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名前は「カイ」。デザイナー/ライター。noteではデザイン論など執筆。パーソンズ美術大…

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名前は「カイ」。デザイナー/ライター。noteではデザイン論など執筆。パーソンズ美術大学🗽(2021/8~2023/5) Major: Transdisciplinary Design(MFA), Minor: Anthropology and Design

マガジン

  • デザイン論

    デザイナーとして生きていく矜持を培うために学んだこと、考えたこと。

  • コンテンツ鑑賞録

    本や映画の要約・感想など。

  • エッセイ集

    今の思いをつらつらと。

  • Transdisciplinary Designの教科書

    Transdisciplinary Designについて学びたい方のための記事です。

  • パーソンズ美術大学留学記(完)

    パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでの学びについて書いた記事です。2021年9月から23年5月までほぼ毎週連載していました。

最近の記事

  • 固定された記事

【卒業制作】デザイン倫理を、禅で問う。 #300

パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでの卒業制作が無事に終了しました。というわけで、私の卒業制作「Paradoxical Prototyping -How Zen Inspires Design Ethics-」をご紹介します。この記事を通してTransdisciplinary Designについても知ってもらえたら幸いです。 問題意識:デザインの功罪と倫理 デザイン(デザイン思考)を使えば画期的なアイデアが生まれてイノベーションが起き、社会

    • デザインで肩身の狭い書き言葉 #332

      「なぜデザインでは文章がアウトプットとして認められないのか?」という問いをよく考える。パーソンズ美術大学に留学していた時には「Show us, not tell us」という言葉を何度も聞いた。「言葉で説明するのではなく作品を見せろ」という意味だ。 この言葉に「デザインらしさ」を感じて身につけたいと思ったと同時に、私にとって自然にできることではないとも感じていた。つまり、「なぜ文章で伝えたいのに一度別の何かに表現し直す必要があるのか?」という疑問を抱き続けていたのだ。自分の

      • デザインは、社会的差異を具現化する。(『欲望のオブジェ』) #331

        そんな挑発的にも思える一文が前書きにある『欲望のオブジェ』は、構造主義的な視点で近代デザインの歴史を語る一冊。副題が「デザインと社会 1750年以後」であるように、社会背景からデザインを語る視点が特徴的である。 なお、この記事は本書の要約や解説ではなく、個人的な学びを中心にまとめていく。 デザインは進歩を隠蔽する第1章「進歩のイメージ」と第2章「最初のインダストリアル・デザイナー」を通して1750年代以降のデザインの歴史を紹介しながら、デザインがアートから独立していく様子

        • 文章を書くのは、割に合わない。 #330

          ライターとして活動するようになり、「ライター」がどのような職業なのかを考えるようになった。そこで感じるのは、「ライターって軽視されていない?」というものだった。特に原稿料の算出方法からその一端が垣間見える。

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        【卒業制作】デザイン倫理を、禅で問う。 #300

        • デザインで肩身の狭い書き言葉 #332

        • デザインは、社会的差異を具現化する。(『欲望のオブジェ』) #331

        • 文章を書くのは、割に合わない。 #330

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        • デザイン論
          28本
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          33本
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          60本
        • 英語系記事
          18本

        記事

          脱完璧主義の読書論(『読んでいない本について堂々と語る方法』) #329

          『読んでいない本について堂々と語る方法』という本を読んだ。いや、本書を知った後では「読んだ」などと軽々しく言えなくなるのだが、とりあえず一般的な意味において読んだことにして話をする。 本書はキャッチーなタイトルだが、決して「知ったかぶりがバレないように振る舞う方法」のような小手先のテクニックを羅列した本ではなく、「本を語る」という日常生活にありふれた行為をユーモラスに論じた一冊である。本にまつわる行動を「読む」と「語る」という二つに分けてそれぞれを考察することで、読んでいな

          脱完璧主義の読書論(『読んでいない本について堂々と語る方法』) #329

          2023年の振り返り、2024年の抱負。 #328

          あけましておめでとうございます。3年ぶりに日本での年末年始を過ごしています。年越しそばを食べて紅白歌合戦を観るという日本らしい大みそか。ニューヨークでは年越しと同時に近所で花火が打ち上がっていたのと比べると静かな夜でした。今回は新年最初の記事ということで、2023年の振り返りと2024年の抱負を書いてみます。 2023年の振り返りパーソンズ美術大学・Transdisciplinary Design修了 2023年の個人的一大イベントは、約2年に渡るパーソンズ美術大学・Tr

          2023年の振り返り、2024年の抱負。 #328

          資本主義の論点を整理してみる。 #327

          現在の日本は資本主義を採用しています。そのため、日本社会に不満がある時には資本主義自体を疑う声が上がります。しかし、「資本主義が問題だ」という時、具体的には何を問題視しているのか? 「ポスト資本主義を目指す」という時、何を実現したいのか? 資本主義が影響する範囲の広さゆえに、人によって答えはバラバラです。 そこで、今回は資本主義についての書籍を読んで勉強してきたことを整理してみました。現時点では個人的なメモのような状況なので、詳細な説明は割愛していることをご了承ください。

          資本主義の論点を整理してみる。 #327

          『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』を読む。 #326

          ジョナサン・マレシックの『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』を読んだ。著者は学生の頃から夢見ていた大学教授になり、終身在職権まで得ているという恵まれた境遇だったにもかかわらず、バーンアウト(燃え尽き症候群)になった。そんな自身の経験をきっかけにバーンアウトについて調べた結果をまとめたのが本書である。この記事では本書の要点と個人的な感想を記してみる。 バーンアウトの定義バーンアウトという言葉は医学的に定義されていないが、著者はマスラーク・バーンアウト・インベントリー(MBI)

          『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』を読む。 #326

          私はどう生きるか(「シン」仏教哲学講座by松波龍源さん)#325

          私はパーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designへの留学時の卒業制作で仏教をテーマにし、そのリサーチも兼ねてNew York Zen Centerで禅を体験していたが、日本に帰国してからは仏教に触れる機会が身近になかった。 帰国後も継続して仏教を学びたかったので、松波龍源先生の「シン」仏教哲学講座を受講してみた。松波龍源先生は「a scope」仏教回のゲストとして初めて知ったのだが、西洋哲学を参照しながらの説明が個人的に分かりやすかったのが今回の受講

          私はどう生きるか(「シン」仏教哲学講座by松波龍源さん)#325

          注意経済が奪う退屈さへの憧れ #324

          時折、私はうつ状態になる。SNSをチェックできなくなり、すべてのフォローを外す。くだらないニュースが飛び交う無秩序さ、著名な人や無名な人の成功談の眩しさ。その全ての情報を飲み込めない、むしろ飲み込まれていく。だから、私はテクノロジーやメディアとの向き合い方について考えるようになった。 現代はコンテンツが見切れないほどあふれている。稲田豊史の『映画を早送りで観る人たち』では、特に若者は自分が見たいからというよりも友人と話を合わせるためにコンテンツを見ており、多くのコンテンツの

          注意経済が奪う退屈さへの憧れ #324

          『万物の黎明』を読む。 #323

          デヴィッド・グレーバーとデヴィッド・ウェングロウによる『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』を読んだ。本書は紙で708ページ、Kindle版で1097ページという大ボリュームであるため、大まかな論旨を追いつつも、個人的に気になった部分を中心に取り上げながら紹介していく。 『万物の黎明』で印象的だった部分不平等は自然状態or文明病? 「どうすれば不平等を是正できるのか?」という問いを考えると、「なぜ不平等が発生したのか(平等だった時代や社会はあったのか)?」という問いも

          『万物の黎明』を読む。 #323

          I am (not) a designer #322

          パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designの最初の学期には、「Transdisciplinary Design Seminar (TD Seminar)」という必修授業があります。私が入学した2021年はTransdisciplinary Designの創設者であるJamer Huntが担当し、Transdisciplinary Designとは何かを教えてくれました。 この授業では自分の学びをエッセイにまとめる課題が3回ありました。このシリーズ記

          I am (not) a designer #322

          デザインは幻想のためか? 幻想に抗うか? #321

          パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designの最初の学期には、「Transdisciplinary Design Seminar (TD Seminar)」という必修授業があります。私が入学した2021年はTransdisciplinary Designの創設者であるJamer Huntが担当し、Transdisciplinary Designとは何かを教えてくれました。 この授業では自分の学びをエッセイにまとめる課題が3回ありました。このシリーズ記

          デザインは幻想のためか? 幻想に抗うか? #321

          進化論とデザイン:資本主義 vs. 仏教? #320

          パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designの最初の学期には、「Transdisciplinary Design Seminar (TD Seminar)」という必修授業があります。私が入学した2021年はTransdisciplinary Designの創設者であるJamer Huntが担当し、Transdisciplinary Designとは何かを教えてくれました。 この授業では自分の学びをエッセイにまとめる課題が3回ありました。このシリーズ記

          進化論とデザイン:資本主義 vs. 仏教? #320

          なぜTransdisciplinary Designは重要なのか? #319

          これまでパーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでの学びを通して、「Transdisciplinary Designとは何か?」「Transdisciplinary Designはどのように実践するのか?」などについて記事を書いてきました。 これまでWhatやHowにあたる記事は書いてきたので、今回は「なぜTransdisciplinary Designは重要なのか? 」というWhyの部分を書いてみます。ただし、Whyについては先生から直接教わる

          なぜTransdisciplinary Designは重要なのか? #319

          ティム・インゴルド『人類学とは何か』を読む。 #318

          ティム・インゴルド流人類学まず、彼が人類学の定義について述べている部分を引用してみる。彼は「私たちはどのように生きるべきか?」という問いを中心に据え、そのアプローチ方法として人類学を設定する。 人類学では「世界に入って」いく参与観察(フィールドワーク)の結果を民族誌(エスノグラフィー)としてまとめることが基本的な手法とされているが、インゴルドはこの前提に批判的な立場をとる。民族誌を書くという目的のために参与観察という手段があるという関係性を拒否するのだ。 ちなみに、イン

          ティム・インゴルド『人類学とは何か』を読む。 #318