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「ハマる」という表現

車のラジオから、「ハマっててー」という言葉が耳に入ってきた。炎炎の消防隊のopである「inferno」を最後だけちょろっと聴いた、すぐ後だった。その一言半句から、「ハマる」という言葉は、随分聞きなれたものになったのかもしれないという直観を得、それと同時に、「ハマる」ってどういうことだろう、と疑問がわいてきた。




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「ハマる」は、何故かこの三分の二がカタカナの表記がしっくりくる(偏見だろうが)。しかし「ハマる」にも、漢字の表記の「嵌る/嵌まる」或いは「填る/填まる」がある。漢字表記での意味は、何かの穴や溝、枠などにピターっと入ること。つまり「ハマる(嵌まる)」は、「合体」のようなものに近い気がする。

合体(ハマる)とはつまり、一つものになること。ロボットが合体すると言えば、イメージがしやすいかもしれない。

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ということは、「ハマる」という表現は、自分自身と「自分がハマる対象」が合体するということになるのではないか。自分とその対象が合体し(ハマり)、新しい一つの何かが出来ることになることではないのかと思う。

ということは、この「ハマる」という言葉と、そこから想起される行動は、「即自化」という概念に関連してくる気がする。「即自化」或いは「即自」というのは、何かを当たり前の様に捉えること、客体化・相対化せず、自分がただそうであるという状態に気づかずに、そうなっていること、といった感じだろう。鏡を見たことが無い人が、自分の顔を知らない状態とでも言えばいいかも。

なら一層、「ハマる」は、没我的・没入的なものだと言える。物語、或いはキャラクター、設定などに没入する、没我する、自分と言う存在を消し、区別がつかなくなるということではないのだろうか。つまり「ハマる」とは、対自的に作品に向き合っているわけではないことになる。自分と対象が同一化し、区別がつかない。しかしその反対(?)である、「ハマらない」は、自分と対象が二項対立的に対峙し、外側から対象を見ているということになる気がする。

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おそらく、直観ではあるが、勘違いしてはいけないことがあると思う。「ハマる」の対義語的表現である「ハマらない」は、その作品や人物などが嫌いというわけではなく、「好き」の一つの形であるかもしれないということだ。「ハマっていない」から、興味が無いとか、好きではないという風にすぐに判断するのは、なんか違う気がするのだ。

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もう一度、「ハマる」という言葉について考える前に、ふらっと知り合いに突然「最近何ハマってる?」と、連絡してみた。ワタシの予想では、「ハマってる」という表現を、「何か好きなものがある」に近い表現に読み替えて返事をしてくれと思う。そして返信を見てみると、予想に近いような表現が返ってきた。(しめしめ・・・)

「ハマる」と連絡したのには、もちろん意図がある。漢字の「嵌まる」とか、「填まる」と解釈することが出来る蓋然性と、そのまま「ハマる(好きになる」と解釈される蓋然性の二つを、この「ハマる」という表現は持っている。

「ハマる」が、好きなものがあると解釈されたら、それはある意味で一般化されているということになる。つまり、二重の「即自化」が起こっていることに気づいているだろうか。「ハマる」という言葉が、「好きなものがある」に近い意味で使用されていること、そして「ハマる」という表現自体の即自的要素。ハマるは、「嵌まる」「填まる」という表現のただのカタカナ形であるかもしれないのに、である。

「ハマる」は、文字通り、物理的に穴に嵌っているということを指すこともありうるが、おそらく人々はその物理的な嵌りについて考える事はほとんどない。(一人しか訊いていないけど!)やはり、「ハマる」がある意味で特殊な使われ方をしているのかなと思う。

そういえば、「好きなもの」を英語で表現する時に、「what I'm into」という表現をネイティブの英語の講師のような人が使っていたことを想い出す。「into」は、「in」と「to」という前置詞が組み合わさったもので、「~の中に」という訳。文字通り、「I'm into(私は~の中へ)」というのは、「ハマっている(嵌る)」という状態を指しているのではないだろうか。しかしそれは、「好き」の形が、「ハマる」という表現に限定されている、収斂している、限られているということであり、ある意味で表現の幅、行動の幅が、言語においては狭くなっているのではないかと、思う。

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つまり何を言わんとしているのかと言うと、ワタシ的には、何かを好きになるという行動は、「ハマる」という一つの言語表現だけに限られるわけでは無いと思うということだ。いや正確にいえば、「ハマっていない」からと言って、好きではないと判断するのは違うのではないかということだろう。頻繁に連絡を取るわけではないけれど、友達として好きだと思う人間はいる。ハマっているわけではないが。でもどうして、「ハマる」という表現がコミュニケーションにおいて「好きなものがある」に近い表現に読み替えられるのか、まだまだ気になるところであるね。

とまぁこんな感じで、「ハマる」という言葉について、ほんの少し書いてみました。答えという答えは無いけれど、考える事・疑問に思うことの起点というか、誘発剤になれば、僥倖です。





今日も大学生は惟っている。

あと今回は、なんとなくイラストが有った方が分かり易いと思ったので、描いてみました。うん。楽しいけど、時間かかりすぎた・・・!




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