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【詩】ぜんぶ嘘

嘘にまみれたこの日常
嘘が舞い踊る街のなか
僕も私もみんな嘘つき
嘘に喜び嘘に泣き
気づけば嘘に生かされている

嘘が転がる時代の片隅で
嘘を買い漁り嘘を着飾り
ありふれた嘘を求め安堵する若者たち
嘘が無ければ満たされない
ありふれた嘘という嘘

最近の若いやつは嘘まみれとのたまう
じいさんばあさんももれなく嘘まみれ
嘘を食い荒らし嘘を飲み尽くし
湯水の如く嘘を消費し続ける毎日
振り返れば嘘 前を向いても嘘
だって仕方ない嘘なんだもの

コンビニは嘘しか売ってないし
テレビは嘘しか映していない
嘘の列車に乗って嘘の景色を眺めれば
山々は嘘が咲き乱れ
大空は嘘が群れを成して羽ばたき
河川は嘘が優雅に泳いでいる

嘘という名の僥倖
嘘こそが真実という虚栄
嘘まみれの君がつぶやいた
ぜんぶ嘘だったらいいのに
私にとって都合の悪い嘘だけが
ぜんぶ嘘だったらいいのに

嘘に惑わされ嘘に傷ついた
嘘つきな君に嘘をたったひとつだけ
笑ってください嘘でもいい
一分一秒でも長く嘘に笑っていてください
嘘のなかに垣間見える僅かな愛を
胸に抱いて嘘を見つめていてください

俺の言葉はぜんぶ嘘です
そんな俺の嘘を指さし笑ってください
たとえこの身が嘘で朽ち果てたとしても
嘘の墓場から蘇って君に会いに行きます
きっと君のために嘘を言いに行きます

嘘の総合デパートメントストアで
真っ赤な嘘の花束を買っていくから
嘘くさい口笛でも吹いて笑っていてください
嘘っぱちの現実に負けない
自分に正直な嘘を吐いていてください

きっとそれは素敵な嘘に違いないから
小さく頷ける清純な嘘に違いないから



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