【読書note_008】サードウェイ 山口絵理子

妥協しない「サードウェイ」を行く
本書は、「途上国から世界で通用するブランドを作る」ことを
スローガンに掲げ、バングラデシュやネパールなどの発展途上国から
鞄や服、ジュエリーなどを製造・販売する株式会社マザーハウスを設立した著者が、相反する二軸を掛け合わせて新しい道を創造する
「サードウェイ」の考え方について、解説した本です。

本書では、マザーハウスを設立し奮闘する中で、
著者が葛藤し乗り越えてきた二項対立の例がいくつも挙げられています。
例えば、
 ・社会性とビジネス
 ・デザインと経営
 ・個人と組織
 ・大量生産と手仕事
 ・グローバルとローカル
などです。

私たちは、仕事や日々の生活の中で、二つの相反する選択肢を
迫られた場合、双方のメリットとデメリットを比較した上で、
どちらかを選ぶということが多いのではないでしょうか。
そして、どちらかを選ぶことができない場合には、
両者の間を取るという妥協点を探すことも少なくありません。

しかし、著者はそのような姿勢を明確に否定します。

私は両者の交差点で生まれるアイディアや共感、相互作用が、
もう一段高い次元での解決策、を広く社会に提供するものであると信じている。(P11)

相反する二軸をかけ合わせて理想の「サードウェイ」を模索する著者が、
無性にカッコよく思えました。

「サードウェイ」を歩むための視点
それでは、相反する二つの軸を掛け合わせるために、
どのような視点を持てば良いのでしょうか。
本書の中では、サードウェイを見つけるためのアイディアや考え方が数多く紹介されていますが、私が印象に残ったのは次の2つです。

1つ目は、何を作りたいのか、そして何を大切にするのかを、
自分に問い続けるということです。
これは目的を明確にすることに他なりません。

例えば、大量生産と手仕事のサードウェイとして、
『美しい職人芸を、効率的なオペレーションでつくる』
という例が本書で紹介されています。
これは、
「一人でも多くの人に、発展途上国発の素晴らしいプロダクトを届けたい」
という思いからブレずに、答えを模索し続けた結果だと思います。

私達は、何か問題に直面し、その解決方法を模索する時、
自分たちが採ることのできる選択肢の内容ばかりに捉われることが
多いように思います。
しかし重要なのは、組織のビジョンや目的、その問題を解決することで提供したい価値が何なのか、ということであるはずです。
こうした「そもそも論」に戻ることが、単純な二項対立から離れるために
重要だと感じました。

そして2つ目は、面倒くさがらずに手が動かし、試行錯誤するということです。
これは、ただ頭で考えたり、周囲と議論するだけで終わるのではなく、
実際にやってみるということです。

著者は、
「社会性とビジネスの両立」
をテーマにマザーハウスを起業していますが、
最初はバッグ作りのノウハウもなく、現地でつくった160個のバッグを日本に持ち帰る方法さえ分からなかったといいます。
それでも、毎日手と足を動かしてものづくりに励み、モノができたらそれを販売する方法を考え、目の前のことに夢中になりながら試行錯誤した結果が、
生産5か国、販売38店舗を展開するの現在のマザーハウスにつながっているのです。

組織の中で仕事をするとき、一般的には方向性はもちろん、具体的なやることを決めてから動き出すことがほとんどでしょう。
著者のように、素材も決まっていない、何を作るかも決まっていない状態で走り出してしまうことなど、あり得ないのかもしれません。

ただ、強い気持ちとビジョンがあり、そのゴールさえ見失わなければ、行動しながら見つけ出す答えが、唯一無二のものになるのだと感じました。

相反する二つの考え方があった時に、ただその妥協点を探すのではない、より強固なサードウェイを探す。
それは安易な模範解答がインターネットの世界に溢れている現代社会では、
私達一人一人が持つべき理想なのかもしれません。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。
Happy Reading!

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