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一人の高校生の『好き』がきっかけとなり実現! 気仙沼市で初めての地域活性化コスプレイベント「沼コス」に迫る|イベントレポート

3月3日。気仙沼市において初の試みが催された。

沼コス。街型のコスプレイベントである。イメージとしては、愛知県名古屋市で行われているコスプレサミットを小規模にしたイベントだろうか。街の一区画内で、コスプレーヤーがコスプレ姿のまま自由に散策したり、撮影に興じられるイベントである。


高校2年生が主催し、気仙沼市とともに行われた地域活性化コスプレイベント「沼コス」

発起人は、驚くことに気仙沼市内の高校2年生。若干17歳の生徒が起案し、実現まで漕ぎ着けている。行動力もさることながら、自身の『好き』を街という舞台で表現するに至った強い想いに感動さえさせられる。

「気仙沼の高校生マイプロジェクトアワード 2023」から沼コスは始まった

発端となったのは、気仙沼市が毎年行っているマイプロジェクトと呼ばれる取り組みである。気仙沼市の高校生が、自身の内側と向き合いながらプロジェクトを創造し、取り組み、年末に成果を発表する。その中である一人の生徒が起案し、実現に至ったのが本プロジェクトである。

実現にあたっては、マイプロジェクトで関与しているまるオフィスの他、石巻市でコスプレイベントを行っている団体が関わり、また気仙沼市も協力している。

加えて、沼コスの舞台となった内湾エリアの各店舗が協力し、撮影許可や協賛を行っており、結果的に単なるコスプレイベントの枠を超えた、地域活性化イベントにまで規模が拡大した。

参加者は事前登録だけで100名を超え、その内の8-9割が市外の人々だったというのだから、沼コスの発起人であり主催者が当初想い描いていた、『コスプレイベントを通じて気仙沼市の魅力を市外の人々に伝える』目的も一定程度果たされた形となる。

沼コス当日、市長やホヤぼーやの姿も

主催者である高校生を中心として、気仙沼市や内湾エリアの各店舗の協力を得て実現した沼コス。当日の開会式では、気仙沼市長や気仙沼市のゆるキャラであるホヤぼーやも駆けつけ、まさに気仙沼市一丸となったイベントの様相を呈していた。

開会式で挨拶するホヤぼーやと代弁者
撮影依頼を快く受け入れてくれるホヤぼーや

開会後は、撮影や対話、食事などに興じるコスプレーヤー、カメラマンが内湾エリアの至るところで見られている。各店舗が協力してくれたお陰で、コスプレをしながら食事、食事の様子を撮影できる、全国でも珍しい時間を過ごせるようになっている。主催者が各店舗を回って許可を取り付けたそうで、高校生のエネルギーを強く感じる話であった。

沼コス中の内湾エリアの様子

本イベントの舞台となった内湾エリアは、本noteにおいて度々取り上げたエリアである。

沼コス中の内湾エリアの様子①
沼コス中の内湾エリアの様子②あさ市も行われていた
沼コス中の内湾エリアの様子③
沼コス中の内湾エリアの様子④
沼コス中の内湾エリアの様子⑤コスプレ姿のまま焼きマシュマロを楽しんでいる姿は新鮮だった
沼コス中の内湾エリアの様子⑥
沼コス中の内湾エリアの様子⑦
沼コス中の内湾エリアの様子⑧
沼コス中の内湾エリアの様子⑨

沼コスの第2回を心待ちにする声が集まる

開催まで漕ぎ着け、本番も無事に完了することができた。高校生のマイプロジェクトとして、沼コスは間違いなく成功と言える。一人の高校生の想いや夢が、気仙沼市や数々の人々の協力により実現できた事例として、全国でも有数の地域愛が集まった成功事例と言えるのでないだろうか。

大人版のマイプロジェクトと言っても過言ではない「ぬま大学」に関してもそうだが、気仙沼市は、一人一人の「やりたい」を実現する土壌があると強く感じさせられた。高校生一人の想いを実現させるために街が一丸となって強力するのだから、本当に驚かされる。

これが人口数千人程度の自治体ならば分からなくもないが、6万人近い人口規模の気仙沼市でそれが叶っているのだから、なんと懐の深い地域であり、一人一人が輝ける可能性が詰まった街なのだろうと心より感じる。ある種、人口が減り続ける地方の在るべき形の一つでなかろう。そんな想いを抱く。

さて、一人の高校生の想いと情熱で駆け抜けた沼コスであるが、仙台市などの市外から多くの人々が集まり、思い思いにコスプレで過ごす時間を楽しめている。参加者からは交通の便の良さや初めての参加に歓喜する声が多く寄せられた。

参加者だけではない。立ち寄った高齢の市民からは、若い人々の楽しむ姿を数多く目にできたことへの喜びの声が上がっている。沼コスという試みは、多くの人々にとって、かけがえのない時間になったのは間違いない。

そうなると気になるのがイベントの今後である。第1回目となる今回は、ある種マイプロジェクトの延長上にあるイベントであった。第2回目以降は、間違いなく主催者独自の独立したイベントとなるだろう。また、主催者は現在高校2年生であり、来月からの一年は受験生になる。そこで主催者に『来年以降はどうするのか』尋ねた。すると、

『確かに来年は難しいかもしれない。できたとしても今回より小規模になる可能性は高い。だけどやりたいと思っている。自分は大学卒業後に気仙沼市で仕事をしようと思っている。だから気仙沼市で続けていきたい』

そのような意味合いの力強い回答を得た。毅然とした対応からは、確かな覚悟を感じられており、ただコスプレが好きでイベントをやりたいだけではなく、気仙沼市を盛り上げていきたい強い地元愛を感じている。だから、恐らく沼コスは、今後もどんな形であれ続けられるのだろうと思えた。今後の更なる発展を心から応援したい。

余談:気仙沼で過去に行われていた同人誌・コスプレイベントと近郊で行われているイベントの話

沼コスは、コスプレイベントとして気仙沼市で初となる新たな試みであった。一方で、コスプレを楽しむイベントは過去にも存在している。EVENT JACKがそれである。同人誌即売会という、全国的に有名なコミックマーケットと同様のイベントが、毎年3月に行われていた。

沼コスも3月に開催された点は、EVENT JACKを知る筆者にとって、少しだけ想うものがあった。EVENT JACKは気仙沼市出身の東京在住者が主催となり行われていたが、新型コロナウイルスによる移動自粛ムードの影響を受け、無期限の休止となっている。再開を心待ちにしているが、未だそれが叶う気配はない。

近郊の岩手県大船渡市では、ポケットマニアという同人誌即売会が行われており、こちらでもコスプレが楽しめる。稀にコスプレ限定のイベントも行っている。こちらは15年以上の歴史があるイベントとなっており、とりわけイベントの少ない宮城県沿岸部・岩手県沿岸部より参加者が集まっている。直近の予定は、来月4月24日である。

元々陸前高田市で開催されていたが、東日本大震災により会場として使用していた場所が流出し、以降は大船渡市のリアスホールで開催している。同人誌制作未経験者向けに、チャレンジセミナー形式のミニイベントなども開催し、同人誌文化の醸成も担っている。

岩手県内は、東北の中でも同人誌即売会で賑わっていた県であった。それこそ10年くらい前には、月に一度はどこかしらでイベントが行われていると言って良いくらい、イベントに困らなかった。新型コロナウイルスの影響や少子高齢化の影響、その他運営上の理由などで減っていったが、ポケットマニアのように続いているイベントがある。

とくに有名なのは、奥州市水沢区で開催しているCRUSH!である。直近は3月17日に一関市で同人誌即売会、5月に花泉町でコスプレイベント、7月28日に奥州市で同人誌即売会、11月3日に盛岡市で同人誌即売会の予定である。概ね年3回程度の頻度で実施している。

今年で25周年となる歴史のあるイベントであり、過去には岩手県知事が参加するなど、有名人の参加も見られた。同人誌即売会が最も盛り上がっていた15年近く前には、500人以上が参加するなど、地方の同人誌即売会としては大きな規模となっている。

この他にも花巻市や盛岡市で行われているコスプレイベントがあるなど、とくに岩手県はいわゆるオタクイベントがそこそこの数存在し、それなりの歴史もある。そうした中、(宮城県ではあるが)気仙沼市は新型コロナウイルスの影響で途絶えており、沼コスという形でイベントが蘇ったのは、心より嬉しく感じている。

地方は少子高齢化の影響もあり、同人誌即売会やコスプレイベントが中々成り立たなくなっている。多くの人々は仙台市や東京都へと足を伸ばしてイベントを楽しんでいるが、誰もが気軽に仙台市や東京都へと行けるわけでない。沼コスのようなイベントが、今後も続き、より広い世代、多くの人々が楽しめる機会が生まれることを願ってやまない。


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