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科学的に正しいフェルメール真珠の耳飾りの少女の描き方(フェルメール転生プロジェクト第3話)

https://www.youtube.com/watch?v=0bV-sANX4PI

今回はフェルメール作品の再現です!
まずインプリマトゥーラ(下地:イエローオークル)を塗ったキャンバスに白黒コピーから原画(等倍)を転写します。

チャコールブラックをぬります。

なにげにこのチャコールブラック輸入品です。ちゃんと植物の炭から作った高品質の黒顔料ってなかなかないんですね。(※ボーンブラック:動物の骨を焼き砕いた顔料とする説もあり)

濃淡の絵ができます。
さらに白(鉛白)をぬります。

ここで白黒の絵画が完成します。ここでしっかり白と黒のコントラストをつけておくことが必要です。

ここに絵の具を層で重ねて完成させていきます。これが古代ローマの壁画にも用いられた技法と言われ、レオナルド・ダ・ヴィンチの時代にはテンペラでも用いられ、レンブラントの頃に完成されたと言われるグリザイユ画法です。油絵特有の重ね塗りが生きる描き方になります。

まずイエローオークルを重ねます。

油彩で人の肌を描くときにはよく使われたのがこの絵の具です。服の色のベースにもなります。

乾燥するまでに間があるので(使用している油も当時と同じくリンシードオイル等を使っているので現在の鉱物油と違ってなかなか乾きません!でも油絵特有の臭みがないのでよい!)
背景の黒にインディゴを重ねました。黒の中にほのかに青緑色を感じられますか?

本当はウェルドという黄緑の顔料も使用されて背景にカーテンが描かれていますが、現在は退色して肉眼では見えません。

服と顔にローアンバーを重ねていきます。ターバンのシワもこれで描きます。

肌の赤みと唇にはマダーレイクとバーミリオンの赤と朱色を使います。本当はカーマインという虫由来の赤顔料も肌の赤みとして使われていたようですが退色してしまっています。

ターバンに鉛錫黄色とイエローオークルを重ねます。鉛錫黄色は牛乳を注ぐ女でもお馴染みの黄色顔料です。鉛入りの顔料は日本では入手しにくいので海外から輸入しました。

ハイライトに鉛白を使います。現在主流のチタニウムホワイトよりマイルドな白です。これももちろん輸入です。

次はターバンの青です。皆さん大好きなウルトラマリンの登場です。ラピスラズリを粉にして精製した金より高い顔料です!本物はかなり粉っぽい書き味です。

ターバンの白い部分は炭酸カルシウム(チョーク)です。鉛白より粒が大きく、さらにマイルドな白です。

さらにもう一度ウルトラマリンを重ねます。ここは贅沢にかなり厚塗りです!ここだけ筆致(筆の跡)がはっきりしているのもフェルメールのこだわりかも知れません。

黒とインディゴで背景をもう一度重ねて輪郭含めてキレイにしていきます。輪郭はぼかし気味にするのがこの時期のフェルメールの特徴です!

最後に鉛白だけで真珠の耳飾りを描きます!

完成です!

真珠の耳飾りの少女/Vermeer AI Museum2023

科学調査で検出された顔料を集めるのはなかなか大変でした。現在の真珠の耳飾りの少女より多少鮮やかな色味な気がします。これが数百年経つと退色してこんな色になるのかな~(゜ロ゜)<色の混色や重ね方が甘かったのでは(爆

次回はついにAI作品を油絵にします!

お楽しみに!

◆ネット上の参考文献リスト(Reference list)
Vermeerの使用した顔料について(pigments of Vermeer) http://www.essentialvermeer.com/palette/palette_vermeer'_palette.html
Vermeerの描き方について(painting of Vermeer)
https://www.youtube.com/watch?v=f6hbe2at0Yg https://www.youtube.com/watch?v=r1gS0gjrzs4
Vermeerのサインについて(signature of Vermeer) http://www.essentialvermeer.com/signitures.html
白亜地の作り方(how to make chalk ground) https://www.youtube.com/watch?v=LBsTXt4YFzU
天然ウルトラマリンの精製について(how to make ultramarine) https://torilogy.net/category/series/ultramarine

以前の記事はこちらから
◆フェルメール絵画を再現する(フェルメール転生プロジェクト)第1話フェルメールブルーを再現する

◆フェルメール絵画を再現する(フェルメール転生プロジェクト)第2話17世紀オランダのキャンバスを再現する


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