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草食動物の抗菌薬は難しい(獣医師ふーのやりなおし感染症シリーズ)


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ウサギや馬の盲腸には、セルロースを分解して栄養素を作ってくれる細菌などの微生物がたくさん!
だから、細菌をやっつける抗菌薬はモノによっては酷い下痢を起こすこともある!
使える抗菌薬の種類は犬や猫より少ないんだよ!

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ウサギは我々小動物診療獣医師にとって犬や猫とはまた別の注意ポイントがある動物です。

ウサギさんは植物から摂取した植物繊維を腸管の中に住んでいる微生物に分解させています。その代謝物であるタンパク質やビタミンを吸収して自分の栄養にしています。

なぜそんなまわりくどいことをするのでしょうか?実は、植物の繊維(セルロース)はとても硬い物質なので動物の消化酵素では消化できず、栄養を十分吸収することができないのです。

そこで草食動物は自分のかわりにセルロースを分解し、微生物が産生する物質をとる戦略をとっているのです。微生物をたくさん住まわせるために、胃や腸が大きいのです。例えば牛は胃を大きくして、そこにたくさんのセルロースを分解してくれる微生物を飼っています。

ウサギやウマは胃袋ではなく、盲腸を大きくして微生物を住まわせています。

ちなみに人間は肉食性の強い猫や犬と比べると腸が長いです。人間はどちらかというと腸をセルロース発酵に使っているのですね♫


さて、そんな特徴を備えるウサギさん。犬や猫を診察しつつ、ウサギさんの診察をする時に注意が必要なことの一つが抗菌薬です!
抗菌薬は、細菌感染の治療に使うもので菌をやっつけてくれます。この抗菌薬は悪い菌だけでなく、感受性のあるあらゆる細菌に効いてしまいます。つまり、植物のセルロースを分解して体の栄養源となるタンパク質やビタミンなどを作ってくれる細菌までやっつけてしまうことがあるのです!こうした抗菌薬を使うと、重い下痢や便秘などを起こします。

だから、ウサギさんの抗菌薬は犬や猫ほど選択肢がありません。
ウサギと同じ様に盲腸を微生物マンションとして使っている馬も使える抗菌薬のバリエーションには限りがあります。

私はいろいろな抗菌薬が使える雑食の人間でよかったなあと思いました。

参考:
BTCニュースvol.100 競走馬の感染症と抗菌薬の使い方 帆保誠二

ウサギはなぜ糞を食べる? 坂口 英 岡山大学農学部学術報告 Vol. 104(2015)

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。