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憚りながら・・・。

 オーケー銀座店が、10月17日オープンしました。ユニクロが入居するマロニエゲート2の地下1階と2階の2フロアです。何しろ売場へのアクセスが悪すぎるのです。レイアウトもめちゃくちゃ。品揃えも湾岸エリア・豊洲などのタワーマンションの居住者をターゲットにしているのか、数多ある料飲店を見据えているのか。銀座という魔界でオーケーのセンスが問われます。

 繁盛するか、繁盛しないかは、経営者のセンスです。ユニクロのマロニエゲート店は、品揃えや見せ方が通常の郊外店とは異なります。ユニクロも2001年海外初出展のイギリスでの失敗からスキルよりセンスが大切なことを学んだといいます。今までのやり方では通用しないと分かったとき、問われるのはセンスです。センスとは商売を丸ごと動かす能力です。

 まず、オーケーは、ユニクロと客導線を区別したレイアウトを大家側(マロニエゲート社)に提示すべきでした。オーケーの売場にアクセスするには、3つのルートがあります。一番多いのが中央のエスカレータを使うルートです。エスカレータを利用するには、ユニクロの売場を通らねばなりません。おしゃれな売場を普段着や汚れた白衣で通るのは憚れます。

 また、1階から降りるとエレベータの先はレジになっています。通常のレジは大行列。そこを潜り抜けて、青果売場まで行く気にはなれません。地下1階は諦めて地下2階に降りると、エレベータの先は牛乳など洋日配売場です。弁当や寿司を買おうと思っても時計回りに売場を一周しないと目的の売場に辿り着けません。299円のロースかつ重のためにわざわざアマゾンの奥地に行くようなものです。地下3階は、弁当や寿司のほか、洋日配や菓子、冷凍食品、アイスクリームなどで路面のコンビニやドラッグストアと品揃えは変わりありません。

 2つ目のルートはエレベータを使用するルートです。エレベータが2基ありますが、ユニクロと共用だと、カートが2台乗るのが精一杯です。7割ぐらいのお客が2階から上のユニクロか、7階のレストラン街を目指します。エレベータで地下1階に降りると正面が青果売り場です。やっとオーケーらしい売場に出くわします。地下2階に降りると冷凍食品売場で、殺伐とした雰囲気があります。

 3つ目のルートは、銀座マロニエ通りに面する階段のルートです。地下1階から売場にアクセスするには、混雑したサッカー台の前を通らなければなりません。地下2階には行けません。創業当初(1984年)からある階段なのか?踏面が狭く急です。両手に買い物袋または段ボールを抱えて昇るのは高齢者には大変な負担です。

 ユニクロが海外初出店のイギリスで失敗したように、銀座は魔界なのです。棲息する人を特定するのは困難です。

 かつてこの地には、ダイエーが経営するプランタン銀座がありました。バブル絶頂期にはキラキラと華やいでいました。モンブランで有名なパリの老舗「アンジェリーナ」が出店し、トレンド感の高い、時代の半歩先を行くファッション衣料を中心に、ファッション雑貨、生活雑貨、スイーツやワインなどを提供していました。

 おしゃれに着飾った人が多い銀座のど真ん中に、ノーメイクでエプロンを着用しサンダル履きの主婦が紛れ込んだことを想像してください。高級外車やSUVが居並ぶ中で、国産の20年落ちのオンボロの中古車に乗っているのを想像してください。郊外型スーパーではごく自然な風景ですが、銀座の一等地では居心地の悪さを感じると思います。

 絶頂期のダイエー碑文谷店は1990年211億円売ったとされます。オーケーの港北ニュータウン店もかつては120億円売ったとされます。オーケー銀座店もそれぐらい売れるとドル箱店舗になると思いますが、そう期待させるセンスがないようです。

 センスとは、商売丸ごと動かす能力です。右回りを左回りに変える。動いているものを止める、止まっているものを動かす。これはスキルやテクニックでできるものではありません。センスは 「その人らしさ」 の総体です。総体は、経験、知識、立場、価値観、人格が全て合わさってでき上がります。経営者の個性そのもの、余人に代えられないものなのです。

 センスはスキルのように簡単に身につくものではありませんが鍛えることができます。センスを鍛えるには、疑似体験を含めて、場数を踏むことです。場数とは、戦争のような修羅場です。次世代の経営候補者には、場を用意することが現在の経営者の役目です。

 次世代の経営候補者をリーダーにして、「チーム」を組むのです。「チーム」で「オーケー銀座店」という全く異なるフォーマットを完成させるのです。

 組織とチームは違います。組織とは、ある構造を持って安定的に存在する人間の手段であり、ある種のシステムを意味しています。一方のチームは、組織の部分集合です。組織という器の中で、チームという単位が実際に日々の仕事を動かしています。チームは「現場」です。現場ごとにチームがあります。

 軍隊で言えば、地上軍が組織で、特殊部隊がチームです。上から下へのマネジメントによって設計される組織力に対して、チームは、下から、現場の信頼関係の中から湧き上がってくるものです。リーダーは次世代経営者候補から抜擢し、メンバーはスキルを持った人を募るのです。中途採用でもいいじゃないですか。オーケーの理念を浸透させるのです。

 そのスキルとは、飲食店が好む食材に長けていること。野菜ではA級野菜、刺身の「つま」、精肉ではブランド鶏、内臓や副産物、鮮魚では大間本鮪などブランド魚、ウニ、からすみなど高級食材、ブランド牡蠣など貝類、海苔、削り節、煮干しなど乾物、料飲店が好む珍味などの扱いや知識に長けた人物です。寿司は寿司専門店、割烹のレベルの技術を持った職人です。

 そして、スキルをもとに2階立て、3階立ての品揃えをするのです。1階立ての品揃えは、既存のオーケーの品揃えです。ナショナルブランドを地域一番の低価格で販売することをモットーとします。2階立ての品揃えは料飲店向けの品揃えです。近隣に居酒屋が100軒あれば、銘柄鶏は10種類必要です。ブランド葱は10種類以上、サツマイモも10種類以上、トマトは30種類以上必要です。

 3階立ての品揃えはオーケー銀座店でしか買えない商品です。プレミアワイン、シャンパン、焼酎、日本酒など数量が多く集まらずチェーンストア全店では扱いにくい商品、PBなどです。

 憚りながら、私はオーケーの「打ち手」に口をはさむ資格も立場でもありませんが、あえて私がチームリーダーだったら、次の「打ち手」を実施します。

①     地下1階、2階の売場と駐車場に直結した専用大型エレベータを2基設置するよう大家に働きかけます。地下2階は寿司惣菜の売場と洋日配の売場を交換します。レジの位置も変えます。

②     青果は前述した品揃えに加え、小菊や花穂、京丸姫ねぎなど刺身の「つま」、ハーブは採算を度外視した安値で販売します。

③     鮮魚は、マグロの専門店を目指します。国内から海外の生本鮪を中心に、冷凍インドマグロ、脳天、ほほ肉、アゴ、カマ、尾の身など希少部位も扱います。SKUもブロックからサク。スライスまで充実させます。

④     精肉は、銀座のレストランで一番使われている岩中ポークなどの銘柄豚、南部どり、水郷赤鳥、丹波黒どりなど銘柄鶏を集めます。焼鳥店が必要とする脂肪肝の鶏レバーは扱いが必須です。

⑤     ロースかつ重299円は安いとマスコミははやし立てますが、かつ重は毎日食べるものではありません。多い人で月1回、通常は1年に1回食べるか食べないかでしょう。毎日食べても飽きない、焼魚弁当や海苔弁当を充実させます。ハンバーグや唐揚げ、豚生姜焼きは1.5人前を399円などの1人前の価格で販売し、物量単価の安さをアピールします。自家製ローストビーフを100g398円で売るとヒットするはずです。

⑥     冷凍食品は、ニッスイ、マルハニチロ、ニチレイや味の素などNBのラインナップを縮小し、銘店のスィーツや銘店の餃子を品揃えします。アイスクリームも業務用やご当地アイスを増やします。

⑦     現状でも友桝富士山天然水強炭酸水500mlを36円で販売し、銀座地区に納品している業務用問屋が震えあがっていると思います。一般食品は、醤油と味醂、塩、海苔、煮干し、削り節などの築地の専門店を彷彿させる品揃えを目指します。

⑧     現状も菓子は珍味に力を入れていますが、ティラミスチョコやわさび鉄火の扱いを充実させ、ドン・キホーテを凌駕する品揃えを目指します。

 憚りながら、オーケーは、組織ではなくチームで特殊な立地の店舗を運営する、そんな時期に来ているのです。繰り返しますが、チームで勝つには、リーダーのセンスが問われるのです。

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