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ヴァーストゥ 〜 神話の時代より 2

『 ヴァーストゥの神 ー ヴィシュヴァカルマン 』


宇宙を創造したのは神であり、再び創造するのも神である —
ヴァーストゥの聖典に説かれている普遍の摂理です。

今回は、宇宙の建築家・設計者と言われている神「ヴィシュヴァカルマン」とその眷族についてお伝えします。


4つの顔を持つ創造の神

ヴィシュヴァカルマンは、ヒンドゥーの神話において「天地を創造した万能の神、創造主」として知られています。
サンスクリット語で「全てをなすもの」「全知であるもの」の意味があります。
4つの顔を持ち、様々な工具を手にした姿で描かれ、現在も物づくりや技術の神様としてインドの各工場で祀られているそうです。

4つの顔はそれぞれ正確に東西南北を向いており
東の顔は「宇宙の創始者」 
西の顔は「宇宙の創作者」
南の顔は「宇宙の知識人」
北の顔は「宇宙の居住者」
との云われがあります。

この方位の正確さは重要な意味を持ち、ヴァーストゥの建築・都市計画(街づくり)の基盤として伝わりました。
古代インダス文明の都市モヘンジョダロ、ヒンドゥー教の寺院として建立されたアンコールワット、日本の平城京や平安京などは、方位の重要性が活かされている代表的な事例であり、ほかにも、国内外の様々な都城や寺院建築などに見受けられます。
これらは、知識の伝播とともに、時の優れた建築家たちによって顕在化されたものと理解しています。

創造主の4つの顔は、いつも宇宙全体を見据え、あらゆる創造=建築を統治しています。
これにより、純粋な建築にはヴィシュヌ神の「維持の力」と妻ラクシュミ神の「繁栄の力」が宿り、逆に、誤った建築にはシヴァ神の「破壊の力」が働く…
というように宇宙の均衡がなされるのです。

創造の神の眷属

ヴィシュヴァカルマンの4つの顔から最初の眷属が誕生しました。
東の顔からはヴィシュヴァカルマン(創造主と同じ名を冠する者)、
西の顔からはマヌ、
南の顔からはマヤ、
北の顔からはトヴァシュトリです。

やがて、眷属は皆結婚し、それぞれ息子に恵まれました。

4人の息子は、
スターパティ(棟梁)
スートラグラーヒン(設計・製図技師)
ヴァルダキ(デザイナー・プランナー)
タクシャカ(大工)
として知られ、建築に携わることになります。

この中で「スターパティ」は、ヴァーストゥを読み解くうえで特に重要なキーワード(語源)となり、叡智の本質を表します。


次回は、スターパティ(棟梁)について詳しく触れたいと思います。

お読みくださりありがとうございました。


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