実が伝わっているのだろう。 教育委員会として本当に適正な判断・処分を行ったのか。まるで何事も無かったかのようにうやむやに処理されて

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episode8. 被害届の提出とその頃の生活

episode8. 被害届の提出とその頃の生活

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

宮崎県教育委員会、延岡市教育委員会の回答を受け、次はどんな行動を起こそうかなど考える気力すらも失ってしまった。被害を申告してからずっと正しい判断を信じ、教育委員会が下した判断が正されるはずだと信じてきたのに、正すどころか、これ以上私を相手にしないということを突き付けられたのだ。

以前、両親に裁判を起こすかもしれないと話した時「止めておきな

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episode9.労災申請

episode9.労災申請

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

2017年3月の被害申告時に警察と繋がった後も、木谷さんには連絡を取り続け、近況を報告していた。仕事に就くことができない状態の私に「労災申請という方法もあるかもしれません。」と教えてくれ、労災申請を決めた。労働基準監督署の力を借りて、宮崎県教育委員会、延岡市教育委員会の対応や判断について調査してもらえば、誤った対応や判断を正せるかもしれな

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episode10. 休職中の生活

episode10. 休職中の生活

(※ 人物は仮名で、役職は当時のものです。)

学校退職後は安定した収入を得ることが難しく、だんだん生活は困窮していった。食費、水道光熱費、税金、保険料と生きているだけでお金がかかるのに、支出に見合う収入を得ることができない。休職していた一年間の生活費は両親に頼るほかなく、病院と時々の買い物でしか家から出られない状況も、そんな自分自身も惨めでたまらなくなっていた。ただ、毎日生き続けていることが虚し

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episode11. 裁判の始まり

episode11. 裁判の始まり

(※ 人物は仮名で、役職は当時のものです。)

2018年の春、宮崎県教育委員会、延岡市教育委員会を相手に行政裁判を起こすと決心した。

本当のことが知りたい。自分に起こった事件を受け止めきれない心に折り合いをつけたい。少しでも納得したい。理不尽さや苦しみから解放されたい。

私がこれから前を向くためには必要なことだと覚悟を決めた。

2018年11月21日
宮崎地方裁判所延岡支部へ訴状を提出し、

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episode12. 裁判で求めたかったこと

episode12. 裁判で求めたかったこと

(※ 人物は仮名で、役職は当時のものです。)

裁判が始まってから宮崎県教育委員会、延岡市教育委員会に対して求めたいこともWordファイルにまとめ始めた。裁判に費やす長い時間を無駄に過ごしたくない。意味のある時間にするんだと自分に言い聞かせ続けた。

メディアで取り上げられる性被害や教育現場のニュースを参考に、自分の裁判でも教育委員会に対して求めたいことが時間と共に増えていく。

求めたいことが追

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