思い通りの②
仕舞いには、水を飲み込むにも時間がかかるようになった。
アモキサンと、ドグマチールは、私には功を奏すどころか、
生理は止まり、
なぜだか、母乳が出るようになり。
脳みそは、蜂の巣のように、穴だらけになった。
人の目は見れない。
母が来て、『何か食べなさい』と言う。
その時、血圧がどうだったのか、今では覚えていないが、動悸は24時間だった。
眠れない。
ウトウトしても、はっ、として目が覚める。
眠るのはこわい。目が覚めるのは、もっとこわい。
いつしか、始発電車の音が恐怖となった。
人は、眠れないと、壊れる。
それがよくわかった。
眠れないなら、死んだ方がまし。
お腹がすいた。しかし、何も飲み込むことが出来ない。
その繰り返しだった。
試しに、ヨーグルト、プリン、ゼリーなどの
半固形物を口に入れてみた。
喉の、扁桃腺のところまでは到達するが、
嚥下の仕方を忘れた。
唾は、どうやって飲み込むのか、
いや、唾も出ない。
青い顔。
夫が言う『入院したらどう?』
精神科病棟。
治りたい、という気持ちだけはあった。
母と、夫。
二人に付き添われて、
初めて、精神科病棟というものに訪ねてみた。
男性の医師は、私を一瞥しただけで
『入院だね、これは。
家にいたら危険だから、命が。』
と言う。
後に、分かったことだが、
この医師は、38歳の私と同年代の、
精神科医としては誠実、優秀、な
18年間変わらずに主治医をしてくれるような人物であった。
夫が、入院の手続きをする間、母は泣いていた。
なんで、あなたが壊れたのか。
明るくて、ユーモアがあり、人から好かれる娘。
水も喉を通らないような、パニック発作と、対人恐怖、強迫性障害、不安神経。
長い、長い、旅のはじまりだった。
つづく。
よろしければサポートお願い致します!いただいたサポートは活動費として使わせていただきます☺️