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「行間を読む」という深遠な言葉があるように

ルビ【ruby】
振り仮名用の活字。また、振り仮名。英国でルビーとよばれた5.5ポイントの欧文活字の大きさが、和文で5号活字の振り仮名として用いた7号活字とほぼ等しかったところからいう。(デジタル大辞泉)

最近、noteでルビが使えるようになった。
正直、うっとうしい。
喜びの声が多い中でこんなこと書くのもなんだけど。

ルビは難読漢字が読める魔法のワザ。
けれど多用すると行間がなくなって読みづらいことこのうえない。
諸刃の剣だ。

昔、編集者をやっていたから、ルビの取扱の難しさは知っているつもり。
一般に著者はルビをつけたがらず、編集者はつけたがる。
多すぎず少なすぎずでルビを振っていくサジ加減の難しさよ。

ところが。
著者=編集者のnoteでは、ルビはいとも簡単に振れてしまう。
結果として総ルビに近い、読むに堪えない記事もすでに登場している。
本文100字あたりルビは1か所まで、くらいの制限があったほうがいい。
「行間を読む」という深遠な言葉があるように、行間はとても大切なのだ。

先日、僕も一度だけ「おか系」と使ってみた。
でもきっともう二度とこの機能は使わないだろう。
「陸(おか)系」と書けば済むからだ。

そういえばプロの作家が多用することもあった。
終着駅ターミナル」とか「寝台特急ミッドナイトエクスプレス」とか。
おっと、西村京太郎とバレてしまった。
こうした特殊読みの場合にはルビを振るしかなく、やむを得ない。
「終着駅(ターミナル)」「寝台特急(ミッドナイトエクスプレス)」では読み方というより説明にしか見えないから。

***

書籍の世界では、ルビの振り方にはグループルビ(単語ごと)とモノルビ(文字ごと)があり、またルビの位置には中付きと肩付きがある。

▼グループルビ・中付き(今風)
行間ぎょうかん を  む

▼モノルビ・肩付き(昔風)
ぎよ うか ん  よ  む

組版がデジタルになってグループルビ・中付き(今風)も増えたが、僕が編集をやっていた頃は活版と写植の時代だったので技術的制約からモノルビ・肩付き(昔風)が基本。

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今風はこんなにも字間の調整を必要とし、活版でやるとなるとスペーサーと呼ばれるアキ専用の詰めものを挟んでいかねばならない。
こんなのデジタルでないとやってられない。

ちなみにルビの字は当然ながら小さく、活版だと潰れて読めないため、捨て仮名(=拗促音「ゃゅょっ」)は通常の活字を使うのがお約束。
つまり「行間」のルビは「ぎょうかん」ではなく「ぎようかん」だ。
ただし、これもデジタルになって小さな字も鮮明に印刷できるようになり、捨て仮名をそのまま使うケースも増えてきた。

旧い編集者の、ルビにまつわるエトセトラ。

(2021/9/25記)

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