見出し画像

マッチングアプリ交遊録 Vol102

マッチングアプリをかれこれ3年ほど続けた。
そして、かれこれ150人程の女性に会った。
食事だけで終わることも、
千載一遇、一夜で終わることも
夜の関係が継続することもあった。

とりわけ大きな出来事は、
昨年、苦節2年半、漸くマッチングアプリで
彼女ができた。
そして、2021年のクリスマスの日に、
交際約4ヶ月で別れた。

文字にするとギュッとして、
中身の無い出来事のように、
思えてしまうのは、
単に筆力の無さなのかすらも
わからないままマッチングアプリを続けている。
要は、何を得るためにマッチングアプリを
利用し続けているのか自分でも
定かじゃないってこと。
それはそれで、3年も続けるって凄くない?
なんて言ってくれる人どこかにいますか?
いたら、いいねしてください。

Vol102 思い出は吉祥寺の朝の汗

2020年の夏。
暑さが弱まり、
何もなし得ずに終わる夏をただただ
ぼんやり眺めていた。
終わりかけの夏と
終わりかけの土曜日を憂いながら、
自転車を漕いだ。

夏の終わり、マッチングアプリに、
アバンチュールを求めて。

アバンチュールから、少し距離が遠い、
けど家からはそこまで遠くない、吉祥寺に向かう。

2年前、
26歳だったあの日、一段登って、
全く同じように一段降りた階段。

その日を境に、煉瓦造りの階段を登るのをやめ、
平坦な道を歩いている。

序章。地面から足を離す。

夕方の吉祥寺は寒かった。

「ミスった、シャツ一枚じゃ寒い。」 

それに、

「こいつまだ衣替えできてないじゃん。」

と、相手に思われかねない。

焦った。
しかしここは吉祥寺。古着の町でもある。

思い立った時に買う服を思いがけず長く着る。
そんな服で満たされているから
僕のクローゼットはずっと汚い。

老舗の銭湯を出て待ち合わせまでの時間で
服を探すことにした。

見つけた、藍色のデニムっぽい生地の
コットンパーカー。
薄すぎず、そして好きなブランド。即決した。

「そのまま着ちゃいますんで。」

出会い。1段目の階段に足をかける。

待ち合わせ場所へ着くと、
ダウンベストを着て待っていた。

Aさんは清らかさと危うさを
兼ね備えた陰気な女性で、二十歳らしかった。

6歳年下の女性は、罪深い感じがする。

罪と罰、有名な本の中にある言葉が
反芻された。

「罪は甘く、美しい。
 だから我々は罪を犯す。
 そして、刻まれた罪の記憶は、
 毎年、夏の終わりにふっと現れて、
 甘美な香りを味わわせてくれる。」

僕は罪と罰を読んだことがない。

つまり、嘘。

大きな鳥のモモ焼きつつきながら弾む
会話の端端に漂うAさんの処女っぽさは、
罪悪感を増幅させた。

「私ってどう見えます??」

「いやどうって、落ち着いてるから、
 年齢より歳上に見えるけど。」

「どこで働いてるか当ててください!」

「ユニクロ?」

「アパレル系は合ってるけど、違います!」

「…なんの商業施設に入ってる?」

「アトレとか?マルイとか?」

6歳下の女子って何話せば良いのか
分からなくて尻込んでたけど、
そんなこともなく、
秋の夜風にさらされながら
弾む会話が終電を逃させてくれた。

ワンナイト。階段を登る。

ありがとう。秋の夜風。
ありがとう夏の終わり。

朝、仕事だからと朝早く出て行った
Aさんを二日酔いで見送った。

チェックアウトギリギリまで寝て、
部屋を出ると、エレベーターが故障していた。

やれやれ、階段かよ。

昼間なのに薄暗いラブホテルの階段を
降りながら思う。

夜に登って朝降りる。
そんな日々が一生続くのだろうか。

外に出ると残酷なほど眩しい太陽に、
罪が洗い流された気がした。

自転車を漕ぐと前日に買った古着が湿る。
アバンチュールに浸された古着のジャンパーを
今も着続けている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?