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色づく黄昏

 ゆっくりと黄昏は迫っていく。一日はもうすぐ終わるんだと胸がまた引き締められていくこの喪失感はどこから来るのか?切なくなる。そして高鳴る心のリズムが抑えられなくなる程に激しくなる。いっそ止まってくれたらどんなに気持ちが楽になるかって両手で肩を抱きしめる。叫んでみたらどうだろう。ただ喉が痛くなって声もかすんでより疲れるだけかもしれない。

  誰かの事をふと想うのと同じように熱くなっていく胸の傍らに強い魂が現れてこんな虚しさを掻き消そうとし始める。いったんどのくらいで掻き消してくれるか不安と期待が行ったり来たり躰中を駆け巡る。誰も知らない心の闇を早く拭って欲しい。誰にも気づかれずに早く浄化して何事もなかったかのように暗い夜を迎えたい。夜が来る前に今日一日を振り返り自分自身と向き合いながら明日を夢見る。それが大事なことだと魂は教えてくれてる。

 太陽が地平線に沈むのを見ながら、赤い夕陽の温かさに触れて心のリズムはまた緩やかになってくる。一旦激しくなって収拾が利かなくなってた間がとっても長く感じたのは初めてだった。漸く苦境から解放されて明日したい事を直向きに考える。頭の中をフル回転させていると次第に食欲が湧いてくる。もう明日どころでなく今夜何を食べたいか思いめぐらす始末。そしたら明日が何だか楽しくなってくる。早起きして晴れていたら散歩しようか、曇っていたら落ち着いた静かな音楽を聴いて瞑想に励むのも悪くない。

 黄昏ていく空はいっそ色づき花火のようにすぐ色褪せていく。ゆっくり鎮まる胸の高鳴りは段々癒されていく。見違えるほどの変化を感じる。優しい気持ちに戻っていくと新鮮な空気が肌に沁み込んでくる。瑞々しく今にも震え出しそうなくらいの液体感が膨れ上がってくる躍動感が躰中を循環する。黄昏の中で目覚めていく自分に気が付いた。

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