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IPO市場回復の歴史

9月はArm、インスタカート、クラビヨと上場が続き、21年12月のサムサラ上場以降、1年8カ月の長い冬の時代を経て、いよいよIPO市場の回復かと期待が高まっています。引き続き好調な米景気指標を受けて、金利が高い状況が続きグロース株には厳しい状況が続くと言われていますが、今回はこれまでの金融危機ではIPOがどのように回復してきたか解説できればと思います。

IPO価格から初日終値への上昇率

まずは9月の上場です。Armは長い冬の後の初の大型上場ということもあり、期待と不安で8月から色々な事が言われてきましたが、結果としては9/14の初日終値はIPO価格を25%上回り、希望の光となりました。そして9/19にはインスタカートが同じく12%高の33ドル、9/20にはクラビヨが9%高の32ドルで初日取引を終え、いよいよIPO回復が本当かと期待が高まっています。(一方でArmの株価はその後、高い金利が続きそうとの観測で1週間ほどで20%ほど下げ、公開価格近くの50ドル、時価総額$52B近辺で推移しており、まだまだ油断できない状況が続いています。)

では過去の金融危機時には、IPO市場はどのような回復の道を辿ってきたのでしょうか。2000年のドットコムバブルでは、1年半近く株価が下がり続け、2001年のIPOは前年から1/3ほどの141件に減りました。株価は51%まで下がった2002年10月頃ようやく底を付けました。その年に上場したのがPayPal(2月)やNetflix(5月)です。同年はQ4までじりじりと株価が下がり続けたのを考えると、中々厳しい状況だったかと想像します。

2008年のリーマンショックでもIPO数は前年から1/4ほどの62件に激減し、株価も58%まで下がったところでようやく底となりました。2009年もIPO数は79件と少なく、2010年からようやく回復の兆しを見せ、その時に上場したのがテスラでした。

金融危機時の市場回復(Bloombergより)
IPO数の推移(Statistaより)

では今回はどうでしょう。株価は2022年1月にS&P500が4800近くをつけたのをピークに、9月に25%下落の3600まで下がったところから回復基調にあります。IPOは21年と比較し1/5以上減少の181件で、事実上クローズしていたような状況でした。そしてようやく23年9月、ArmやインスタカートのIPOで回復の兆しが見えてきたのが現在となります。

S&P500の推移

当時と比べると株価の落ち込みも25%と半分ほどで、ソフトランディングの成功といけば良いのですが、まだまだ100%安心はできないかもしれません。ユニコ―ンリストにはバイトダンス、スペースX、Shein、Stripeと時価総額5兆円超えの巨大企業が並ぶ中で、これからも大型上場が続くのか、相場に一波乱あるのか、引き続き目が離せない状況が続きます。

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