【読書note_013】AI vs 教科書が読めない子どもたち 新井紀子

AIと人間の決定的な違いとは
本書は、数学者であり、人工知能プロジェクト『ロボットは東大に入れるか』のプロジェクトディレクタを務める著者が、AIにできることとできないことを具体的に説明した上で、教科書を理解できない現代の子供達の読解力に警鐘を鳴らした本です。

本書を通読してまず面白いと感じたことは、著者が可視化することに成功したAIと人間の違いです。

著者は、「東ロボくん」プロジェクトとRST(リーディングスキルテスト)を通じて、
・AIに代替されてしまう能力は何か
・AIと差別化できる能力は何か
を明確にしました。

さらに、RSTを通じて読解力を点数化することで、比較可能な指標にまで昇華させた功績は、日本の将来を担う子ども達への教育の課題を浮き彫りにしたという点で、広く称賛されるべきものだと思います。

本書で著者が伝えたいメッセージはシンプルです。
・AIは「意味」を理解することができない
・人間は「意味」を理解することができるため、読解力がAIに仕事を奪われないための重要な鍵となる
・しかしながら、近年子ども達が教科書を読解できておらず、このままではAIに代替される人材が続出する
ということです。

子ども達は、教科書が読めないことに気付けない
・子ども達がなぜ教科書を読解できないのか、
・教科書を読解できるようにするためにはどうすべきなのか
という問いについては、続編の『AIに負けない子どもを育てる』に譲ることとして、私が問題意識を持ったのは、
・なぜ子ども達は、自身が教科書を読解できていないことに気付けないのか
という点です。

私が立てた仮説は、
●子ども達は、「読む」ことがどういうことか分かっていないのではないか
というものです。

本書のP224に、RSTを受検した先生方の感想が掲載されています。

『教科書を読むことがこんなに難しいこととは思わなかった』
『普段いかにきちんと読んでいないか痛感した』
『日ごろいかに自分があいまいに文を読んでいるかを理解した』

学校で子ども達に教えている先生でさえ、RSTを受検したことで初めて、自分達が教科書レベルの文章を深く読めていないことに気付いたのです。
ましてや、子ども達であれば当然、自分達が教科書をきちんと読めていないことに気付けていないのではないでしょうか。

私見ですが、「読む」ことには
①情報を取り込む = インプット
②情報を理解・解釈する = 処理
③情報を取り出す = アウトプット
の3つの段階があると考えています。
子ども達に限らず、私達の大半は①の段階で止まってしまっているのだと思います。

文章の中の文字列を追いかけて、何となく理解した気になっている状態。
多くの子ども達は、こんな「分かったつもり」の状態で、かつ自身が「分かったつもり」でしかないことを自覚することもできていないのです。

一般的には、理解度を確認するためにテストがあります。
しかしながら、本書の中でも指摘されている通り、学校のテストは暗記するだけで乗り切ることができてしまう代物です。

加えて、プリントやワークシートを中心とした授業を展開している学校が多いことを鑑みると、暗記でテストや受験を乗り切ることを推奨しているとさえ言えます。
これでは、読解力が身につかないことも自明のことでしょう。

そうだとするならば、私達が読解力を向上させるためにしなければいけないことは、「読む」3要素のうち、②の「処理」と③の「アウトプット」を繰り返すことではないでしょうか。

RSTは読解力を客観的に計測することに成功していますが、本来読書とは主観的なものであり、ただ読むだけで終わらせているうちは、自身の理解度を計ることは困難なのです。

そのため、読んで理解したことをアウトプットし、可能であれば、それを他者のアウトプットと比較することが重要になるのだと感じました。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
Happy Reading!

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