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tacicaという"確かな"ロックバンド

 突然だが、tacicaというバンドをご存知だろうか。"タシカ"と読む。

私は趣味などほとんどない人間なのだが、唯一趣味といえるのがtacicaの音楽を聴くことだ。しかし、好きなバンドはtacicaと答えても多くの人から

「えっ、確か?何?」


などという反応をされる。まるで、

「好きなバンドの名前も覚えてないのかよ」

と嘲笑われるような感じだった。
そもそもtacicaというバンド名自体、メンバーの口癖の"確かね"から来てるのだから仕方ないといえば仕方ない。
「いや、tacicaっていうバンドなんだよ」
と今まで何度言ってきたのだろう。
魅力的なバンドなのにどうしてこんなに知名度がないのだろうか。やはりテレビやラジオ等のメディアにほとんど出ていないというのが一番理由なのだろう。

 長くなってしまったが、これからtacicaについて書いていきたい。


 tacicaについて


  2005年にバンド結成。北海道出身。

 現在メンバーは二人。
Gt.Vo.の猪狩翔一 Ba.小西悠太 ドラムはサポートを入れている。最近はsyrup16gなどのドラムを担当する中畑大樹がほとんどとなっている。

 とにかく、まずは聴いてほしい。


 私自身、音楽に精通しているわけではないので、テクニックのことや機材のことなどそういったことはほとんど分からない。でも、そんな私にでも突き刺さったのが、何よりも透き通るような猪狩氏の声だ。
唯一無二の力強く、美しい声。そして独創的な文学的な歌詞。それがtacicaの大きな魅力だ。
 上であげた楽曲"人鳥哀歌"は初見では読めないだろうが"ペンギンエレジー"と読む。何とも難解である。

「我等、氷の上、炎天下を知る。」

一番の歌詞でこう書かれている。漢文かよ、と思わず突っ込みしたくなるような詩だ。
氷の上で炎天下を知る? 
なんて矛盾じみた詩なのだろうか。しかし、続く歌詞にはこう書かれている。

オーライ!!! 哀しくならない方法は
何処にあるだろう

 今度は急に英語!? しかも"!"が三つもつくのか!? 先程までの漢文じみた歌詞とは打って変わっている。

面倒でも舌を放り出せないのが
何時からの契約で
冷静になって声を殺すのなら
月に向け鳴いては如何?

 こちらがサビ。また先程とは違った文体である。いかが?を如何?と表現するのは何とも文学的であるというか。

 こういったようにコロコロと変わる文体。捉えづらい歌詞。難読な曲名。やはり、難解なのである。
 しかし、不思議なことにスッと自分の身体に曲の一部分が沁みるのだ。

いつか僕等も色褪せるのなら
自らの選択に
成功を祈って泳げる歌

 はっとした。

 難解だ、難解だ、と今まで言ってきたがこのフレーズが身体中に沁み渡ったのだ。
私たちは老いていき、枯れていき、いずれは消えてしまう。それならば自分の選んだことが成功でありますように、と祈りながら生きていこう。私はそういう解釈をした。
 一転して、何て美しい歌詞なのだろうと思うようになったのだ。そう思うとだんだんと歌詞を読み解いていきたくなってしまう。
 きっとこの"色褪せる"という部分はペンギンの白と黒のモノクロの体色を表しているのではないか……などとどんどんと深読みをしていた自分がいたのである。

 ここまでこの稚拙な文を読んで下さった方はもう恐らくtacicaという沼に入り込んでいるに違いない。

 tacicaのライブ

 沼に引きずり込めたところで、ライブについて今度は書いていきたい。私自身、他のバンドのライブに参加したことはほとんどない。その為、ロックバンドのライブに参加すると決めたときは大層緊張したものだ。ロックバンドのライブといったら曲ごとのノリだったり、手拍子だったり、モッシュなどがあったりという情報を何となくではあるが掴んでいた。実際テレビ等で見たバンドのライブは客が手を掲げ、タオルを振り回したり、あるいはバンド側が煽っていたり……。初めて参加する者にとっては恐怖に似た感情を抱いていた。

 しかし、tacicaというバンドにおいては全くそんなことはなかったのである。

 tacicaのライブは、観客に対して「何か」を求めるということはほとんどない。どうぞ皆さん自由に楽しんで、というスタンスだ。
 開始時間にステージ上に登場し、演奏が始まる。最初のmcで言うことは大体いつも決まっている。

「tacicaです。最後までよろしく」

 言葉少なにGt.Vo.猪狩氏が呟くように言葉を発する。そして、その隣でBa.小西氏がニコニコの笑顔で深々と頭を下げる。そのまま次の演奏に移っていく。観客へのコールアンドレスポンス等はなく、手拍子を煽るでもなく、只管に彼らは「音楽」を私たちに届けてくれる。そして彼らは演奏終わりに必ずと言って良いほどに「ありがとう」と口にする。こちらこそ、ありがとうと言いたくなるほどの良い演奏を届けてくれる。


 これってつまりtacicaのライブはつまらないのかと思われた方いらっしゃるかもしれない。
しかし、

全くもって、そんなことはない。

観客に求めていないだけで、こちらはこちらでもちろん手拍子だって、拳を掲げることだって、声を出すことだってある。
 tacicaは聴いてほしい音楽を届け、我々観客は聞きたい音楽を聴いて、個人個人で楽しむ。強要などせずともライブは盛り上がるし、楽しいのだ。

 ライブ中のmcはとにかく緩い。ありがとう、から始まり、えーっとと言葉を探しながら、結局何もなく、またありがとうで締める。そんなことがよくある。勿論これだけでなく普通に話すこともあるのだが、曲についてのことやバンドの話ではなく、花粉症大丈夫?とか飼っている犬の話であったり、所謂世間話の方が多い。その後、「曲やります」と演奏がすぐに始まる。オンとオフの切り替えが異常に早い。先程までの緩いmcは何だったのかと思うくらいの格好良い音楽を演奏してくれる。
いつかのmcで「くだらない話をしていたい」と話されていた。私はこれからも"くだらない話"を聞いていきたい。

 終わりに

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 長々と書いてしまったが、ここまで読んでくださった方は恐らくtacicaという沼に引き摺りこまれたと思う。まだまだ、たくさん書き切れてない、書き切っていないことがある。tacicaの楽曲についてのことはもちろん、ライブ中のもはや定番となっている小西氏によるグッズ紹介コーナー、ロゴマークの鹿に因んだFCサイト「鹿の仔」等々。まだまだ伝え切れていない魅力が沢山ある。
兎にも角にも私が伝えたい事は

「tacicaを聴いてくれ」
 

それだけである。

6月29日には8枚目のアルバム「singularity」がデジタル配信される。収録曲の一つである「デッドエンド」は先行配信、youtubeにMVが公開されている。それに伴ったツアーも7月から始まる。


何かを知るに遅すぎるということは決して無い。と思う。だからこそ、聴いてくれ。
tacicaという確かな音楽を奏でるバンドを。






 


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