オッペンハイマー:キャストの個人的MVPはベニー・サフディ【映画レビュー(後編)】
↓レビューの前編記事はこちら
※以下ネタバレ有り
感想①:大量の登場人物(ほぼおじさん)の中で際立っていたベニーサフディ(テラー博士役)
題の通りです(笑)
何より、登場人物が多い映画。
しかも、白人の似たようなおじさまたちばかり。1回の視聴ではそれぞれの見分けが難しい(笑)
アカデミー賞助演男優賞はロバート・ダウニー・ Jrが取ったが、個人的なMVPはテラー博士役のベニー・サフディだった。
(写真左)
テラー博士は、オッペンハイマーのマンハッタン計画のメンバーの1人であり、水爆開発に意欲的な人物。
戦後のアイゼンハワー大統領時の水爆開発へも積極的に動くし、ソ連のスパイとして疑われたオッペンハイマーへの聴聞会の際には、彼はオッペンハイマーを裏切るのだ。
登場時間自体は多くないキャラだが、とにかく存在感が凄かった。
テラー博士がオッペンハイマーへじわじわと嫌悪感を募らせていく様子が、セリフなしで表情だけで感じられた。
また、テラー博士はアメリカ出身ではないので英語に訛りがある。
ベニー・サフディ自体はアメリカ人なので、英語はネイティブスピーカー。
テラー博士(ノンネイティブスピーカー)の役として、第二言語の訛りのある英語で話すのもすごく自然だった。
ベニー・サフディについては、他のドラマや映画でも「この人すごいなぁ...」とは感じていたのだが、今回のオッペンハイマーで改めて凄さを感じた。
脇を固めるタイプの俳優だが、まさにキリアン・マーフィー(オッペンハイマー役)のように役と映画にバチっとハマれば、アカデミー賞主演男優賞もあるのでは...?
彼が7年以内くらいにアカデミー賞を取るに懸けておきます(笑)
彼の作品のおすすめはHBOドラマの「The Curse」。
(ベニーはこのドラマ内の役でも実際でも番組制作をしており、この作品では脚本も担当)
感想②:個人的な広島への原爆投下への想い
小学生の時には平和学習として広島へ行ったし、投下された核爆弾(リトル・ボーイ)についても勉強した。
私の曾祖父は、外傷こそ受けていないが、被爆者手帳を持つくらいに原爆投下当時に現場近くにいた。
平和記念資料館で感じた核爆弾のむごさ、怖さについては10年以上経った今でも覚えていて、全世界の人が訪れるべき場所だと思う。
私と同世代の人でも、原爆について学んだことない人が割といるなと感じる。
「ノーラン監督の映画だから」なんて理由でもいいから、映画を見に行って「原爆とは」そして「核兵器とは一体どれだけ恐ろしいものなのか」を知るべきだと思う。
最後に:オッペンハイマーは最後まで「良い人」ではなく、むしろこの世の悪人
この映画は、原爆開発を徹底して推進したオッペンハイマー博士の伝記映画だ。
この映画自体は「多くの人が見るべき」だと思うが、だからと言って「オッペンハイマー」という人間を称賛する気は一切ない。
彼は劇中にも、いかにも世界平和を望んでいるかのようなことを言う。
「この爆弾が、世界大戦を終わらせられる」
こんな言葉には、何も真意がない。
当時のアメリカには既に勝利は見えており、ヒトラーも自殺した。
マンハッタン計画の本来の目的はナチスへの対抗のだったはずだから、民間人を大虐殺する殺人兵器を作り続ける必要はなかった。
でも彼は個人の知的好奇心を追求しただけだった。
エゴの塊だと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?