ちょっとソ連の方へ
黒髪がばらりほどけて
シベリア鉄道の脇を遁走するトロッコに轢き殺される
とろとろとトロッコが進む遥か前方に
朝露をたっぷり含んだ草原が転がりまくり
死んだ黒髪はぐっしょり濡れて
鳥の冠羽の発情期を知らないままに
それを代行してしまう　シレッと
 
　　　　ウラジオストックの北西の森の奥深く　黒髪は
枯木の林に絡み付いて　電撃ラケット状の罠に掛かったシベリアタイガーは既に虎魚オコゼのから揚げになっている　から揚げが我が祖国の団欒の食卓に並ぶ頃には　大気の底の藻場の眠りから漏れ出たなめこ汁のような　避けたい隣人のむぉーっとした臭いが広がる
 
　　　　虎魚オコゼは一念称名と骨学の複合系を背泳している
できたらね　骨もろともね
頭から尾びれまでガブリとかぶり付かないと
黒髪の信心はマンモスの骨片や
隣人の肉塊とも親和するから
から揚げが喉ぼとけで
羽交い絞めにされても仕方がないんですね
シベリアタイガーの一念として
 
　　　　もろもろの小骨はユーラシア大陸の地図を広げて黒髪を舐める土手の歯茎に突き刺しとけばよい　抜くと血がぴゅーっ　いやたぶん　じゅくじゅくとツンドラに滲み入る土壌の冷血だろうと思う　レンタルの「Cold Blood」を観たんだけど、股旅物の北の星祭りみたいに退屈だった
 
　　　　極東弓状列島最古の謎多き盆踊り　戸来村のナ
ニャドヤ〜ラ〜　ナニャドナサレ〜テェ〜　はロシア正教的にはどうなのか？　もちろんどうでもいい
 
いやその場合　盆踊りと同時に港湾緑地から打ち上げられた花火と極超音速ミサイルの冠羽と敵性国家のヨタヨタ飛行するドローンとの愛の三角関係と
たかだかそういったものでしかないでしょう？
おまけに偽のバイカル湖の産廃業者の味噌煮は黒髪の核実験とあいまっていとむさ苦しかったから

　　私はちょっとソ連？
　　　　　　　　　　　　　ノヴァヤ島と
　　　　　　
　　　　　　　ゼムリャ島の方へ

行ってきます

＊「ちょっとソ連の方へ行ってきます」
どおくまんのマンガ『嗚呼‼ 花の応援団』に出てきた
コトバ。