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小さな版画のやりとり〜茅ヶ崎市美術館

昨日、急に時間が空いてしまったので、年末から気になっていた版画展に行ってきました。
茅ケ崎市美術館で開催されている、
「小さな版画のやりとり 
斎藤昌三コレクションの蔵書票と榛の会の年賀状

第一部は、紙の宝石といわれる「蔵書票エクスリブリス」の展示。
第二部は、棟方志功や駒井哲郎など有名な版画家を含む161名が参加した
はんの会」という年賀状交換グループの年賀状の展示です。

エクスリブリス(蔵書票)とは、所有者を示すために書物の見返しに張り付ける小さな紙。自身のものを制作したり、交換したり、収集したり、いろいろ楽しみ方があって、愛好家たちがいたようです(私もすき)。

いまでも版画工房が蔵書票の展覧会をすることがあって、以前展示を見に行ったときは、あらかじめ版画で制作された蔵書票に自分の名前の活字を並べて、活版印刷機で印刷するという体験をさせてもらったことがあります。

活字を探して並べて組んで、
活版印刷機でガッチャンガッチャンやらせてもらいました。

版画で刷られた蔵書票はまさに小さな作品なので、額に入れて展示されるといい感じなんですよね。
昔のものなので紙は黄ばんでいるし、絵柄もレトロ。それがまた雰囲気があります。
数枚ヨーロッパの人のものもあって、ローマのサンタンジェロ城の版画があったり、和風なレトロ感とはまた違う素敵さでした。

今回の展示は、書物研究家の斎藤昌三さいとうしょうぞうという人のコレクションの一部が展示されているそうです。
蔵書票の魅力を国内でいち早く広めた方だそうで、晩年は茅ケ崎市立図書館の館長も務められたとのこと。
「猥褻本の研究、編訳でも知られる」とあって、いまでいうエロ本の写真ではなく版画版みたいなものも展示されてあって、中身ちらっと見えましたけど、版画というのがなんともレトロで、もっとちゃんと見たかったような・笑。

Wikipediaを見ると、若いころ「横浜の生糸商原合名会社に勤務」とあって、私の親戚も昔、横浜で生糸貿易に関わっていた人がいたそうなので、ちょっとご縁を感じました。

蔵書票の隣には、装丁から徹底的にこだわった本が並んでいて、たとえば郵便の宛名を本の装丁に使っていたり(北原白秋の速達など?)、手に取って見てみたいくらいでした。
昔は、本は貴重だったし、作りも凝っていて素敵なものがあったな・・と思います。

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第二部の部屋は、童画家の武井武雄という方が中心となって、「はんの会」でやりとりされた版画の年賀状がずらっと。いまより一回り小さい、手の平くらいの葉書に版画で絵や文字が刷られていて、見応えがあります。
出来が悪いと翌年は参加できなかったりだとか、ちょっと厳しいところもあったよう。
昭和21年とか22年とか終戦直後で、時代を感じるものもあります。

この先、消えていくであろう年賀状という存在。
こんなふうに作品としてやり取りされていたら、ずっと後になって、時代を感じられる貴重なものになりそうなのに、と思います。

展示物自体が小さいので、展示の部屋もそう広くなく、
茅ケ崎市立図書館の協力を得ての展覧会ということもあり、入場料も400円というささやかさ。こじんまりとして良い展示でした。

以前から思ってることですが、
自分は、蔵書票を貼りたい本をどのくらい持ってるのかな?と。
「これは私の本です」と見返しに蔵書票を貼ることまでしたい本。
貼るか貼らないか、貼りたいかで、その本が自分にとってどの程度のものなのか、測れる気がします。
いつかやってみようと思いつつ、そのままになってますが。

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茅ケ崎市美術館は、和風のお庭や松の木が並ぶ高砂緑地の中にあり、外に出ると梅の花がほころんでいました。
もう春なんですね・・・。

入ったことはないけど、2階はカフェです。




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