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水ぬれあり

図書館で本を借りると、「水ぬれあり」のシールが貼られた本に出くわすことがよくある。

ははーん、さては誰かがお風呂の中で読んだんだな、と思う。

いうまでもなく、図書館の本は、公共のものであるので、大切に扱われなければならない。

個人的な趣向で、みんなの本にダメージを与えられては困ったもんだ、と図書館関係者なら思うだろう。どうしても、お風呂で読みたいなら、自分で買えばいい。それが正論かと思う。

でも、私は、「水ぬれあり」の本に出くわすのが嫌いではない。

最近の図書館の本は、ラミネートされていて、痛みや汚れがつきにくくなっている。

多くの人が長く愛用したり、アルコール消毒したりするには、これが必要な手段なのだ、とわかってはいるのだが、なんだか少し、味気ない気がしてしまう。

子供の頃、図書館の人気本は、背表紙が今にも分解しそうなほどボロボロで、それが、多くの子供に読まれた証というか、自分の前にその本を手に取った人たちに思いをはせるのも楽しみであった。

今、図書館の本は「水ぬれあり」

それだけが、私の前にその本を読んだ人達の気配なのだ。

エッセイ本は、「水ぬれあり」に出くわす確率が高い。お風呂の中で、誰がの人生のある場面を読みながら、リラックスする時間のすばらしさよ!

実際私の本棚にも、何度もお風呂に持ち込まれて、ページが波打ち、本棚にかっこよく並べない本たちがいる。

幼児のお風呂用の本のように、大人向けにも、ぬれることが前提の本があってもいいんじゃないだろうか。

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