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新築住宅産業はどうなるの?

最近、工務店/ハウスメーカーと協働している関係でそもそも新築住宅業界が今後どうなっていくかをリサーチする機会があった。

17年間で市場が6割となる可能性がある。

野村総合研究所が今年の6月22日に出した内容だ。
その自分の考察のまとめを。
結論だけで十分な内容ですが。


1.統計の自分の考え方

自分は統計というものをきちんと学んだことはない。
データというものは非常に難しく、解釈や切り取り方によってもなんとでもなる。本格的に分析している人も予想は外れるし、ポジショントークが多かったりもする。という考え。
地球温暖化問題では、確かに温暖化しない可能性もあるが、その低い可能性にかけるのはリスキー過ぎるし、原発の処理水問題ではその元データ大丈夫なの?という疑問があったり、と統計自体切り取り方で色々な解釈が出来るあいまいなものだと思っている。(ただし、人口のデータはほぼ正確に推移すると言われている)

なので統計は競馬の予想程度に考えてている。

ただ未来を予想することは必ず必要だし、その未来予想(VISION)に従って行動していくことは、やることにブレがでなくなるので絶対に必要だと考えている。あと「どういう社会にしたいか」っていう大きな視点も企業に必要だと考えている。ビックモーター問題もしかり、やみくもに成果主義を求められると、コンプラが働かなくなったり、何より社員のモチベーションの差が顕著になる。
企業には必ず必ずビジョンに従って行動してもらいたいが、地方の多くの経営が目先のことしか考えていないことは多い(考える余裕もない)。ビジョンに共感できないと優秀な人は集まらない。
そして足で運ぶスタイルはいまだに根強く、行動力は若い世代も見習わなければならないが、デザイン思考などを取り入れ行動する前に考えることも大切である。
そういうわけで自分は工務店・ハウスメーカーと一緒にデザイン思考で色々と取り組むことをしている。

2.着工件数

まずは今後の新築住宅の市場規模について

新設住宅着工戸数の実績と予測(全体)

ニュースリリース 研究・情報発信 2040年度の新設住宅着工戸数は55万戸に減少

株式会社 野村総合研究所

2023年88万件の着工件数とすると、2040年度に55万件になると予想されている。単純計算すると17年間で62.5%となる。日本の人口は現在1憶2330万人で、2040年度には1憶1092万人となる。人口は89.9%となるので、人口減少以上に着工件数の減少は著しい。もう少しこの数値を掘り下げてみる。

3.住宅の着工数が減る原因について

・生産年齢人口の減少
高齢化の問題をもう少し掘り下げると、そもそも新築住宅を建てる人(購入者)はローンを組むので、収入がないと建てれない。
2022年の生産年齢人口は7,412万人、2040年には5,978万人まで下がると言われている。単純計算すると80.6%になる。着工数が減る主要因はこの生産年齢の人口の減少が一番大きいと考えられる

引用元:2022年11月時点の人口は「人 口 推 計 2022年(令和4年) 11 月 報 」、2040年推計の人口は「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果報告書」より

しかし数字的にも他の要素も考察が必要そうだ。

・住宅価格の高騰
住宅の価格は今後間違いなく上がると考えられる。近年はコロナによる工場の停止、コロナ後のウッドショックやウクライナの戦闘などで住宅価格は上がり続けている。

引用:ニュースリリース 研究・情報発信 2040年度の新設住宅着工戸数は55万戸に減少
出所)実績値は総務省「国勢調査」より。予測値はNRI。

コロナによる影響は徐々に下がっていくだろうけど、短期的には円安による価格上昇は免れない。円安は経済政策的に不透明な部分もあるが、自分が懸念しているのは現場の職人さんの人口減だ。消費者物価指数以上に住宅価格の高騰は著しいのはこれによる影響が大きいと考えられる。この予想は人口に関することなので当たる可能性が大きい。また需要を賄うには生産性を1.3倍にしなくてはならないということらしい。

しかしこれ以上現場で生産性を上げることは可能だろうか。
3Dプリンターの住宅とかも出始めたが、現段階ではまだ住宅一軒分の大きさは製品化されていない。現代の生活に合わせた3Dプリンターの家族用の住宅が開発出来るのであれば、需要に答えることが出来るかもしれない。しかし、1970年代に作られたセキスイハイムM1のように規格型住宅が再び流行すれば、コストは抑えられるが、結局それが主流にならなかった通り、人々の抵抗がまだある。なので今後はイメージ戦略が重要になりそうだ。

また今は都市部では建売住宅の割合が大きいが、郊外においてはまだまだ注文住宅の割合が大きい。
(参考:https://orulab.allhouse.co.jp/contents/414
今後はコストを抑えるために郊外でも建売住宅が増えることが考えられる。また無印良品のような「半注文・建売住宅」が今後主流になっていくことも考えられる。その設計施工の簡略化によって、戦略次第で伸ばしていける可能性もある。
地方で戸建て住宅を選択するのは、そこにライフスタイルに魅力があるからだ。如何にそこを刺激する住宅を提案していくかがカギとなる。

・リノベーションの増加

出所)実績値は住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅リフォームの市場規模(2021年版)」より。 予測値はNRI。

環境意識の高まりによってリノベーションが爆発的に伸びるかと思いきや、緩やかな成長にとどまる。そもそもリノベーションは安く出来ると思われがちだが、新築とそこまで大きく変わらない。DIYならまだしも、職人さんの人数が減っていく中での、非効率で技術の必要なリノベーションは高くつく。
住宅の耐震性能が大幅に上昇し、どんどん施工が簡素化された2000年以降(基準法の改正により)の住宅が市場に多く出回るようにようになると市場は伸びるだろうが、もしかしたら3Dプリンターの安価な住宅が普及すれば伸び悩む可能性もある。

・そのほかの要因

その他にも政治的要因、社会的要因なども考えられる。
消費税などの重税によって、さらなる冷え込みや戦争などによって長期的な冷え込みもゼロとは言えない。逆に南海トラフ大地震によって、新規住宅の需要が大幅に増える可能性も考えられる。
まあこの
ライフスタイルなどによっても変化しうるので、別の機会に今後の住宅とライフスタイルの関係についてまとめていきたいと思う。

4.結論

以上は野村総合研究所のデータの自分の解釈だ。
自分の中の結論として、

・新築住宅の着工数が減ることは避けられないが、それを減らすことは可能かもしれない。

・その戦略の一つとして、
→ 大手ハウスメーカーなら3Dプリンターの住宅の普及、イメージ戦略
→ 地方の工務店なら建売住宅 or 半注文・建売型の住宅の開発
を進めていき、効率化による価格を抑えた販売などが考えられる。
当たり前だけど建売、半注文・建売住宅は値段以外にも差別化するためにブランディングが非常に需要となる。

他にも手元にデータはないが、高額物件(5,000万円以上)の需要は長期的に微増になるという予想もあるそうだ。おそらく、格差の拡大や外国人による購入などが考えられる。ただ立地によってこの金額の層に手を出すことは不可能かもしれない。

本来なら環境という視点からはリノベーションを推進していきたいが、昔の木造の住宅性能はあまりよくなく、改修に金額がかかりすぎるため、新築という選択が生まれてくるのも事実であろう。
またインフラ維持のためのコンパクトシティの観点からも、中心地への新築は今後も必要である。

いずれにせよ、大手ハウスメーカーならアジア市場がまだまだ拡大していくので、海外戦略によって容易に成長することが可能だが、地方の中堅工務店は生き残りをかけた戦略が必要なことは間違いない。

そこに気づいて一緒にやろうと声をかけてくれる危機感のある若い世代と仕事をするのは面白いが、今まで通り足で稼いでいこうとする世代は力強い。




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