パーソンズ美術大学留学記シーズン4 Week13&14 #298
授業ではおよそ二週間後に迫る最終発表に向けての準備が進んでいます。「Exhibitionで何を展示するのか」「Presentationで何を発表するのか」などを現時点でシミュレーションをしています。
たとえば、Exhibitionでの展示場所やPresentationの順番をどうするかを考える場面がありました。こうした行為を「キュレーション」と呼ぶようです。ディズニーランドやUSJなどのアミューズメントパークにおいて様々なアトラクションを一つの園内に収める時に、似ている雰囲気やコンセプトのアトラクション同士を近くに配置するようなイメージです。Transdisciplinary Designはそれぞれが多種多様なテーマで卒業制作に取り組んでいるものの、なんとか共通点を見つけています。
伝わりやすさは構成で決まる
二週間後にプレゼンテーションがあるということで、15分間のプレゼンテーションの構成についてフィードバックをし合う機会がありました。そこで、伝え方に関するコツをいくつか学んだので書いておくことにします。
エピソードで掴む
統計的には「n=1」「サンプル1」と言われて過小評価されるものでも、デザインでは尊重されるようです。ミクロで具体的な事例・エピソードを提示することで、社会全体が抱えるマクロな問題を浮き彫りにするというストーリーテリングの方法があると教わりました。
学術的(理系的?)な研究発表では、統計的に有意かどうかが信頼に値する結果かどうかの判断基準になります。しかし、デザイン(または人類学?)では、質的調査から得られたインサイトに価値を見出している印象があります。
仏教的プレゼン術
プレゼンテーションの構成を考えるうえで、仏教の中心的な教えである四聖諦のフォーマットが活かせるというアドバイスがありました。四聖諦とは以下の四つの真理を指します。
この論理展開をプレゼンテーションに落とし込んでみると以下のようになるでしょう。デザインでは問題定義と問題解決をセットで話すことになるため、この四聖諦フォーマットは参考になりそうです。
ワンメッセージに絞る。余計なものは入れない。
あれもこれも伝えたくなりますが、初めて聞く人を想定するならば、伝えたいことを一つに絞る方が伝わります。キラーフレーズを用意しておくことで、「あの発表のメッセージは○○だった」と一言で覚えやすいようにするのも良さそうです。
また、伝える内容を絞る際に気を付けるのは、言及する領域を取捨選択することです。たとえば、今のバズワードだからと「chatGPTは……」などと言えば、聴衆は「テクノロジー系の話なのかな」と引っ張られてしまいます。その言葉が想起させる学問領域を意識することで、聞く人が他の学問領域に「寄り道」しないようにガイドすることも必要かもしれません。
要約力というエピソードトーク・スキル
最終発表に向けて1年間の成果を15分で説明することに取り組んでいると、ほとんどの会話はエピソードトークである気がしてきます。就職活動の面接もこれまでの人生を数十分で伝えなければなりませんし、日常生活で"How are you?"と聞かれた時も最近の出来事を一言で説明することになります。
「仕事ができる人・コミュニケーションが上手な人は、エピソードトークが上手ということなのかなぁ」とか、「頭に浮かぶ独り言は、いつか誰かに話すためのシミュレーションを脳が勝手にしているのかなぁ」などと思ったりしていました。
さて、自分の卒業制作を長文で綴ったものを要約するという機会があったのですが、その時に思った要約のコツについてのメモを書いておきます。
優しさは誰かが見てくれるかもしれないけれど
以前の記事で、同級生のリーダーシップ溢れる人の苦労について触れました。その人がなんと"Student Leadership Award"なる賞を受賞しました。
「おめでとう!」と祝いたい気持ちがある一方で、「この成功体験によって今後の人生でやりがい搾取をされなければいいのだけれど」と心配になる気持ちもありました。
今回は正当に評価してくれる人たちだったから良かったですが、他の組織に入った時には気づかれなかったり感謝されなかったりすることもあるかもしれません。そんな時は、評価される・大切にしてくれる場所に移ってほしいと思います。
まとめ
フィードバックを何度も受けて改善することが推奨されているものの、英語ネイティブではない私にとって、日本語で考えて英語で見せられる状態にするだけでも一苦労。思考と会話を同じ言語でできない状況に歯がゆさを覚えながら、なんとか最後の仕上げを進めています。
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