ギターから刀へ

中古のgibson製exploreを手放した。
デザインが奇抜で、flyingv同様にヘヴィメタルバンドのギタリストが好んで使うギターの一つだ。
ロックミュージックは好きだが、ヘヴィメタルはあまり聞かない。ただ、いつかのギター雑誌の表紙に、U2のtheEdgeが手にしていたのを見て一目惚れしたのを覚えている。
U2の曲にはあまり激しい楽曲は少なく、theEdgeも、ギタリストとしては他のロックバンドのギタリストと比べるとテクニカルな方ではない。それでも、このバンドの創り出す音には、何か神秘的というか、心が踊り出すようなイキイキしたサウンドが感じられる。
'Where the streets have no name'や'vertigo'など、いたって単純なロックの中に、魂の叫びが聞こえる。
他に好きなロックバンドは洋楽・邦楽を問わずいくつかあるが、やはり、どうしても自分の学生時分に活躍していたバンドばかりになってしまう。
最近、バンドの復活を果たしたイエローモンキーは、大学の頃にコピーバンドをしていたこともあり、今でも好きなバンドの一つだ。
当時、同じ学部内のイエローモンキー好きの仲間が四人集まってバンドを結成した。四人ともバンド未経験者ではあったが、それぞれのパートを各自が自宅で個人練習し、ほぼ毎週、大学付近のスタジオに足を運んだものだ。
いわば、'THE YELLOW MONKEY'は、私の青春そのものであった。
あの頃ほど何かに没頭できたことはないかもしれない。けして上手くはなかったが、それでも下手な自分から逃げずに挑戦し続けた。ギターコードがきちんと握れず綺麗な和音が出せなくても、諦めずに指にまめができるまでギター弦を押さえ続けた。自分一人だけではなくメンバーの一人一人が努力を続けられたから、何度かバンドライブにも参加し、大学生活の大半を充実させることができた。
今、あの頃の仲間とは連絡をとっておらず、それぞれが別々の道を歩んでいるが、こうして振り返ってみると、彼らのおかげで楽しい思い出がいくつもある。感謝である。
大学を卒業後もメンバーを募って、いくつか他のロックバンドを組んだことがある。あくまで趣味の範囲で月に数度集まる程度だった。だが、学生の頃のようにはいかず、社会人バンドで心底楽しめたと言えるくらいの思い出は残っていない。むしろ、人間関係のトラブルで嫌な思いをした記憶があるほどだ。
後に、趣味でこれ以上バンドをやっても楽しめないということがわかった。それでも、ギターは手放せなかった。いつかまた、良い仲間に出会えるかもしれない、そんな気持ちも少なからずあった。
休日になると、たまにフォークギターを手にして、ジャカジャカとコードをかき鳴らした。それでも、ロック好きな自分にとっては、いつも物足りなさを感じていた。
ギターをやめたら、無趣味になってしまう。
色々なジャンルから、興味が持てそうなものを探した。その過程で、ギターから刀に持ち替えるまでに、幾度の失敗もあった。
真剣ではないとはいえ、居合刀は安いものではない。
でも、やると決めた。
だから、ギターを手放すことにもう迷いはなかった。その売却益で、家族に負担をかけることなく、刀や道着などの衣装を購入した。
次はこれで、自分を磨く。
そして、居合道と向き合うことになった。
家族との時間、仕事の時間はもちろんだが、自分一人の時間も一切無駄な時間のないように、悔いのない人生を送るように、常に一生懸命になれる自分でありたい。

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